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ダイザミ道中1

新章始まりました!

最近更新遅めで申し訳無い、頑張りますので見捨てない方向でお願いします。

具体的に言うとブックマーク(笑)


「やめ、やめてくださぁい!」


「へ!観念して身ぐるみ全部置いていきな!」

「逆らうと痛いよぉー?へっへっへ」



 遠くから聞こえる可愛い声と野太い二つの声。

 良く見ると、緑色の服を着た小柄でブロンドのショートヘアーでボーイッシュな女の子が、柄の悪い大男二人に絡まれていた、ああ、あれが山賊か。


 生い茂る森林の中、俺は今マヒルと次の町のダイザミに向かうための道中を歩いていた。

 その道中でまさかの山賊出現、ファンタジーアニメならよくあるシチュエーション。まぁ、狙われたのは俺では無いが。



「アサヒ、どうするとぉ?」


「聞かなくても分かるでしょ」


 俺は地面に落ちていた倒木を拾い上げると投げる姿勢へと移行する。


「女の子の敵は抹殺確定イィ!!」


 俺の手から投擲された倒木はジャベリンマスタリーの力により高速で飛行する木槌と化し、山賊二人へと向かって無慈悲に飛んで行く。


 山賊二人がかたまって立ってて手間が省けた。気付いた二人の間抜けな顔が涙目に変わった頃には既に着弾し、豪快に吹き飛んだ山賊は地面に転がり動かなくなる。

 やり過ぎ?いいえ、女の子に手を出すやからには問答無用です。


「いえーい、ストラーイク」




 突然飛来してきた倒木に驚いたのは山賊だけでは無い、山賊に襲われていた女の子も目を丸くして固まっている。

 そして俺が近付いて来るとようやく我に返ったようだ。


「あ、あの!助けていただきありがとうございます!」


「いやいやなんのなんの、困っている女の子は助ける、これ世界の常識」


「え?え?待ってください、僕は」


「僕っ!?ボーイッシュで小柄で僕っ娘!」


「え?え?」



「ちょっとアサヒ、その子困っとぉにゃ」


 少し遅れてマヒルが止めにやってくる、確かに女の子を困らせるのは紳士では無い。



「うん、ごめんね。流石に小さい女の子を困らせるのはよろしくない」


「え?あの!僕、子どもでも無くてですね」


 女の子は自分の耳を指差して何かを言いたそうにしていた。

 ん?この子ちょっと耳が尖ってるような…。まさか!ファンタジーでお決りのあの!?


「エルフぅぅぅ!!?」


「あ、はい。そうなんです。長命なのでもう30年は生きてます」


「エルフだエルフ!すげぇ!エルフってほんとにいるんだすげぇ!」


「え?え?確かに数は少ないですが、そこまで珍しいものでも…」


「いやぁ!初めて見たよ!」


 ゲームやアニメ以外ではな!


「そ、そうですか…。それで、ですね。僕は女の子でも無くてですね」


「そうだね、立派なレディだ。申し訳ない!いやー、エルフってほんとに美形だなぁ」


「あ、ありがとうございます…、じゃ!なくてですね!僕は男です!」


「………は?」


「いや、だからその、男…なんです」


「いやいや、ご冗談を」


 こんなに可愛い子は女の子でもそうそういないってのに、男な訳が無いだろう?

 いや、ネットでは逆な言葉が流行ったりもしたけども。


「…確認、しますか?」


 自分のズボンを掴んでモジモジするエルフ、心なしか頬が赤い。

 思わず本当に確認したくなるくらい可愛いのだけれども、それは男であっても女であっても色々と不味い。


「まじで男?てか頬赤らめないで?」


「なんか…すみません」


「はぁー、男かぁ…」


「そこまであからさまにガッカリされると少し悲しいですよ?」


「すまんねぇ、自分に正直な質でねー、しかも30歳て、めっちゃ歳上やん。あ、敬語使わないとまずいですね、はい」


「エルフは人間の3倍は生きますので、人間換算なら10歳くらいですよ。敬語なんていりません。まぁ、僕は人間社会で生活してるしもう働いてはいますけどね」


「ほほー、何してるん?」


「これですよ」


 そう言ったエルフが指差した物は黄土色のウエストポーチ、あー、なるほど分からん。

 しかしマヒルには分かったようで羨ましそうにウエストポーチを見ていた。


「これ!ティタンポケット?良いにゃあー、君は運び屋にゃんね」


「はい、やはり持って生まれた力は利用すべきですからね」


 運び屋?確か前もちらっと聞いた単語な気がする。丸太運ぶ時に利用するかどうか考えたけどけっきょく馬車にしたんだよな、確か。



「ほーん、運び屋ねぇ。そんなちっちゃなポーチじゃ手紙くらいしか入らないんじゃない?郵便屋さんやってるん?」


「え?ティタンポケット知らないですか?大気の魔力で起動する空間拡張型携帯倉庫ですよ。運び屋以外に行商もやってまして、商品見ます?助けてくれたお礼に安くしときますよ?」


