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伝説の魔物使いが死んだ後の世界がマジでヤバい  作者: しら玉草
第3章:レイジングテンペスト
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泥棒猫VS飼い猫

はい、続けて投稿です。

前回に引き続きシリアスな……って、あれ?ラブコメでした!

腕の蘇生シーンだけグロ警報です。


 アーミャからエリクサーを受け取る、まさかこれが元人間だったなんてな。


「あ、そうだ。1つだけ注意点。脳が損傷した時は気を付けて。記憶は蘇らないから。頭だけはしっかり守ってねー」


「それは…こえぇな」


「じゃ、ぐいっといってみよーかぁ」


「簡単に言いやがって」


 腕1本無いんだぞ、これ蘇生するの絶対キツいわ…。




「マヒル、蘇生中暴れないように俺を縛ってくれ」


「だ、分かったに」


 そう言うとマヒルは俺が居るベッドに上がってきて、俺を後ろから抱き締める様にして手を回してきた。鎧は着ていない、フワッとした最高級の毛布に包まれている様だ。


「マ、マヒル!?な、何を…」


「…紐とか、見つからにゃあし、アサヒが暴れにゃあように私が掴まえとくに…」


「ふ、ふええ!?」


 なんかマヒルが積極的だ。あ、あれか!両想いだって分かったから!いや、それにしてもさ!ヒイリとアーミャが見てるんだけど!?



「あのー、紐なら僕持ってますけど?」


 ヒイリが頑丈そうな紐を取り出してアピールする。


「…紐だとアサヒに食い込むかもしれにゃあし、私の方が紐よりも強いし」


 マヒルは更に強く俺を抱き締める。もうこれ譲る気が無さそうだ。



「もー、何でも良いから早く飲んじゃってよー、私はさっさと祝福授けて帰りたいんだけどー?はーやーくー」


「分かったよもう!いってやらあ!」



 もう俺もおかしなテンションになってしまっている。

 エリクサーを飲むのは怖いのにマヒルに抱き締められて夢心地。

 自分でも怖がって良いのか喜んで良いのか分からない。


 エリクサーの蓋を開けて中の液体を喉に流し込む。

 火傷は生命の闘衣の力で治っている、問題は右腕だけ。



 ………。


「あ、あ、ああああああ!!」


 残っていた肘の骨が欠ける、そこに新たな骨の欠片が突き刺さり、また欠ける。

 腕の骨がみんな我先にと新しい骨を構成しようとし、ぶつかり合い、軋み、耐え難い痛みが腕から駆け上がってくる。


 骨が突き刺さった肉が血飛沫を上げ、その血飛沫が骨に付着し、また新たな肉が着いていく。その肉に剥き出しの神経が絡み、契れては再び絡む。


「んくぅ!が!あああ!んー!んー!」


 腕1本強制的に造り上げる、その工程はあまりにも直視に耐えない。



「アサヒ!大丈夫!私が居る、ここに居るに」


 マヒルの腕が優しく、それでいて力強く俺を支えてくれるのが分かる。

 俺は出来る限りマヒルの体に意識を集中させた。少しでも気が…紛れれば。


 ああ、筋肉質だけど意外と柔らかい、柔軟な筋肉とモフモフな毛皮が俺の体を包みこんで離さない、否!離れたくない!

 なんて極上なんだ…、世界中のどんな毛皮を持ってこられてもマヒルより素晴らしいものがあるだろうか…、いや無い、あるわけが無い。


 それに普段は鎧で分かりにくいがマヒルの胸は割りとある方だ。とは言ってもCカップくらいか?いや!十分だ!むしろベストだ!

 背中に感じる柔らかな感触が俺の劣情を捕らえて離さない。


 ふふ、ふはははははは!



