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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第九部 帝国西方編

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184/219

第一八四話「辺境伯夫人たち」

――取り敢えず荷ほどきと着替えも終えて休憩していると扉がノックされ、メイドがそれを開くとそこには三名の若い女性が立っていました。一人は黒髪を編み上げた凛々しい顔立ちの若い女性です。わたくしよりも少しお若い方でしょうか。


その両脇に控えるのは、光沢のある薄赤紫色の美しい髪色、褐色肌で西方大陸の衣装を着けた細身で神秘的な微笑みを浮かべた女性です。


そして、同じく褐色肌ですが髪色は光沢のある薄青紫色で丸みのあるとても女性的な身体つきの女性です。その衣装は西方大陸のものですが、肌の露出が多くわたくしには直視するのが気恥ずかしく思えてしまいます。


異国の方なので分かりづらくはありますが、お二人ともかなりお若いという印象です。



「貴女がナーラ義姉(ねえ)の妹ね?」


黒髪の女性が歩み寄りながらわたくしに尋ねました。


「はい、左様ですけれども……」


わたくしが答えると、両脇の女性お二人は微かに笑いながら「あまり似ていないね」「そう? 目元とか鼻筋がそっくりに見えるけど……」


などと小声で話しています。


「失礼、私はクファーミン・スハン・ジャシュメナ、ジャシュメル辺境伯の第二夫人――側室よ」


黒髪の女性はクファーミンと名乗られました。第二夫人、側室と仰いましたが――帝国では特に伯爵以上の上級貴族は配偶者を複数持つのはよくある事と聞いています。



(という事は正室はナーラ姉様ですよね?)



ナーラ姉様の婚儀はお父様とお母様のみがこちらに来られて出席されたのでわたくしは伝聞でしか知りませんでしたが、確かその時辺境伯は独身で初婚だったと聞いていました。



(歳も辺境伯と姉様はあまり違わないと伺っていましたし……)



「こっちの二人は……」


クファーミン様は両脇のお二人を指さします。


「第三夫人のハシュリィ・ムアール・ジャシュメナです、レティ義姉(ねえ)様」


左側、赤紫色の長い髪の落ち着いた雰囲気の女性が軽く礼をされました。


「ね、義姉(ねえ)様……ですか?」


「第四夫人カリティ・ムアール・ジャシュメナよ。私達姉妹もジャシュメル辺境伯の側室なの。正室のナーラ義姉(ねえ)の妹だから義姉(ねえ)さんてわけ。私達十八だから、歳上だよね?」


右側、青紫色の長髪を編み上げた、肌の露出の多い装いの女性がわたくしに質問を投げかけました。


「え、はい、わたくし二五です……」


「七つも上なんだ! もうちょい下かと思った……可愛い」


カリティ様はわたくしに息がかかるほど顔を近づけてニコニコと笑っています。


「もう、カリティ失礼よ。すみません妹が無礼を……」


ハシュリィ様がカリティ様を窘めつつ身体を後ろに引っ張りました。


「あの……姉妹なのですか?」


わたくしの問いにお二人は同じタイミングで頷かれました。


「そ、あたしとハシュリィは双子なの」



(双子ですか……雰囲気が全く違うので言われるまで分かりませんでした)



