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お妃さま誕生物語  作者: violet
番外編 ガサフィ
69/102

トラップ

ガサフィ編になります。

楽しんでいただけるとうれしいです。

砂漠のさらに東の国に極東首長国軍が進軍した。

それは領土と宗教を広めるための侵略であった。

指揮をとるのはガサフィ王太子、わずか14歳だが、全戦全勝無敗だ。

傍らには、ディビット、アーサー、共にマクレンジー皇帝の愛馬の子供に乗っている。

黒馬3騎が駆ける姿は勇壮であるが、標的にもされやすい。


ディビット17歳、アーサー16歳、刃向かう者を決して残しはしない、一刀で斬り捨てる。


3日の進軍の後、王城に攻め入り王の首を落とした。

後宮には、たくさんの女がいた。極東首長国では敗戦国の貴族の女は商品となる。褒賞として瑕疵されれば、マシな部類だ。

市民には何もしないが、王族の男は処刑、女は誰かのハーレムに入れられる。貴族は市民に落とされる。

極東首長国に完全に吸収されるため、敗戦地の統治者はいらない。


極東首長国軍ではガサフィが最高位であるため、女を選ぶのも一番最初である。

体格の大きなガサフィは14歳には見えない。


茶色に紫の瞳の女が気に入ったらしい、リデルと同じ紫の瞳だ。

アーサーが二人、ディビットが一人の女を連れて適当な部屋に入った。

ガサフィとディビットにとっては、戦闘の興奮を沈めるためのただの処理だ、心は別にある。

だか、敗戦国の女達は違う、ここで気に入られれば優遇されるかもしれないのだ。

ましてや、ガサフィとディビット、アーサーは見映えもいい。

他の将校達より格段に若く、権力があるのは魅力的であり、自分たちの命がかかっているのだ。



「司令官様、待って。」

事の済んだガサフィは部屋を出ていこうとする。

女の呼びかけに足を止めるようなことをしないが、女が手を引っ張ると仕方なしに服を着る手を止める。

「離せ。」

「お願い、私も連れて行って。女神様と同じ色の目よ。綺麗でしょ。」

この女は今までそうやってチヤホヤされていたのだろう。

王女の一人かもしれない、豪華なドレスだった。

女の手を振り払うと服を着始める。

「司令官様、子供ができたかもしれないわ。」

ガサフィはバカな女と思いながら、裸の女を抱き上げると部屋の外に出た。

警備などの兵がいる場所に着くと、兵に渡した。

「好きにしていいぞ。遊んでやれ。」

「イヤーーー!!」

女が悲鳴をあげるが、すでにガサフィの興味はない。

男たちの歓声に女の声はかき消される。


愛馬の元に行くとすでにディビットが来ていた。

「早いな。」

「女を楽しませる必要はないからな。」

リデルとサーシャに落ちた男二人は他の女には最低の男になる。

「サーシャとするのは楽しいだろうな、何年でも待つよ、サーシャが大事だ。」

ディビットの方を見ずにガサフィが応える。

「悪いな、俺が先だな、リデルがサーシャより5歳上だからな。」

それでも、まだまだ先だな、会いたいな。

愛する女が男を受け入れられる体に育つのを待つ時間は長い。



異変は早朝に起きた。

兵達の間で乱闘が起きたのだ。

「俺のものだ!」

「絶対にわたすか!」

剣を取り出して、常軌を逸している。

女の取り合いだというのだが、一人や二人ではない。あちらこちらで起こっている。


「ディビット。」

ガタンと大きな音をたててアーサーが疲れた顔でやってきた。その姿は異様である。

ディビットもガサフィも緊張を高める。

「やられました。麻薬をらしきものを口移しです。」

そう言うのがやっととばかりにアーサーが膝をつく。

ディビットがアーサーに水を飲ませながら聞く。

「幻覚はあるか、幻聴はどうだ。」

「種の麻薬を砕いた物かもしれない、女の言葉が頭に響く。」

戦闘のあとだ、誰しもが傷を負っている。

あれは火をつけ煙の状態が一番効果があるが、種の服用でも幻覚があったはずだ。

「すぐに女は始末しましたが、自分の意思で体が動けるまでに時間がかかりました。」

体に力が入らなかったので、簡単に殺してやれなかった可哀そうなことをした、とアーサーが言う。

「そうか、女達も戦っているんだな。」

