エリクサー
今回はちょっと過激な表現が含まれます。
それほどでは無いですが、グロ系とか苦手な方は真ん中あたりの区切りからどうぞ。
……… ……… …… …
……… …… …
口に…何かが流れ込んでくるのを感じた…。
やめてくれよ、眠いんだ…、起こさないでくれ。
喉に力なんて入らない、何も飲み込めない。
それなのに、その液体はサラサラと喉の奥に浸透していく。
それと同時に眠気が引いていく、脳が目を醒ます。
体には全く力が入らないのに思考は巡る、目が…開く。
俺はベッドで寝ているようだ、ベッドの脇にはマヒルが居た。
俺の目が開いたのを確認したマヒルの目には涙がいっぱいに溜まっている。
泣かせちゃったかな、ごめんよ。マヒルは俺の手を握って悲しそうな顔をしていた。
握られた手に感覚が無い、俺…もうだめなのかな。何故か思考だけは良く巡る。
「………ま…ヒ…ル」
俺は大丈夫だよ、そう言いたいのだが上手く声が出せない。
「アサヒ!良かったにゃ…、でも…これから感覚が戻ってくるに、気をしっかりもって…」
「……な…に…を」
何を言ってるのか、分かるように説明して欲しい、俺はどうなったんだ?
目だけを動かし自分の体を確認する、………どういうことだよこれ。
俺の体は切れ味の悪い刃物で斬られたみたいに抉れていた、深さを考えると内蔵までいってるはずだ。まだ新しい血液が滲み出てくる。
そして何故か俺の体は厚い帯の様なものでベッドに固定されていた。
「な…んで、こんな……ん、んんんん!!?」
お腹!お腹が!体の中が熱い!痛い!斬られた内蔵の断面に神経が集中しているかのようだ、なぜ!?突然どうして。
意識が飛びそうな程に痛いのに脳は正常に痛覚を受信する。
「エリクサーは、体の重要な機関から順番に強制的に治すに…、痛みが麻痺しにゃあから…耐えるしかにゃあ…、アサヒ、頑張って」
痛んだ内蔵が契れていく痛み、新しい内蔵が作られていく不快感。
その全てが正常に体の中の神経を巡っていく。あまりの痛みに体を捩るが体はベッドに縛られており、帯が体に食い込むだけだった。
しかし…体を捩ることは出来た、出来てしまった。それは、体の感覚が戻ってきたという事、待って、待って待って待って、まだ、まだ内蔵も痛いのに、あ、ああああ!
「あああああ!!が!がああ!ううあ……っか、ああああ!!」
斬られてグスグズになった肉がこそげ落ち、新たな肉が傷口を這い廻る。
割れた肋骨が邪魔な肉を押し退け強引に結合する。
その痛みと不快感が麻痺することは無い、脳も神経も正常に働いており、どれだけ痛くても意識は常に研ぎ澄まされていた。
「うううううううう、う、う、ああああああああ!」
もう…、なんだよこれ…、死なせてくれよ。
「アサヒ!お願い!生きて!」
は、はは。酷いじゃないか…、これ死んだ方が楽だぞ…。
でも……、それでも、マヒルは俺に生きて欲しいんだな…。
もう、それなら耐えるしか無いじゃないか、は、はは。
……… ……… …… …
体が…動く。痛みも無い。頭もしっかりとしていた。
それを確認したマヒルが俺の拘束をほどいてくれた後、俺は別のものに拘束された。
マヒルに押し倒されて再びベッドに仰向けにされていたのだ。
「アサヒ!アサヒアサヒアサヒ!良かった、良かったにゃー!」
「お、おうふ…、アレに耐えたご褒美がこれなら悪く無いかもな」
「も、もー!何言っとお!アサヒのそういう常談で私がどれだけ…」
「俺はいつだって本気だよ」
マヒルの頭をそっと抱き寄せる、これくらいの役得は許してほしい。
「にゃ!にゃー!」
「ごめん、嫌だった?」
「………んにゃ」
これは、けっこう良い雰囲気ではなかろうか…、まさか、マヒルも俺のこと…。
「アサヒさーーーん!具合はどうですか!?」
突然部屋に入ってきたのはエルフの男の娘、ヒイリだった。
俺とマヒルは慌てて離れる、くっそ、良いとこだったのに!
「あ、ああ、まあ、悪くは無いぜ」
「良かったです。で、ですね。さっそくお金の話なんですけど」
「え?」
「エリクサー、5万カッパーになります」
「えええええ!?」
思わずマヒルの顔を見ると少しばつが悪そうな顔をしていた。
「アサヒ助けよお思ったらもおこれしかにゃあて…、そういえばヒイリがエリクサー持ってたなぁって、にゃはは…、はぁ、私の独断やに、私が何とかするにゃ」
「…そういうことか、でも実際に使ったのは俺なんだから俺がなんとかするよ」
「いや…でも」
マヒルと話をしていたらヒイリが突然パンッと手を叩いた。
「はい、ここで商談です。これからは僕を二人の旅に同行させてください」
「……はい!?」
「聞けばお二人は小魔王退治なんていうとんでもないことしてるらしいじゃないですか?しかももう既に小魔王スライム倒してるとか!」
「お、おお…、それが?」
「つまりレアな素材も集まる訳ですよね?僕のティタンポケットならそれらを回収できるじゃないですか。で、その利益を僕に分けてもらえるなら僕は二人の旅に協力を惜しみません。どう考えても利益の方が大きいですから」
「いや、でもな。命の危険が…」
「あはは、僕はいざとなったら逃げますからご安心を。それに、ですね、アサヒさん達を気に入ったんですよ。実はどうやって口実作ろうか悩んでました」
そう言うとヒイリは無邪気な笑顔でこっちを見つめてきた。
「あー、もう!無駄に可愛いなぁ!」
「僕そんな趣味無いですよ!?」
「アサヒ…やっぱりヒイリみたいな子が…」
「違うから!何もかも違うから!…は、はは。じゃあ…よろしくな、ヒイリ」
「はい!こちらこそ」
瀕死が短時間で治るってこういう事だと思うんですよ。
私の世界では回復アイテムに頼る事は出来ないゾ☆っていうお話でした。
アサヒ防御力低すぎ問題も深刻ですね(笑)
そして次からヒイリが仲間入りです。戦うかどうかは分かりませんが(笑)




