日焼けとこん
翌日海から戻ってきた俺達はある物に悩まされていた。
それは海に行き一日中はしゃいでいた者が決して逃げて通れない鬼門。
━━━そう、日焼けである。
くそ、何となく分かっていたけど案の定日焼けに悩まされることになるとはな。
「ご主人…………痛いよぉ…………」
「ヒリヒリするです」
「こういう時人外組が羨ましいな」
そう言いファルを始め人外組に目をやると何事もないようにこちらを見ている。
「大丈夫っすか?」
「ん…………大丈夫、です。お昼ご飯の……用意を、しないと」
「ひとのからだはふべん、わたしいたくないからなにかてつだう」
日焼けで痛そうにしているメアにフィルとアスが寄り昼食の事について話している。
うんうん、人の事を心配できる子に育ってお兄さんは嬉しいぞ。
「ケト、大丈夫?」
「このくらい傷だらけになるよかマシです」
普段戦闘などを行っているであろうケトも日焼けの痛みは初めてなのか少し苦しそうにしている。
そこにファルが心配して近寄っているのを見て頬が思わず緩むのを感じる。
みんないい子だね…………でも誰一人として一言もかけてもらえないのはお兄さん悲しいよ?
内心でそう涙をこぼしていると『主、大丈夫?』と何処からか聞いたことの無い声が心配の言葉を送ってくれた。
とうとう相手にされなくて俺の脳が空想の話し相手でも創り出してしまったのか?まぁ一人よかいいけど。
『空想違う、こん。ちゃんとした九十九神』
はいはい、九十九神のこんちゃんね?心配してくれてありがとうね?
『こん、やっとお話出来た』
…………ちょっと待った、魂浄刀から念が送られてくる気がするんだが気の所為だよな?
『こんはこん、気の所為じゃない』
は、ははは…………いやぁ、疲れてるんだな俺。
『こんを無視しないで』
こんと自称する空想の声がむぅっと言う顔━厳密には念なのだが━をこちらへ向けた瞬間魂浄刀がカタカタカタ!!と揺れ始めた。
『主、お話できるようになった今日からよろしくお願いします』
アッハイ
またなんか増えちゃったんだけどぉ?
いや、そんな事よりおうどん食べたい。じゃなくて日焼けをどうにかしなくては。
「シファー、日焼けに効く薬とかあるか?」
「ありますよ」
「あるのか!」
ダメ元で聞いてみたが流石シファー、物知りで頼りになる。
「普通に回復ポーションで痛みも引きます」
「………………そういうことならこうなる前に言えよ!!」
シファーにデコピンをかますと次空間から回復ポーションを出しケトとメアに塗ってやり日焼け騒ぎは事終えた。
その後には魂浄刀の九十九神こんが話に加わりみんなを驚かせていたがまぁ異世界だしもうなんでもありか。
次回から本編に入っていきます