ディビットが哀れな事だな、と呟いた。

「ガサフィ、麻薬が蔓延するまえに首謀者を探し出さねばならない、行くぞ。アーサーは後で来い。」

アーサーは身を守るために馬の間に身を寄せ休息に入った。


速足で歩きながら、ガサフィとディビットが情報を確認する。

「種の麻薬は焼却される前に出回った分しかないはずだ、それも何年も前だから残存はさらに僅かなはずだ。」

「操れることを知っていると思うか。」

「それはないだろう、知っていれば煙にするはずだ。」


「さてどうするか、制圧したとはいえ、子細のわからない宮殿で人員の規模さえわからない。」

「罠をかけるか。」

「それしかあるまい。適役がいるしな。」

「俺か!」

お前だとディビットがガサフィを見る。


相手は麻薬で罠をかけている、こちらは麻薬に落ちた振りの罠をかける、どちらの罠が強いか。



指揮官が女を集めているという情報はすぐに宮殿内を駆け巡った。

人が変わったように女と遊びほうけている。

自分が気に入った女は王都に連れ帰ると言っている。

噂は尾ひれをつけ広まるのは早い。


その間に麻薬を使われたらしい兵士達は手足を縛られ、猿轡され人目のつかない部屋に集められていた。

ガサフィはその為の時間稼ぎでもあり、首謀者をあぶりだすための囮だ。


首謀者は男か女かさえわからないが、どこかに種の麻薬を持っているはずだ。

貴重な麻薬は必ず自分で管理しているはずである。


「ベールを外して、可愛い顔を見せてくれ。」

ガサフィが女達にかける声は甘い。

昨夜、女を兵達に下げ渡した男と同一とは思えないほどだ。

数十人の女達が集まっていた。

誰もが自分を売り込もうとして集まったのだ。

「きゃあ。」

「うふふ。」

と女達の嬌声が響く部屋でガサフィがたくさんの女達と追いかけっこを始めた。

その姿は演技を超えている。

ディビットも部屋の一角でソファにダラリともたれながら意識を集中させていた。

どこかにおかしな点はないか、剣や麻薬を持っている者はいないか。

纏わりついてくる女達を構いもしないが、払いもしないディビット、麻薬にやられてるように見える。

王妃だった母に似た顔立ちは繊細で、竜の刺繍が施された左目の眼帯がさらに怠惰な雰囲気をかもしだす。


それは偶然であった、サーシャが侍女二人掛かりでないとできない髪型だと見た覚えがある髪型。

その髪型をしているということは高位貴族か王族の娘であるということだ。

なのに着ているのは質素な侍女服。

敗戦が決まり逃げるために質素な服に着替えたが逃げ切れなかったか。

その女にだけ意識を集中し、一挙一動を気づかれぬように観察する。

外さないベールに隠れているのは口元を覆うスカーフだと気づく。

「王太子様、いいものをお持ちしますね。」

「何だい、楽しみだね。」

何故に王太子と知っている、ここでは指揮官で通しているはずだ。

それは極東首長国の兵士から情報を得ているということだ。


見つけた。


女が胸元から香炉を取り出すのとディビットが飛び掛かるのは同時だった。

香炉が派手な音をたてて割れた。

「きゃーー!」

女達の悲鳴があがり、兵達が駆けつけてくる。

ディビットに押さえつけられた女を助けるかのように10人程の女が走り寄ろうとしたが、ガサフィと隠れていたアーサーや親衛隊に捕まえられた。

ディビットが女の胸元に手を突っ込みまさぐると、絹の小さな袋を見つけた。

「言え。これは誰から貰った。」

ディビットが女の目の前に袋を差し出すと奪い返そうとするが、押さえつけられているので無駄に終わる。

「この国の王女か。」

女の見開いた目がそれを肯定している、種の麻薬は王家の秘宝であったのだろう。

侍女服の下には短剣が隠されていた。


女の身を守るための抵抗であったのか、極東首長国への反抗であったのか、ガサフィの親衛隊がこれから調べることになる。

背後関係もこれからだ、実行犯を捕まえただけだ。


ガサフィもディビットも思うのはリデルとサーシャの事。

同じようなことをさせたりしない、絶対に自分が守り通す。

国を無くした王女の末路に幸せはない。




7/15文字修正

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