共闘イカズチ・クルーダ②
大男の手が閉じられ、数秒の間その空間だけを静謐が支配する。
クルーダは槍を構えることすらせずただ呆然と今自分の命を救った敵であるイカズチが潰されたのを見ている事しか出来なかった。
大男はその手の感触にどんどんと口角を徐々に吊り上がっていき、その閉じた両手を思い切り振り上げ地面に叩きつけた。
地面が弾けると共に赤い血潮が指の隙間から噴き出す。
「グヘ、アガイアガイ!!」
大男が指の隙間から赤い血潮が噴き出す光景に気味悪く笑っていると肩に一本の槍が突き刺さった。
「アァ?イダイイダイ」
「そうかい、それじゃあもっと痛い痛いしてやるよ」
大男は肩に突き刺さった槍を見て、何事もないかのように口にし未だに手を叩きつけ続ける。
それを見てクルーダは頭に血が上り、地面に転がっていた暗器を全身を使って大男に投げ付ける。
━━ドシャッ
「アグアァァァァァアア!?」
クルーダの投げた暗器が大男の眼球を粉砕しながら刺さり、その痛みに大男は堪らず閉じていた手を離し暗器の刺さった目を両手で抑えのたうち回る。
大男がそちらに気を取られているお陰でクルーダは余裕を持ってイカズチを回収し少し離れたところまで移動することが出来た。
「おい、暗殺者!さっさと起きやがれ、てめぇ俺の事なんざ助けようとしやがって」
「………クルーダか」
「んだよ!てめぇ勝負ほっぽって人を助けてそんで死のうなんざ思うんじゃねぇぞ、俺はてめぇと決着付けて飲みに行くって決めてんだ。もちろんお前のおごりでな」
クルーダの怒気と別の何かが混じる声をイカズチにかける。
「それは困ったな、何しろ奢ってもらうのは俺の方だからな。生憎と俺は道具に金を使ううえ、お前より強いからな」
それにイカズチはどこか困ったように笑うと身体のあちこちが骨折し、血をダラダラと垂らしながらクルーダへ向け冗談を言うと、その死体のような四肢を無理やり動かしのたうち回る大男のアキレス腱を投擲した暗器で見事切り裂く。
「暗殺者、てめぇは後ろで周り警戒しながら援護しろ。その冗談を吹き飛ばす程の俺の本気、見せてやるよ。」
クルーダはそう言い残すと一瞬残像が見えた程の速度で大男へ迫る。
その肩に勢いを全て乗せた蹴りを入れ、肩に刺さっている槍を握りしめ蹴りの反動で槍を引き抜きながら華麗に宙を舞い大男との距離をとる。
「うげっ、槍が脂まみれになってんじゃねーか」
槍がテラテラと光っているのを見たクルーダは心底嫌そうな顔をしながらその槍を大男のへ構える。
「図体がデカいだけの赤ん坊、てめえの手なんぞ簡単にひねってやる」
「ユルザナイ、オマエラブヂコロズ!!」




