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ルアン一行

アスが指示を出しながら傭兵団員がルスの治療をしていると同時刻、ルアン達はロキの待つ拠点へと辿り着いていた。


「やっぱり正面突破は難しかったか」

「ゲホゴホッ、煙たいー」

「おい待て、ゴーレムの嬢ちゃんはどこに行った?」

「「えっ?本当だ!!」」


ゴオルに指摘され気付いた二人が辺りを見回すと一枚の紙が落ちていた。


『アスちゃん落っこちちゃったのてこっちで回収して転生者組に送っておきました♪正直私の力ではその空間にアスちゃんも送れないので』


ルアンがそれに気付き拾い上げ読むとアテナのものと思われる字でそう書かれていた。


「アスは、無事だってさ」

「よ、良かったぁ」

「色々な意味で焦ったわ」


現在アスが絶賛大活躍中とは今の二人は知る由もなかった。


敵が来たら即戦闘に移れるよう準備をしながらルアンとファルが笑い合っていると次々と気を失っている仲間たちが目を覚まし始める。


『主、こんを早く使って』


全員が起きるのを待っているとこんが退屈そうな念とともにカタカタッと刀身を揺らし鞘を鳴らす。


「ちょっと待ってくれ、みんなが起きたら思う存分つかってあげるから」

『ひ〜ま〜』

「じゃあ少しだけ昔話をしようか」

『面白そう』


ルアンが退屈と駄々をこねるこんにそう提案してみると思った以上にこんが食いついてきた。


「よし始めるか…………むかーしむかし、ある所に一人の若者がいた。その若者は特に優れた所はなく、友人もその若者を知るものも少数でした」

『可哀想』

「だよね…………ゴホン、そんな若者がある日、神様を祀ってある建物を訪れると知らぬ間に若者の住む世界とは別の場所にいたのです。最初は戸惑ったもののそこの住人達は若者に優しく接してくれ、時々死にかける事もありながらも徐々にその世界を好きになり人々を好きになって行ったのです」

『良かったね若者さん』

「そうだね」


そこまで話をしたところで最後の一人が起き上がってきた。


「こん、この話はまた後でな」

『うん!!』


傍でその話を聞いていたファルはその昔話の主人公が誰の事なのか察し慈愛に充ちた頬笑みを浮かべ二人━正確には一人と一振り━を優しく見守っていた。


「よし、全員復活した事だし行くか!」


ルアンがこんを抜き放ちロキの待つであろう長い廊下の奥へ向けこんを向け気合いの篭もった声を上げる。


始めて何かを好きだと思えたんだ、この世界が、この世界の住人がだから絶対に壊させない。


ルアンは胸に決意を抱き一歩前に出た。

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