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剣士の常識非常識

あちこちで轟音や断末魔に包まれた戦場の真上でヒポグリフとワイバーンの鳴き声、金属がぶつかり合う甲高い金属音が響いていた。


ワイバーンに乗っているのは小さく小柄な少女、ヒポグリフに乗っているのは長い髪の男であった。

その二騎の争いを見ていた元農民の兵士は額に落ちてきた液体に驚きやたらめったらに剣を振り回し敵味方関係なくひとしきり切り付けると次第に腰に力が入らなくなりその場に座り込む。

そして、再度天を仰ぎみるとその瞳には目の前まで迫って来ていた血塗れのヒポグリフが写った。



~~~



━━グシャッ


肉と骨が絡み合い崩れ合う音を右から左に流しつつ重力により生まれた運動エネルギーを膝を使い全て受け流し着地する。


「ヒュウ、ヒポグリフと人間のミンチってな」

「余裕そうですね」

「まぁ動きにくいけど地面があった方が下からの攻撃気にしなくて済むし?」


色男は死んだ人もヒポグリフも本当にどうでもいいといった様子で肩をすくめると今まで手網を握っていた手でもう一つの剣を強く握る。


色男が地に落ちた事を確認するとケトとフィルも地上へ降り、ケトは両手に複数のナイフを持ち、フィルは試練によって戦い慣れた人型になり、油断をせずに確実に潰せるよう二対一で挑む。


「俺の名前はサイノ、サイノ・アルネシスだ」

「……ケト」

「フィルっす」

「ふーん、ケトちゃんにフィルちゃんね?じゃあ、やり合お」


━━カィン


ケトはサイノ全ての喋り終える前にナイフを投擲し、フィルの対角線上へとすぐさま移動を始め挟撃を狙う。


「いい判断だねぇ、でーも?」

「させねーです!!」


何かをしようとするサイノを阻止するべくケトがナイフを投擲し、それがサイノの目の前まで迫った所でサイノが突然ぶれた後ナイフがサイノを通り抜けて行く。


「は?」

「うわぁ、この人人間やめてないっすか?」

「「酷いなぁ、剣士が分身なんて定石だよ?」」

「んな話聞いたこともねーですよ!!」

「「二対一はフェアじゃないからね、これで行かせてもらうよ」」


サイノはニヤリと笑うと互いに背中を預ける格好で双剣を構える。


「フィル、めんどくせーですがこいつはここで確実に潰しとくです」

「了解っす!」

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