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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
55/102

キース・リッチモンド

毎年のように氾濫するヤムズ大河、しかしその氾濫は豊かな土を運んでくる。氾濫の毎に積もった堆肥は山のようになっているが、新たな氾濫を怖れて手付かずのままだ。護岸工事で堤防を作成し灌漑工事をすれば豊かな農地へと代わる、これで歳入をふやし、軍隊の縮小で歳出を押さえる。

リッチモンド王国は小さな国でヤムズ大河の氾濫も知られており、侵略したいほどの領地では現在ない、軍に取られた男手を工事や農業や産業に回すことで国の活性化と軍費の削減になる。


キース・リッチモンドが作成した再建計画案には、この2本を柱とするための、氾濫の時期と堆肥の量の関係、栽培できる作物、現在の軍費、縮小することで削減できるであろう金額と保安計画、工事に必要な金額と機材や期間、融資資金に対する返済計画が書かれていた。


リヒトールはこの計画書と事務官に作成させた投資計画書を比べてみた、キースの提出した数値を元にしているので、それが間違いだったら投資自体成り立たない。

マクレンジー帝国も度重なる戦争で出費が嵩み、新しい領地で直ぐに収入に繋がるところは少ない、この投資金額はたやすい額ではない。

ハイリスクハイリターンは好きだ、ローリスクに近づける為に何が必要かと考える。

そして研究所からの書類を手に取る、そこには土壌に適する植物が書かれていた。甘味成分の原料であるキビが目につく、成長も早く収穫まで時間がかからないが、栄養の高い土を必要としていた。上流から流れてくる栄養分の高い河岸沿いの河の土を適時に取り入れる事で、土の栄養分の補給と氾濫防止に繋がるとあった。


シーリアがリンゴのタルトを作ると言っていたな、菓子も作るのなら、工場を作り化学者を派遣して純度の高い砂糖を作ろう。工場は安定労働の場を提供するし、女子供でも労働力となりうる。

純度の高い砂糖は需要が高い、独占販売で価格安定と在庫調整の操作ができる。甘味がそれなら塩分はどうする、砂漠に岩塩地帯があったな。

砂糖と塩の交易ルートがトーバで繋がる、さて塩の利権を得るのは極東のどの国だろうか。

今のところ極東首長国が最有力だな、手を打っておいた方がよかろう。


トーバは護岸工事で商船の入れる港を作ろう、ヤムズ大河に大きな港があれば船の運航を可能にし世界中に砂糖と塩を運ぶだろう。

リッチモンドは砂糖の供給とともに各国の目が集まるだろう、それまでに軍隊を再編成するかマクレンジー軍を駐屯させるかせねばなるまい。




「いいえ、軍隊は最低人数で編成します、ただし徴兵制度で男子全員に軍隊を体験させ、伏兵とします。普段は市民ですが、もしもの時は軍倉に武器を取りに行って兵士になるように管理すれば、軍費を圧縮できます。」

「なるほど、小国ならではのいい案だな。」

キースの説明にリヒトールがうなずいた。

キース・リッチモンドは兄を退け王位に着いた就任挨拶の為に、スーザン達を伴いマクレンジー帝国に来ていた。

「護岸工事の支援ありがとうございます、工事は順調で予定より早く堤防が完成する見込みです。派遣された化学者から説明を受けました。キビの加工工場をマクレンジーが造ると、想像もしてませんでした。」

「妃が菓子を作るので質のいい砂糖を所望している、貴殿にまかせよう。」

キーリエのリンゴタルトの話は噂に聞いた、キーリエの国民を救ったと。

我が国にも希望になるだろう、生物学者は氾濫地域の堆肥ならばキビを年2回収穫するよう改良できると言った。

皇帝の横の皇妃を仰ぎ見ると、はにかむように笑っていた。聖女と言われ、数多(あまた)の男達を惑わせ命を奪った美貌。


「何を考えてるか解りますわ、噂は美化されるんですの、私は普通の人間ですのよ。

リッチモンド王国の復興は皆さんの努力があってのことですわ。でも、質のいいお砂糖なら金平糖が作れるかしら?

あれは持ち運びも楽なので、次回いらっしゃる時はお持ちくださいな。」

かわいいお菓子なの、と言う皇妃の言葉にリヒトール皇帝とキース・リッチモンド王が目を合わせた。

質のいい砂糖なら金平糖よりも大きな塊を作れる。純度が高い程保存がきく、それは航海や遠征、戦争時の栄養価の高い保存食になるのだ。

保管も運送も手間にならないし常備できる、今まで価格が高くて想像もできなかったが、価格が安定すれば下級兵士にまで支給できる。


「必ずお持ちします。色とりどりの小粒を楽しみにしてください。」

分かっているな、と皇帝の目が言っている、もちろんですと礼を取る。これがマクレンジー帝国皇妃。

まさしく聖女、これで国民が救われる。

1次産業の農業と2次産業の工場、3次産業の販売が揃うことになる。自国で立ち上がることができるのだ、これがマクレンジーの力か、何故に兄達は反発したのか、王という自尊心だろうか。



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