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お妃さま誕生物語  作者: violet
番外編 マクレンジー帝国皇太子ジェラルド
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ジェラルドの家

ジェラルドの家には男達が集まっていた。

エンボリオ、イライジャそれに同期で入隊したカブル、マーサである。

そこに隣の家から、シャンライ、ナンシー、アルミナが料理を持って参加してきた。

シャンライ、ナンシー、アルミナの3人はレイラ護衛の女官達であるが、建前は隣に住む姉妹となっている。

誰に聞かれるかわからないので、お互い敬称ぬきである。

「レイラいったいどうしたの?お客さん大変ね。」

「ジェラルドが連れて来ちゃって、助かったわ、ナンシー。」

イライジャと集まっても違和感ないように、同期入隊3人を誘い、エンボリオも連れて来た。

これなら堂々と情報交換ができる。


「奥さん手伝います。」

と顔をだしたのはイライジャである。

「大丈夫です、どうぞあちらでゆっくりなさってください。」

「ジェラルドは軍でも、奥さんの話ばかりですよ。」

どうやら、レイラを安心させようとしているらしい。

ナンシーは料理ができるが、シャンライ、アルミナはレイラと同じぐらいである。

「シャンライ、何作っているの?」

レイラが魚のぶつ切りの入った鍋を指してきく。

「野戦料理かな。」

いい香りはしているが、ダイナミックに力任せに切って野菜は皮付きのまま煮込んでいる。

ジェラルド達のテーブルに出すと、さすが姫君の料理と納得され、レイラは複雑である。


「その話なら聞いた。リッチモンドとの国境警備の話だろ?」

カブルが魚の骨を外しながら言う。

敏感に反応しないよう気をつけながらイライジャが尋ねる。

「何の事だ?」

マーサとカブルの話に入るように、イライジャが向かう。

「駐屯兵となると美味しい話があるんだよ。」

ジェラルドはイライジャとは目を合わせない、エンボリオと話をしながら音だけ拾っている。

やがて話に気付いたのだろう、エンボリオが声をあげた。

「止めておけ、リッチモンドの国境警備は死傷者が多いんだ。欲を出すとよくない。」

「死傷者?」

そんなのは報告にあがってない、と思いながらジェラルドが聞く。

「お前達の募集だって、そいつらの補充だ。

あそこは山賊が多い。」

それも報告にあがってない。

「だから、リッチモンドの国境警備は金がでるのか。」

納得したようにカブルが言う。


警備の軍に金を出すなどあり得ない、そして口封じもされている。

疑ってかかれば、そういうことになる。

だが、駐屯兵達にそれが理解できるだろうか。生活の為に駐屯兵になる者達にとって臨時収入は魅力的だろう。

そこには砂糖を別ルートで運ぶ必要があった、横領していたからだ。

だが、砂糖を横領しても昔ほどの高額にはならない。

砂糖だけではない、それを調べねばならない。

砂糖が必要ならば買えばいいのだ、だが買えない理由はなんだ。

ジェラルドが口数がなくなったのをイライジャが見ていた。


砂糖は戦時中の栄養補給材となった結果、大量取引されるにはマクレンジー商会の検査が入る。

極東首長国は、堂々と戦争物資として購入している。

それができないから掠め取るのだ。


「お、いい香りだな。」

エンボリオがナンシーの運んできた白い料理を見て驚いている。

「こんなの初めてみるな、何だこれは?」

トンカチを出してナンシーが(たた)いている。

「魚を塩で(くる)んで焼いたの。こうやって割るとほら。」

岩のようになった塩が割れて中から魚が出て来た。

魚を取り分けながら、ナンシーが説明する。

「塩や砂糖に(くる)むと保存ができるの。

特に塩はその間に塩味がつくから、そのまま焼けば簡単で美味しいのよ。」

「すげえ美味(うま)いな。」

早速、食べはじめたエンボリオとマーサが口ぐちに言う。

仲間を家に招き、妻の手料理でもてなす。町の人々にとっては普通の事が、ジェラルドにとっては大切な時間となった。



みんなが帰った後もジェラルドは考えていた。

もしかして、砂糖が必要ではないのではないか。何かを国境を越させる為に砂糖の中に隠した?

中身を取り出して、要らなくなった砂糖の処分は簡単だ。

土に埋めるか、水に流すか。


「ジェラルドどうしたの?」

「ああ、レイラ。今日はありがとう、すごく助かったよ。」

「あの魚の鍋は私じゃないのよ!

もうちょっとは料理上手くなったんだから。」

シュンライの料理を姫君の料理と言われて、プライドが傷ついたらしい。

あははは、笑いながらジェラルドがレイラを引き寄せる。

「わかっているよ。

僕はレイラの料理が大好きだからね。」

ジェラルドがレイラの荒れた手を撫でる。

「ジェラルド、ここの生活が好きよ。

小さな家はジェラルドがとても近いの。

お料理もお裁縫も上手くなったわ。

ジェラルドが帰り道に摘んできてくれる野の花も好きよ。」

ジェラルドがレイラの銀の髪をすきながら言う。

「きっと、この生活は二度とできやしない。

後を継いだら、国を出ることもままならないだろう。」


「明日、シュンライ達の弟が帰って来るから食事に誘われたわ。」

それは、リッチモンドに行っていたリアム達が来るという暗号。

シュンライの元にリアムから連絡が入ったのだろう。



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