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94 浩二さんの親友の手相占いは?

問い質すのは料理を作りながらでもできると判断して、私は占いを続けることにした。


「わかりました。そう言うのでしたら」


そう言ってキッと睨みつける。対して浅井さんは澄ました顔をしていた。


(なんか、腹立つわ~。やっぱり間違いなく、浅井さんは和彦と同人種よ!)


「では、行きます。まずは感情線から。浅井さんは・・・」


私は線に集中し始めたところで、あれっ? っと、思う。視界がぼやけて意識に霞がかかったように曖昧になっていくのだ。


(あー、なんでここで来る・・のかな・・・)


私は意識を持っていかれる感じを味わいながら、瞳を閉じたのでした。



意識が急速に浮上してきて、私は顔をあげた。目の前には青い顔をした浅井さんがいた。左手の手の平を上に向けて、ローテーブルの上に投げ出すように置いている。震える唇から言葉が漏れるけど、独り言に近いものだった。


「下平が話したのか・・・いや、そんなことはないはずだ。下平だって知らないことだから。・・・じゃあなんで麻美ちゃんは知っていたんだ。本当に見たのか。俺の過去を?」


恐れるような顔をしている浅井さんは、私の顔を見てハッと正気に戻ったようだ。その様子に私は申し訳ないと思った。


「麻美ちゃん? どうしたんだ。顔色が」


浅井さんが訝し気に言いかけた言葉を全て聞く前に、私はテーブルに突っ伏すようにして、再度意識を手放したのでした。



「どうしよう。・・・やはりここじゃなくて、布団に寝かせた方がいいかな。・・・やばい、下平に怒られる。あいつは怒らせると怖いんだよな~。ああ~、こんなことなら変なちょっかいを出すんじゃなかった~」


また意識が浮上した私の耳に、浅井さんの弱り切った声が聞こえてきた。目を開けると仰向けに寝かされている模様。


「そんなに、浩二さんは怖いんですか」


少し掠れていたけど、なんとか声は出せた。私の声が聞こえたのか、浅井さんが私の頭のそばにしゃがみこんで覗き込んできた。


「よかった~。急に意識を失うから、どうしようかと思ったよ。下平に麻美ちゃんは身体が弱いって聞いていたのに、無理をさせたなんて知られたら・・・。本当に一発殴られるだけで済むかどうかわかんないよ」


ぼやくように言われて、私は額に手を当てて目を閉じた。体にはタオルケットを掛けてくれてあった。目を開けたら困った顔をした浅井さんの姿が見えた。


「私は身体が弱いわけじゃないですよ」

「そんな姿を見せられて信じるわけないよね」


私はゆっくりと体を起こした。浅井さんのことを見たら渋い顔をしている。


「本当に大丈夫ですから。それよりも私はどれくらい意識を失っていましたか」

「そうだな、動揺して時計をちゃんと見ていなかったけど、大体5分くらいだと思うけど」

「それなら、大丈夫ですね。まだ浩二さん達は戻ってこないでしょう」


私はそう言うとタオルケットを畳んで立ち上がった。


「ちょっと待ちなよ、麻美ちゃん。まだ顔色悪いから動かない方がいいって」

「でも、そろそろ料理を作った方がいいですよね。何も作ってないのは不自然ですから」

「それは俺がやるから。だから麻美ちゃんは休んでて。本当に下平が怖いんだって」


必死な感じに浅井さんが言うのがおかしくて、口元に笑みが浮かんできた。


「それなら台所に移動しませんか。浅井さんは料理を作ってください。私は座っておとなしく話しをしますから。でないと、せっかく私と二人になった意味がないでしょう」


浅井さんは少し目を瞠ってから、苦笑を浮かべた。


「なんだ、バレてたんだ」

「そりゃあ、わかりますよ」

「なんか、下平は苦労しそうだな。麻美ちゃんには隠し事は出来そうにないみたいだね」


私達は台所に移動した。台所にも食事ができるようになテーブルがあった。私を椅子に座らせると、浅井さんが訊いてきた。


「何か飲む?」

「白湯を頂けませんか?」

「白湯? お水じゃなくて」

「はい。温かいものが飲みたいので」

「それなら、お茶とか紅茶とかコーヒーを入れるけど」

「じゃあ紅茶をお願いします」


浅井さんは私に背を向けて紅茶の用意をした。私の前にマグカップをおくときになんでもないように訊いてきた。


「ところでさ、さっきのあれって、麻美ちゃんじゃないよね」


探るように見てくる浅井さんの目を見返しながら、私は口元に笑みを浮かべた。


「浅井さんもわかりました?」

「そうりゃあねえ。下平からあんな風になるなんて聞いてないし、ましてや麻美ちゃん自身が驚いていたからね」


それは私が意識を持っていかれた時の事だろう。でも、少しの変化に気がつく浅井さんは、やっぱり面倒くさい人なのだろうと思った。


「それで、さっきのあれって誰なの。もしかして、麻美ちゃんは二重人格とかかな」


(・・・口調が楽しそうなんだけど。あ~、やだやだ。浅井さんも人の反応を見て楽しむタイプの人なのか~)


「違います。さっき浅井さんに失礼なことを言ったのは、私の守護霊です」


投げやりな気分になった私は、誰にも言ったことがない事実を口にしたのでした。


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