「カリティ、初対面でしょ? 馴れ馴れしくしないの」


「なによ、ハシュリィだって凄く楽しみにしてたでしょ?」


カリティ様はハシュリィ様の脇腹を肘で突いています。


「そ、それは……帝国公認魔道具鑑定士にお会い出来るなんて滅多に無いから……」


ハシュリィ様は照れたように頬を赤らめました。



「ほらほら二人とも、レティさん困ってるでしょう?」


クファーミン様がわたくしを庇う様に肩を抱き、お二人とわたくしの間に割って入りました。


「なによ、どさくさ紛れに抱き着いて、クー義姉(ねえ)が一番厚かましいじゃない!」



わたくしが只々戸惑って固まっていると、ナーラ姉様がやって来られました。


「あらあら、皆そんなにレティに会いたかったのね。でも、もう旦那様が来られるから食堂へ行きましょう」


ナーラ姉様は手拍子をして場を仕切ります。


「ナーラ義姉(ねえ)、二人が待ちきれ無いって言うから……」


「なによクー義姉(ねえ)私達のせいにして」


側室のお三方はかしましく話しながら先に歩いて行かれました。



「レティ驚いたでしょう、ごめんなさいね……」


ナーラ姉様は困り顔ですが、優しい笑みを浮かべています。


「いえ、少しだけ……あら?」


ナーラ姉様の後ろに小さな人影が隠れていました。


「レティニア、レティ叔母様よ。一度会ってるけどまだ赤ん坊だったから覚えていないわよね?」


わたくしは屈んで、姉様の後ろに隠れている女の子に目線を合わせます。


「お母様の妹のレティです」


わたくしが話し掛けると、おずおずと姉様の陰から女の子――レティニアが姿を現しました。栗色の髪を綺麗に編み、顔立ちは姉様に似てとても可愛らしいです。


「レティニア……です」


レティニアはたどたどしくも可愛らしい淑女礼をしてくれました。


「今三歳でもう少ししたら四歳になるわ。二人目は男の子なのだけどまだ赤ん坊で、今は乳母に見て貰っているから後で紹介するわね」


以前実家に帰った時にお母様がナーラ姉様は二人目が産まれたから来られないと言っていたのを思い出しました。


「あの、側室という方々は……」


「私が嫁いでからこちらでも色々あってね……取り敢えず食堂へ行きましょう。レティニア、レティ叔母さまを案内して差し上げて」


レティニアはわたくしの手を握ると「……こちら、です」と手を引いてくれました。



(わたくしが叔母さま……)



未熟な自分がそう呼ばれ、戸惑いと面映ゆさを感じながら小さな姪に手を引かれて歩き始めました。


右側、青紫色の長髪を編み上げた、肌の露出の多い装いの女性がわたくしに質問を投げかけました。


「え、はい、わたくし二五です……」


「七つも上なんだ! もうちょい下かと思った……可愛い」


カリティ様はわたくしに息がかかるほど顔を近づけてニコニコと笑っています。


「もう、カリティ失礼よ。すみません妹が無礼を……」


ハシュリィ様がカリティ様を窘めつつ身体を後ろに引っ張りました。


「あの……姉妹なのですか?」


わたくしの問いにお二人は同じタイミングで頷かれました。


「そ、あたしとハシュリィは双子なの」



(双子ですか……雰囲気が全く違うので言われるまで分かりませんでした)



「カリティ、初対面でしょ? 馴れ馴れしくしないの」


「なによ、ハシュリィだって凄く楽しみにしてたでしょ?」


カリティ様はハシュリィ様の脇腹を肘で突いています。


「そ、それは……帝国公認魔道具鑑定士にお会い出来るなんて滅多に無いから……」


ハシュリィ様は照れたように頬を赤らめました。



「ほらほら二人とも、レティさん困ってるでしょう?」


クファーミン様がわたくしを庇う様に肩を抱き、お二人とわたくしの間に割って入りました。


「なによ、どさくさ紛れに抱き着いて、クー義姉(ねえ)が一番厚かましいじゃない!」



わたくしが只々戸惑って固まっていると、ナーラ姉様がやって来られました。


「あらあら、皆そんなにレティに会いたかったのね。でも、もう旦那様が来られるから食堂へ行きましょう」


ナーラ姉様は手拍子をして場を仕切ります。


「ナーラ義姉(ねえ)、二人が待ちきれ無いって言うから……」


「なによクー義姉(ねえ)私達のせいにして」


側室のお三方はかしましく話しながら先に歩いて行かれました。



「レティ驚いたでしょう、ごめんなさいね……」


ナーラ姉様は困り顔ですが、優しい笑みを浮かべています。


「いえ、少しだけ……あら?」


ナーラ姉様の後ろに小さな人影が隠れていました。


「レティニア、レティ叔母様よ。一度会ってるけどまだ赤ん坊だったから覚えていないわよね?」


わたくしは屈んで、姉様の後ろに隠れている女の子に目線を合わせます。


「お母様の妹のレティです」


わたくしが話し掛けると、おずおずと姉様の陰から女の子――レティニアが姿を現しました。栗色の髪を綺麗に編み、顔立ちは姉様に似てとても可愛らしいです。


「レティニア……です」


レティニアはたどたどしくも可愛らしい淑女礼をしてくれました。


「今三歳でもう少ししたら四歳になるわ。二人目は男の子なのだけどまだ赤ん坊で、今は乳母に見て貰っているから後で紹介するわね」


以前実家に帰った時にお母様がナーラ姉様は二人目が産まれたから来られないと言っていたのを思い出しました。


「あの、側室という方々は……」


「私が嫁いでからこちらでも色々あってね……取り敢えず食堂へ行きましょう。レティニア、レティ叔母さまを案内して差し上げて」


レティニアはわたくしの手を握ると「……こちら、です」と手を引いてくれました。



(わたくしが叔母さま……)



未熟な自分がそう呼ばれ、戸惑いと面映ゆさを感じながら小さな姪に手を引かれて歩き始めました。

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