 魔力で起動する魔術道具、前にマヒルに教えてもらったやつだ、この世界では魔法を使える者は極少数、大多数の人は魔力を媒体に流す魔術を行使する。


「あー、魔術ってやつか。便利だなおい、しかしあいにく金は無い」


 お金も無い、魔力も無い、装備も無い、モテ無い、マジなんも無い。


「まぁ、見るだけでも見てみてくださいよ」


 そう言うとエルフはウエストポーチから巨大な風呂敷を取り出した。どうやって入ってたんだよソレ。魔術マジ凄い。

 そして風呂敷を広げるとその上に商品を並べていく。


 袋に入った白い粒、塩かな?

 他の袋に入った黒い小さな実、なんだろう、黒胡椒か?

 液体の入った小さな瓶、あれは回復薬だ。見たことがある。

 その隣に置かれたのは紫色の瓶、中の液体がほんのりと光を放つ。


「その紫色の瓶は?」


「エリクサーです、一本だけ仕入れる事が出来たんですよ。5万カッパーでどうですか?」


「たけぇよ!そんな金ねぇって!!」


 しかもエリクサーってあれだろ?マヒルが言うには体治す変わりに激痛と苦痛に襲われるっていうあれだろ?怖くて使いたくない。




「にゃあさ、武器にゃあか?君を助けたアサヒは実はジャベリン使いにゃんだけどにゃ、投げれそうな棒状の武器あったら見せて欲しいに」


「マヒルは優しいなぁ、俺もうこれから先ずっと丸太投げて戦うのかと思ってたよ。…でもどうせ使い捨てになっちゃうかもだし、もう武器は諦めようかな」


「えー、あ!じゃあスライムの時みてゃーに真下に投げたら?すぐ回収できるに」


「ゼロ距離で戦えと!?」


「それじゃあジャベリンに紐付けて引き戻したら良いにゃ」


「どれだけ長い紐付けたら良いのさ…、引き戻す時無防備だし」


「むー」



「あはは、とりあえず適当に並べますね」

 そう言うエルフは俺とマヒルのやりとりを見て楽しそうに笑っていた。


 まずはやはりジャベリン、…では無く細身のスピア。ジャベリンは需要が無いため仕入れないそうだ。行商人が売れない物持ち歩くはずも無い。


「やっぱりジャベリン人気無いのな」


「今はいしゆみもありますからねぇ、投擲武器はどうしても…」


「だよなぁ」



 エルフがいくつか武器を並べたところで俺は気になる物を見つけてしまった。

 それは全長30センチメートルくらいの大きな針の様な物。槍として見たら非常に小さいが、針として見たら非常に大きい。そしてそれはどう見ても針だった。

 持ち手20センチくらいで、その先端には10センチくらいの円錐形の太い針。


 それが目に付いたのは携帯しやすそうだったからだ。パルクールの動きも阻害されないし、ジャベリンマスタリーの効果適用内。サブウェポンとして申し分無い。


「これは?」


「これはですねー、毒針です。持ち手の部分が筒状になってまして、そこに毒草とか色々入れるんですよ。中がミルになっててですねー、すり潰された毒のカクテルが針の先端の方に送られる仕組みになってるんです。なかなかに良い品ですよ」


「おー…、良いなぁ思ったけど高そうだな…」


「これは一点物の嗜好品ですからね。5000カッパーいただきたいところですが、アサヒ…さん?には助けてもらいましたし、3000でどうでしょう?」


「俺の全財産は300カッパーなんだが?」


「…ではこうしましょうか、僕ダイザミに向かう途中なんですよ。道中の護衛を依頼します。この毒針はその報酬、ということで」


「え?そんなんで良いの!?破格過ぎない!?」


 何より目的地が同じだ、一緒に歩くだけで3000カッパー相当というのはあまりにも…、何か裏があるんじゃないかと心配になるほどだ。


「ふふ、アサヒさんに先行投資したくなりまして。お二人の人柄と強さ、仲良くなっておけば僕にも得があるかもしれないですからね」


「ほーん、まぁ、なるほど?高く評価されたものだねぇ。じゃあ契約成立ってことで、よろしくな!…えーと、名前なんて呼んだら良い?」


「あ、申し遅れましたね。僕の名前はヒイリです」



新しい道連れを追加しました。

はてさて一時的な仲間なのか、これからずっとついてくるのか。

たくさん荷物持ててお金持ち、超便利な合法ショタです。

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