「アサヒ?」


「ふははははは!」


「アサヒ?もう腕治っとおよ?」


「ふははは…はへ?」


 俺は新しく生えた自分の腕を見て手をグーパー開いたり閉じたり繰り返してみた。


「生えてる、ね。うん、問題無さそうだ」




「はいはい、じゃあ祝福授けるからあんたら早く離れなさいよー」


 一部始終を見ていたアーミャが呆れ顔で、いや、蔑む眼差しで俺を見ていた。


「えーと、…いたたたぁー、まだ痛いなぁ、これまだ治ってないなぁ」


「にゃー、それは大変やに。ちゃんと掴んでにゃあとにゃー」



 もはやただイチャつきたいだけの俺とマヒルをヒイリまでも冷たい目で見てくる。


「あははは、治った、治ったよー」


「にゃ…、じゃ、じゃあ離れるに…」


「…あ」


「ん…、もうちょっと…」



「後でやってよ!」


 流石にアーミャが怒ったあたりでマヒルから離れる。


「はい、ごめんなさい…」




「はい、アルミサエルの祝福をー」


 もう俺を見ずに適当に祝福かけてアーミャは帰っていく。

 俺の右腕には二本の金属の棒が螺旋を描いてクロスした様な腕輪が着いていた。


「これが骸真偽の槍か、物騒な名前だな」


「これも魔術武装ってことはまたぶっつけ本番になりそうにゃね」


「俺の魔力は感情で発動するからなぁ、本気になる…か。意外と難しいもんだ」




「じゃあ普段は普通のジャベリンですね。アサヒさん、どうぞ、新しいジャベリンです」


 ヒイリが出してくれたジャベリンを装備していると突然部屋の扉が開く音がした。



「あの…、お体の方は大丈夫でしょうか?」


 扉から入ってきたのはギルドの受付嬢のお姉さんだった。

 俺の姿を確認するなり腕を見てびっくりしていた、まぁ、そうだよな、そりゃ突然生えてたらびっくりするわ。


「リリアさんだっけ?どうしてここに?」


「あ、名前覚えててくれたんですね。ここは冒険者ギルドです。戻ってきたアサヒさんが重傷だったので運び込みました。腕が無かったので驚きましたよ」


「あー、そうだったのか。…あ!ベッド!血だらけにしちゃったんだけど弁償しないとだよね!どーしよーかな」


「あ、いえいえ。大丈夫ですよ。それはこちらで持ちますので。こちらとしても無茶な依頼でしたから…、その、ユニコーン…だったんですよね」


「そうだよ、ユニコーンだった」


「そんな…」


 リリアは小刻みに震え瞳が潤んでいく。


「怖いと思うけど、少し我慢しててくれ。もう一度戦ってくるつもりだ」


「え、そんな!か、格好良過ぎます!ユニコーンと戦って退けた上に生存して帰ってきたばかりか再戦まで考えているなんて!はあ~ん、もー、もー、あ!そうだ!疲れてますよね!私の家に来ませんか!?泊まっていってください!是非私の部屋に!」


 な、何ですと!?普通女性の部屋に男入れないでしょ!?

 というか、小魔王退治はアーミャの呪いで仕方なくやってるんだけど?

 なんかこのお姉さんの中で俺の株上昇し過ぎじゃない?ストップ高じゃない?



 そんな時、急にドンッという重たい物が床を叩くような音で場の空気が静まり返った。

 マヒルが斧で床を叩いたのだ。床が割れないギリギリの力加減は流石でございます。


「アサヒは私の彼氏やに、手ぇ出したら闘神ライオルトが黙ってにゃあよ」


 ああああ、怖い、マヒルの顔が怖いですよ!?


「あら、飼い猫が何やら言ってますわね。飼い主を彼氏と勘違いしているのかしら」


 リリアさんんんんん!?何言ってんのおおおお!?

 ああああ、睨み合ってもおおお、胃が痛いよおおおお。



 ヒイリに視線でSOSを送る。気付いて、助けてヒイリ!

 ヒイリはそんな俺の意図をしっかりと組んでくれたようだ、睨み合う二人の間に割り込んでいく。ああ、ヒイリ格好良い。可愛い顔だけど今は格好良い。


「今日の宿はとってありますので、リリアさんの所に泊まる予定はありません。それにアサヒさんといつも同室で寝てるのは僕ですので二人で争わないで下さい」


 ヒイリは俺の方を向いて「言ってやりましたよ」と言わんばかりにドヤ顔を見せる。

 でも違うんだ、違うだよヒイリ。確かに事実だけど違うんだよおぉ。


「こんな小さな女の子と…いつも同室で?」


「ヒイリ、やっぱりアサヒを狙って…」



 ややこしくなったああああ!!



 …… …… …



 誤解が解けた頃にはもうすっかり日が沈んでしまっていた。



前話投稿から間が無いですが、なんかもう勢いで書きました。

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