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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
49/102

披露会

夜になると、王宮では披露会が始まった。ものものしい警備は変わらないが、戴冠式の緊張はなくなった。


リヒトールが開催の宣言をした後、リヒトールとシーリアのダンスが始まった。

シーリアは、リヒトールの瞳の緑色のドレスだ、ターン毎に散りばめられた真珠が清楚に輝き、人々のため息を誘う。

リヒトールがダンスをしているのを初めてみたアルフレッドとカミーユは、何でもできる奴と舌をまいていた。


ダンスの後は、招待客からの挨拶を受けていたが、少しでも印象を持ってもらいたい客が途切れない。


「シーリア。」

懐かしい声に振り返る、「お兄様。」

「元気そうでなによりだ、綺麗だよ。」

微笑むシーリアの肩をリヒトールが引き寄せた。

兄のフェルナンデスの隣には、セルジオ王国アラン王太子がいる。

それは、あっという間だった、アランを認めたシーリアが止める間もなく駆け寄って行ったのだ。


バーン!


グーパンチである、シーリアがアランの頬を叩いた。

「思いしったか!」

両手を腰にあて、えっへんと宣言した。

「これでおあいこね!

私も衆人の中での恨み晴らしました!」

王子だからって、偉そうに大勢の賓客達の前で婚約破棄とか言ったわよね、女性を貶めるんじゃないわよ、状況も読めないバーカ!

シーリアは婚約解消をしたかったが、破棄ではない、そこわかってるの!?と意気込み強い。


グーパンチとはいえ大したダメージではなく 少しよろけたぐらいだったが、精神的ダメージが大きかった。

アランは頬を押さえて惚け、フェルナンデスは目を見開き、リヒトールはシーリアに駆け寄り手は大丈夫かと擦っている。

アルフレッドとカミーユは惚けてる部類だ、来客ほとんどが女神様が、と茫然としている。

注目の皇帝夫妻だったのだ、その場にいる全員が固唾を飲んで見ている。

相手がセルジオ王国の王太子とわかるとなおさらだ、婚約破棄された相手なのだから。


「あら、お気になさらず、ただの従兄ケンカですわ。」

シーリアが女神のごとくニッコリ微笑む。

一気に喧騒の渦に包まれた、リヒトールはアランに対峙するがごとくシーリアを抱き寄せている。


「10年も婚約者だったのに、君のことは何も知らなかったようだ、こんなに魅力的な女性だったんだね。」

「きゃー、アランが変態!!」

頬を抑えながら、ははははと笑ってるアランとリヒトールの後ろに隠れるシーリア。


「マクレンジー皇帝陛下。」アランがリヒトールに礼をとった。

「大事な従妹です、妹と言っていい程の。彼女の後にはセルジオ王国が控えています、もしもの時は取り戻しに来ます。」

それは僕のセリフだとフェルナンデスがアランをつつく。

「取り戻しに来てもシーリアは行かんがな。」

ニッとリヒトールが口の端をあげて言う。

どちらも一歩も後に退かない空気に広間の緊張が高まるが、

「あら、気が合うようね。」

空気を読んでないようで、読んでいるシーリアだ。

「実家と嫁ぎ先が仲良くってよかったわ。」

厳密にいえば、セルジオ王家は実家ではないがアラン王太子が妹と言っている以上そう考えて支障ないということだ。


アランはわかってしまった。夢の中のシーリアはいない、現実のシーリアの輝きに勝る者はいないという事を。そして、それはもう手の届かない者である事も。



新参とはいえ大国のマクレンジー帝国と大国セルジオ王国が結びついたのだ、勢力地図が一気に塗り替わった。

元々ヒステン王国は広大な領土があった、その領土があったからこそマクレンジー商会が巨大化することができた、商会が大きくなる代わりに国が弱体化してきたが。クーデターによって広大な領土を持つ強いマクレンジー帝国ができあがったことになった。

セルジオ王国は、温暖な気候で農作物の栽培と銅山と鉄山を有し、大国として古くから名を馳せていた。


シーリア姫とアラン王太子との婚約破棄の事件は有名だが、リヒトール・マクレンジーとどこで繋がったかは確定はない。

婚約破棄の場でリヒトールがシーリアを庇ったこと自体があり得ない事だった。シーリア姫の出奔に関わっているのか何もかも不明のままだ。

姫がどうして革命地に行ったのかはわからないが、聖女がシーリア・ド・デュバルであるというのはエメルダ連邦国が認めていた。大勢の目撃者がいるため、隠し通せなかったらしい。

姫がブリューダル革命の地で聖女と呼ばれ、それを再会したリヒトール・マクレンジーが利用しようとし、婚約破棄で助けてもらった姫が騙されているが有力説であるが定かなことはなにもない。

一方的に婚約破棄され、貧しい地域で人々を助けようとした美しい姫君、というだけで清楚で世間知らずの姫君と思われていた、それがグーパンチである。


賓客達の中に動揺がはしる。

殴られたアラン王太子は許容しているようで、皇妃はアラン王太子と仲たがいはなく大事な従妹であり皇妃を狙うものはセルジオ王国も敵になるとはっきりした。

だが、皇妃を手に入れる者はセルジオ王国のバックも手にはいる。それでなくともあの美貌、手に入れたい。リヒトール・マクレンジーの女性遍歴をみれば、早々に上手くいかなくなるに決まっていると考える者も少なくない。


それは、マクレンジーからの借金にあえぐ国の中には、セルジオ王国の支援を狙えると考える者もいるのだ。

リヒトールより見目のよい男性はたくさんいるし、どんな男でもリヒトールより優しいのだ。王族でもそういう遊びにふける妃はたくさんいる、と都合のいいように考えている。

逆にいえば、都合のいいようにしか考えないから借金にあえいでるということなのに。



「皇妃ってますます魅力的だね。リヒトールが落ちるのがわかる、あんなのどこにもいない。」

「ほんと、どこで目をつけたんだか、表面は素知らぬ顔で女遊びしてたんだぜ。」

一般論だがね、とアルフレッド、カミーユ二人してささやく。

リヒトールを見てれば皇妃に手をだす結末がわかるだろうに、スティーブの件を忘れたのか。

バカが淘汰されていくね、関わりたくないよと二人の目が語る。

政略結婚のような権力関係の二人だけど、恋愛結婚なんだよ、わかっているかな。

リヒトールにとってローラン王国もルクティリア帝国も手足ぐらいに考えてるよきっと、とため息をもらす。



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