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人神奇譚  作者: いかのてんぷら
第五章 思いと願いを現実に
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バケモノとは

ガロンはパ・スミレの猛攻をその身で受け続けていた。激しい攻撃は全て民間人に向けられていたからだ。反撃の隙すらない、怒涛の魔法にガロンはただただ受け続けることしかできなかった。 


岩弾ロック鹿目ロック』 


パ・スミレはそんなガロンを見てわざと民間人を狙って術を放つ。再びガロンがその身を犠牲にして術を受け止める。 


「ちょっと!せこいぞ!正々堂々と戦え!」 


ヤヨイがパ・スミレに向かって叫ぶ。その時、ガロンの身を隠すように包まれていた暗い緑のマントが風に乗って飛んで行った。人々はその姿を見て絶句する。今この瞬間ここにいるのは”魔物だったのだ”と。人は極限状態に陥ると自身を安堵させるために、真実を塗り替えてしまう。そう…自身の身の安全を顧みずに、助けてくれていた相手すら敵と認識してしまうほどに人は身勝手でわがままな生き物なのだ。 


彼らは勘違いを正当化し、ガロンの周りに取り付き、パ・スミレに願う。「コイツを殺してくれッ!!人の血の色をしていないこんな魔物バケモノなんか!!」と…ヤヨイは必死に彼らをガロンから引き離そうとするが、たった一人の少女が数十人の大人に叶うはずもなく、弾き飛ばされ、数人の男達が恐怖に歪んだ顔をしながら、「お前も魔物バケモノなんだろ!?」と言いながら殴る、蹴るなどの暴行を加える。そして、彼らはガロンとヤヨイを抑えながらパ・スミレの前に差し出しながら命乞いと、”魔物バケモノ”のトドメを求める。 


「そうだ…これなんだよ…俺の望む平和は…!!弱者は強者の加護を受け、異端者を排除する!!変化のない時代…変化を恐れる民主が平和を作るのだ…!だと言うのにアイツら保守派は……この素晴らしい姿を見せてやりたいものだ…」 


パ・スミレは瞳に涙を浮かべながら忘れていたと言わんばかりにこちらを力強く見つめ、そして民間人を巻き込んで術を放った。 


『棘地獄・鹿目』 


地面から急速に生えた棘がガロンとヤヨイ、そして民間人達を激しく貫いた。 


────おや?魔力のある失敗作ガロンが生きているのは分かるが、魔力のないクソガキ…いや全員が重症だが生きている!?どうし…なるほど…失敗作ガロンが皆に魔力を分けて致命傷を防いだのか…!? 


「どうやら俺はお前を侮っていたみだいだ…ガロン…!!」 

自身を裏切った民間人を再び助けたガロンの姿を見て、彼らも自分達がやったことの重大さを確認する。4本ある腕のうち左上の腕は棘が貫通し、右下の腕は肘手前から引きちぎれている。左側の脇腹にも大きな棘が刺さっており、湯水の様に垂れ落ちる真紅の血は藍色の体と辺りの地面を真っ赤に染めていた。 


「ガロン…!!」 

 

自身も決して軽症ではないのにガロンの身の安全を確認するヤヨイの言葉にガロンは今はただただ浅い呼吸を返す事しかできずにいた。

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