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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
44/102

鎮圧

貴族だった母は、僕を産んだために家族から隔離され、実家の支援で細々と暮らしていた。

「あなたのお父様は立派な方よ、あなたがいることを知らないの。知れば、きっと大事にしてくれるわ。」

それが母の口癖で「お父様はマクレンジー商会の会長よ、早く合わせてあげたいわ。」


「君の母上は、リヒトール・マクレンジーがルクティリア王国に留学していた時の同級生だ。」

ベンダー男爵と名乗る男性に声をかけられた。

同じ黒髪となれば信じたくなる、今や皇帝陛下だ、自分は王子かもしれない。

「名乗りの手伝いをしてあげよう、簡単には面会さえ難しい立場の人だからね。マクレンジー陛下には子供がいないから、継承権1位になる。」


母の兄である伯父からは、「子供を騙そうとしているんだよ。お前の母親は夢をみているだけだから、信じちゃいけない。お前の父は誰だかわからないんだ。」と言われた。

結局、ベンダー男爵と行くことにした為、伯父には絶縁された。帰るところはない、進むしかないんだ。

男爵とローラン王国に入国した僕は、マクレンジー帝国から来た貴族達に引き合わされた。時期をみて名乗りをあげる、父親のわからない子といじめたやつらを見返してやる。


「ブレット王子、次は剣の練習です、こちらへ。」

大人の貴族が僕にへつらう、なんて気持ちがいいんだ、早く父に会って認めてもらいたい。



「ジェシカ・ヘンリー、覚えてないな、下半身しか用のない女に名前なんていらなかったしな。息子がブレット・ヘンリー10歳か。あの頃の女なんて、5人や10人ですまない男にまわされてるだろう。」報告書を半分も読まないうちに興味をなくしたように、リヒトールは顔をあげた。

「アルフレッドの子供かもしれないな、カミーユかスチュアートか、その後の男か。」

俺もカミーユもスチュアートも王族だから遊んでも避妊はキチンとしてるぜ、と変な自慢をするアルフレッド。


こんな男達を好きになった女達は哀れだったな、とケインズは思う。

10代の当時でさえ、王よりも金を持っていて自由に使えたリヒトール様。

留学中でも商会の仕事があった為、遊びに出られることは滅多になかった。僅かなチャンスを逃すまいと女達も固執したのか。

リヒトール様達の女の扱いを知らぬ者はいなかったが、女達はリヒトール様に群れていた。

わかってはいても、自分は特別になれると信じたのか、信じようとしたんだろうな、リヒトール様の本質を見ようとしないから思うんだろう。

このリヒトール様を知っているから、スチュアート様は失敗した。


シーリア様は奇跡なのだ、それがわからない者が潰れていく。

シーリア様を守るためならリヒトール様はなんでもする、目的を持ったリヒトール様はさらに強くなった。



ローラン王国にある、反抗組織の拠点はマクレンジーとローランの連合軍に包囲され、たいした抵抗もなく殲滅された。


あまい考えの貴族達と威力の足りない武器類、資金源の一つだったギュバハルの王女は処刑されていない。

ヒステンの残党とルクティリアの過激派、目的は同じリヒトール殺害だから引っ付いていただけの組織。

リヒトールを打倒した後はデビットを擁立し、操ろうとしただろうが、手駒がお粗末だった。


「僕はリヒトール・マクレンジーの息子だ、やめろ。」

連合軍に刃向かうとは、根性はあるらしいがそんなことが噂になっては困る。

「私は、シュバルツ・ケフトナ、この連合軍の指揮官である、そのような事実はない。」

「調べてくれ、本当に息子なんだ。」

腹の刀傷は深く、もう長くはもたないだろう。

「すでに調査は終わっている。君の母親は、残念だが、たくさんの男と交わっていたので誰が父親かわからない。貴族の娘でありながら、娼婦のごとくだった。」

え、とデビットが驚いている、自分の母親がそんなのとは思いたくないだろう。

「君はただの謀反人だ、ここはマクレンジー帝国に対する反抗組織なのだよ。」

そんなの知らない、と言っているが、それさえわからない人間は子供でも必要ない、危険が増えるだけだ。

「君は偽物だが、例え本物であっても必要ないんだよ。マクレンジーを継ぐのは皇妃様の産むお子だけだから、リヒトール様はそれ以外を許さない。」

シュバルツの言葉は届いたのか、すでに事切れていたかはわからない。


ご落胤を騙るなら覚悟がいるんだよ。ちゃんとした男なら放置したりしない、望まれてないのに出てくる覚悟がね。

黒髪が同じというだけだ、黒髪なんてごまんといる。もし同じ顔した明らかに親子でも躊躇いはしなかったろう。

リヒトール様だからこそ忠誠を誓うのだ、血が同じでも関係ない。



子供だから切れないなどという人間は幹部にはいない、瞬時に必要な判断をするだけだ。

国によっては年端もいかない子供が武器を持って戦っている、武器を持った、反攻してきた時点で敵となる。


あちらこちらから一掃の報告があがる、逃げ場のないよう包囲網は完璧なはず、これを見て、反抗しようとする気がなくなるように徹底的にしなければならない。

女も子供も組織にいるものは関係者だ、生き残る術はない、それで新たな禍根が生まれるとしても。


リヒトール様の側に仕えるというのは、知力、武力、判断力全てのことが必要とされ、それが可能な人間だけが存在できる。

それだけの価値のある主君なのだ。

自分はそんな主君に巡り合えたのだ。


6/12文字修正

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