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[完結]破滅する推しの義妹に転生したので、悪役令嬢になって助けたいと思います。  作者: ru
第一章 銀縁眼鏡の悪役

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20.ヒロインと出会う


「うすうす思ってたんですけど、俺達、どう見たって兄妹には見えないですよね」

「そうね……三人だと、そんなに気にならなかったけど。全く似ていないものね」


 目当ての街に到着した翌日。カイルは商隊のリーダーに誘われて朝から出かけて行った。


 リーダーはなぜかカイルを気に入っている。

 正体は知らないはずだし、「ついてくるならそれなりに働けよ」とか言って、実際本当に手伝わされている。

 荷物運びなんかはレオンのほうが役に立っているのに、気が付いたら道中の打ち合わせにもカイルが入っていた。

 なお、私は役立たず認定されており、邪魔にならない所で待機を命じられている。


 見ていて気付いたのは、カイルは認めるところがある大人に対しては、非常に素直で勉強熱心だということだ。

 ただ、自分が認めないと、どんなに年上の人でも見下しているようで、トラブルが起きないか見ていてハラハラする。


 そんなわけで、宿に置いて行かれた私は、レオンをつれて街を探索に出かけた。


 ヒロインを探しに行こう。


 街を歩いていると、レオンがなんて事もないように言い出した。


「二人の時は恋人の振りをしましょう」

「え?」


 するりと右手に、レオンの左手が滑り込み、硬い手と指が私の指を絡めとる。

 恋人繋ぎ……というやつだ。


「その方が近くにいても違和感無いし、護りやすいから」


 おおおおおい!!!


「え、いや、だとしてもこれは」


 手を抜こうとするがびくともしない。鉄の棒を相手にしているように動かないのだ。


「手、繋ぐの嫌? じゃあ」


 繋いだ手が軽く引かれる。それだけで私は体制を崩してレオンの胸に倒れ込んだ。


「これでもいいけど」


 私の体を支えて腰に手を回す。

 あっという間に抱き寄せられてホールドされてしまった。

 こう並ぶと、丁度私の耳のあたりに、レオンの口許がある。


「メグ」

「ぎゃっ」

「やっと赤くなった」


 ふ、と、笑ったような息の音がして、身体が自由になった。

 私は耳を押さえて後ずさった。


 仲間ハズレにされたからってやりすぎだと思う。揶揄うにしてもひどい。


 何かからはレオンが助けてくれるかもしれないが、レオンからは誰も助けてくれないでは無いか。……あれ? これ、大丈夫なのか?


「ほら、行こう」


 差し出された手を警戒しまくりながらも結局とって、二人でブランの街を行く。



 +++



 いた。

 ヒロインだ。

 明るい金色のウェーブがかった髪を肩の辺りで切り揃えている。空色の明るい瞳。


「かわいい」

「メグの方がかわいいよ」


 恋人設定を続行中らしいレオンが間髪入れずに返してくるが、私が何について言ってるのか確認した方がいいと思う。

 条件反射だけで生きていてはいけない。

 あと、恋人設定なら、もう少し、表情筋を緩められないものだろうか。真顔で言われると怖い。


 とりあえず、これは無視しよう。


 リリアン、という名前なのかはまだ判らないが、かわいい。とても、かわいい。

 アルフレッドと並ぶと完璧なありがたい絵になるな、と思った。可愛い系美少女だ。

 エメラルドグリーンも似合いそうだ。

 ただ、残念ながら、カイルと並ぶと被害者にしか見えない。改めて、ハッピーエンドの幸せそうなイラストを描いたプロの腕前に感動した。


 アニメではリリアンはキュート担当、マグノリアはセクシー担当だった。

 ……そう考えると誠に申し訳ない気持ちになる。自分で言うのも何だが、あと二年で身体がどんなに育っても、キャラ的にセクシー担当になれる気がしない。マグノリア派のルーカスに心の中で謝った。


