帰るべき場所へ
日が落ち空を赤く染め上げる中俺達はミカドネズミの歯を大量に持ってギルドへと到着した。
「おやおや、随分と早いねぇ」
「みんなが優秀なだけですよ」
素直な褒め言葉に無い胸を張りながらふふん、とドヤ顔をする者やふんっ、と恥ずかしいのかそっぽを向く者もいた。
「さて、歯が1 2 3 4 5………………全部で4068本か、やるじゃないのさ、しかも女王の歯まであるじゃないかい」
あぁ、あの母ネズミ女王なんて呼ばれてんのね?どこの世界でも母は強しなのかな。
そんなことを考えているとナッタテさんが鑑定を終えクエストの報酬を出してくれているところだった。
「はいよ、クエストの報酬プラスミカドネズミの素材の代金だよ」
軽く返事をして報酬を受け取るとギルドを後にする事にした。
外に出ると既に夜の帳が降りており、満月がこの街を優しく照らす。
「マスター、ごはんごはん」
「そうだね、私もお腹すいたよルアン」
「にい……ルアンが飯を作るってんなら手伝ってやらなくもないです」
「ご主人、私も手伝います。」
月光照らすエメラルドグリーンの街を5人で歩き竜車へ戻ると
お留守番のフィルが寂しかったのか玄関にあたる扉を開いた瞬間犬のように飛び込んで来た。
「ご主人~寂しかったっす~」
突然胸に飛び込んでくるものだからガードも何も出来ずフィルをもろに受けてしまった、その為肺からは空気がほぼ全て抜け軽い呼吸困難に陥っていた。
「ゴッホゴホ、あ……あぁ、フィル…ごめんね……」
「もう、一人ぼっちは寂しくて辛いんすよ?今度から一人で置いていくなら早く帰ってきてくださいっす」
フィルはそんな事を言いながら頭をグリグリと胸板に擦り付ける。
しかし、フィルのその行動は後ろからの圧力により5秒も経たずに終わりを迎えた。
「はいはい、後ろからの圧力やめようね。それと晩御飯作って来るから少し待っててね」
俺が注意すると後ろから送られる圧力はパタリと消え、手伝いをしに来たのか二~三人が後ろを着いてきた。
一方ファル達はと言うと
「フィル、羨ましいな。今度私もやってみようかなー」
「ファルはいつもあれいじょうのことしてるとおもうんだけど」
しかしそんなアスの声はファルには聞こえてはいなかった。
〜〜〜
「ここは、どこだ…………俺は…誰だ?」
ルアン達のいる町から遥か遠くで、一人の男がそう呟いた。
その男はボロボロの鎧を見に纏い、その鎧には何かとの激戦、或いは一方的な攻撃を受けた様な傷があった。
顔は男らしい、といえば聞えはいいが何かの動物に似ているとも言える顔だった。
そしてその満身創痍男はルアンと一言口から漏らすと歩みを進めていく。




