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旦那様、その真実の愛とお幸せに  作者: おのまとぺ
第三章 シンプソン公爵家の当主
33/63

33 二人の弁護士



 レミリアとアントンの裁判は、シンプソン公爵家が居を構えるグスタフの街の中心部にある大きな裁判所で行われることになった。どこから聞き付けたのか、好奇の目を向ける野次馬たちを横目に、レミリアは足早に建物の中へと身体を滑り込ませる。



「あぁ!シンプソン公爵()()!」


 扉も締まり切らぬ間に、背後から声が掛かった。


「………? どちら様でしょうか?」


 振り返れば、丸メガネに笑顔を湛えた恰幅の良い男が立っている。記憶を辿りつつ口を開こうとすると、相手方が「自己紹介がまだでしたね!」とこれまた勢いよく言った。


「私、アントン・シンプソン様の弁護士を務めさせていただきます、ゴドリック・バギーと申します」


「あぁ……なるほど」


 確かに名前は聞いたことがある。流し読みした裁判の資料に書かれていたのだろう。


 サッと水を被ったように冷静になる頭を押さえて、レミリアは形ばかりの挨拶を述べた。こちらの話を聞いているのかいないのか、バギーはニコニコと終始笑顔で頭を振っている。


「あ!噂をすればですねぇ」


 何かを発見した男は、手を高く上げてどこか遠くに居る人間の関心を引こうとした。その様子が伝わったのか、小走りの足音とともに「これはこれは」という声が迫る。


 引き攣りそうになる頬に力を入れ、無理矢理に作った笑顔を貼り付けて、レミリアは声がした方を振り返った。



「久しぶり……アントン」


「二ヶ月ぶりかな?しばらく見ない間に随分とみっともない顔になったじゃないか。こんなにクマが出来てる。さぞかし用意して来たんだろうなぁ!」


「…………」


 返事を返さないレミリアを見下ろして、アントンはわざとらしく眉を寄せて首を傾げた。


「君の弁護士は何処に?」


 つられて隣に立つ丸顔の弁護士バギーも「本当ですねぇ」とキョロキョロ頭を振って見せる。レミリアは動き出しそうな右手に力を込めて、自身を律した。


「居ません」


「えぇっ!?」


 これまたわざとらしいアントンの声。

 レミリアは口元の筋肉がヒクつくのを感じた。


「弁護士は雇っていません。言い掛かりでしかない詐欺罪の対応など、私一人で結構です」


「素晴らしい自信だなぁ!てっきり僕はうちのお抱えの弁護士でも引き連れて来るのかと思っていたよ。ほら、あの、君が贔屓にしている庶民の……」


()()ではないでしょう?」


「へ?」


「シンプソン公爵家はもう貴方の家ではないのだから、そんな言い方は誤解を招きますよ。それとも、まだ夢の続きでも見てるのかしら?」


「この……ッ!!」


 憤る依頼人の腕を慌てて引っ張ったバギーは、短く咳払いしてアントンの耳元に顔を近付けた。すぐに青白い顔がパッと明るくなる。


「そうだった!僕としたことが忘れていた!」


「………?」


 レミリアの前でアントンは歯を見せて笑った。


「今日はね、このバギーの他にもう一人弁護士を雇っているんだ。こうした詐欺の分野の専門家の方さ。エロイーズと二人で探し出したんだよ」


「専門家?」


 聞き返すと、アントンは笑みを深めてぐいっと身を寄せた。鼻腔を突く強い香水の香り。


「あぁ、そうだとも。彼の前ではどんな罪人も罪を認めざるを得ない。白だって黒になるんだ!」


「………!!」


 負けるわけがない。

 そんな気持ちで家を出て来たのに、レミリアは思わず息を呑んだ。それほどまでに元夫が見せた笑顔は薄気味悪く、恐怖を抱かせるものだった。脱力した身体で三人の男たちの背中を見送る。


 相手方の弁護士は二人も居るらしい。一人も見つけ出せなかったレミリアに、立ち向かうことが出来るだろうか?


 しかし、今回は根も葉もない嘘の申し立て。でっちあげの罪状なのだから、こちらが弱気になる必要はない。そうだと、分かっているのに。



(ダメだわ…… 強く構えないと、)


 拳を握り直すレミリアの隣から「すみません」と小さな声が聞こえた。目をやれば、小脇に新聞を抱えた小柄な老人が立っている。


「はい………?」


 不思議に思うレミリアに向かって、男は帽子を取って頭を下げた。


「隣町のオグズワードから来ました、リーマン・ラッセルです」


「えっと、えぇ…… 傍聴席でしたら表の列に並んでください。きっとじきに案内があると思います」


「あ、傍聴ではありませんよ」


「お手洗いですか?すみませんが、私もこちらの場所は初めてでして。よろしければ施設の者を探して来ましょうか?」


 見るからに年配の男は、何が面白いのか乾いた笑い声を洩らして再び口を開いた。


「弁護士なんです」


「貴方もアントンの?」


「いいえ。貴女のです」


「はい?」


 裏返った声で聞き返すレミリアの前で老人は胸を張った。


「レミリア・シンプソンさん、本日貴女の弁護士を担当させていただくリーマン・ラッセルでございます。以後お見知りおきを!」



傍点の入れ方がアルファポリスとなろうさんでは違うようで、正しく表情されていませんでした。修正したのですが、今後何かしら変な状態になっていましたらすみません;;

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