 リリアン(仮)は蛍祭のランプを売る屋台を手伝っているようだった。


「あの子が持ってるの何かしら、とてもかわいいわ」

「行こう」

「ちょ、まってまってまってまって、ストップ、ストーップ」


 危うく引きずられそうになる。

 条件反射で生きていてはいけない。話を聞いて。


 ……とはいえ、レオンにはどう説明するか。

 リリアンには接触したいが、レオンに説明できない。あの子と兄が結ばれないと兄が死ぬの、って、何か悪い物を信じている人みたいになってしまう。


 かといって、二人で手をつないで出ていったら、まあ、間違いなく恋人だと思われる。

 二年後に再会したときには、私は王子の婚約者であることが分かる。


 どう見ても私が悪女である。王子の婚約者でありながら、お気に入りイケメン騎士を侍らせて旅行していた悪女である。


 そういうのは望んでいない。王子かわいそう、ってなって、リリアンとアルフレッドとの仲が進展してしまうではないか。


「蛍祭はそもそも、恋のおまじないのお話だから、レオンと一緒だと」

「レオ」

「……レオと一緒だと……は、恥ずかしいじゃない」


 少しだけレオンの目が丸くなった。

 レオンはつないだ手を目の前にもってきて、しばし結んだ手を見つめる。

 一応、先ほどからほどこうとしているのだが、まったく気にしてもらえない。


「離して」

「はい」


 離してと言うと、ぱっと手を放してくれた。

 分かってきたぞ。命令すれば、言う事を聞いてくれるのだ。察してくれないだけで。



 +++



「こんにちは! どうぞ見ていって」

「こんにちは、素敵ね、こんなに種類があるのね」


 レオンを木陰に隠して、一人でランプの屋台に近づいた。

 リリアン(仮)は、近くで見ても美少女だった。

 明るくてかわいい。光っているようだ。さすが光属性のブランである。


「ええ。色々あるわ。旅の方?」

「そうなの。本で蛍祭の話を読んで、来てみたの」

「まあ、そうなの! お連れの方は?」

「あ、兄と、友達と一緒にきたんだけど、ランプは1人で選びたくて」

「いいわね、その方にもあげるの?」

「そ、そうね」


 考えてなかった。リリアンと話すことしか考えてなかった!

 せっかくだからそうしよう。カイルとレオンと、お土産にお父様とルージュ姉様とルーカスにも。あ、アルフレッドにも渡さないと。


 ……結構たくさんだなぁ


 ランプは、片手に納まるくらい小さくて、火ではなく光魔法を灯すようになっている。

 魔法が使えなくても、自分の魔力を通すと光るタイプの物だ。小さいLEDライトのような感じである。

 なので、熱くもならないし、風で消えることもない。

 だからか、本体は針金や薄い金属などでできている。様々な型、模様があって、見ていてとても楽しい。


「お兄さんとか、家族なら、これがいいんじゃないかな」


 リリアンが、針金細工のランプを指した。


「これは、日々の感謝の気持ちを伝える紋様になっているのよ」

「意味もあるの?」

「うん。他には、……好きって伝えるなら、これね」

「わ、かわいいのね」


 リリアンが色々教えてくれる。こういうの、ほんっと、ほんっと楽しい。おまじない。色々な意味が込められたかわいい小物。恋物語の伝説。わくわくする。


「最近は、自分用に願い事を込めて飾る人も多いわ。こっちは恋愛運、こっちは仕事運、こっちは金運……」


 そこまで行くと商魂逞しい感じがするが、ちょっと欲しい。顔が青白い時があるお兄様に、健康運のをあげよう。


 リリアンとお話ししながら、お土産にするのも含めて、沢山買ってしまった。


「どうもありがとう!」


 リリアンが輝く笑顔でランプを包んで渡してくれた。


「最近は普通に渡しちゃう人が多いけど、本当は窓辺に置くのよ」


 知ってる。ゲームでやりました。


「気持ちが伝わるといいわね」

「ええ、ありがとう」


 ちなみにゲームでは、どのランプを贈るかで親密度アップに差が出た。



 +++



 夜。商隊の皆さんと一緒に食堂でご飯を食べる。


 こういうのもとても楽しい。

 カイルとレオンと一緒のテーブルで、距離も近い。話も弾む。

 しゃべっているのは主に私だが。


「それで、すごく素敵な子がいたんですよ!」


 と、今日の報告をしつつ、リリアンの話をカイルにする。明日にでも引き会わせよう。

 そして運命の出会いを演出するのだ!


「お話が上手で、ついつい沢山お土産を買ってしまいました」

「それは教会の、リリアンという子じゃないか?」


 えっ

 私は驚いたが、カイルはパンをちぎりながら、なんてこともないように言う。


「えっ? 何で……カイが知っているんですか?」


 私も聞けなかったのに、名前まで知っているんですか?

 あと、リリアンの名前はアニメの設定でいいんですね。やっとすっきりした。


「僕も見に行ったんだよ。祭りの視察すると言うのでついて行った。色々な種類のランプを置いている店だろう? あれは彼女が考えたと言っていた」


 は……???


「孤児院の運営費のために、いろいろ動いているそうだ。僕とそんなに年も変わらないのに、大した物だ。僕は今まで女性というだけで色眼鏡で見ていたのかもしれない。目から鱗が落ちる思いだった」


 どうしたのお兄様


「そう考えると、無理にでも連れてきてくれたメグに、感謝しないといけないな」


 そういって柔らかく微笑んだ。


 ぽかん、としてしまう。


 こんなの、……こんなの、ただのインテリ眼鏡ではないか。

 悪役とツンデレはどこに置いてきてしまったんだ。


 これがヒロインの力……というものなのか。

 浄化か。浄化されたのか。


 計画通りに進んでいる……ような気がするが、何やら背中がむず痒くなる思いだった。

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