お目覚め
何も無い空間に二つの人影がたたずむ。
互いに互いを見合っている中何も無い空間が徐々に姿を変えていく。
ただただ広い少し湿った土の地面にそこかしこから芽が生えすくすくと早送りの映像を見ているかのように木々が育ち生い茂る。
その木々が生い茂る気色はこの世界に来て始めてみたものだった。
「なぁファル、ここでの出来事覚えてるよな?ここで出会ってあのやり取りをして一緒に旅をする事になった場所だよ」
ファフニールにそう語りかけると視線だけで人を殺しそうな鋭い眼が少し和らいだ気がした。
「俺、この旅結構好きなんだよ。色々な所で色々なものを見てトラブルに巻き込まれたりしてみんなとワイワイする旅が、だからさ━━」
次の瞬間には既にファフニールの目の前まで迫り
「━━早く起きて旅の続きをしようよ」
そんなセリフを吐きながらファフニールの顔に自分の顔を寄せ━━
━━そこで目が覚めた。
「ルアンさん!!」
シファーの声が聞こえ咄嗟に起き周りを見回すとそこには先程起きたのであろうアスとメアが眠そうに瞬きをさせながら起き上がっている。
「シファー、ファルは?!」
「それがその…………」
シファーの言葉の詰まった様子に慌ててファルを見るとファルはまだ眠ったままだった。
「ファル…………」
結局ダメだったのか、ならもう一度シファーに頼んで━━━
「ばあぁ!!」
その瞬間シファー以外の全員がビクリと体をふるわせた。
「ファル、起きてたのか?」
「うん!お陰様で目が覚めたよ!!」
「それで?シファーさんは驚いてなかったということは知ってたんですよねぇ?」
「あ、いや……ちょっと出来心で━」
「問答無用」
次の瞬間シファーの額はペチンという音を立て赤く染った。
さて、悪夢事件も終わったしそろそろ地上に降りるとするかな。
ところでこれどうやってスクロールに戻すんだろ。
「シファー、これをスクロールに戻す方法知らない?」
「んぇ?あぁ、こういうのはスクロールに戻れと念じるだけで戻ってきますよ。それよりもこの乗り物推進力は無いけどどんな所でも進めそうですよ?」
「と言うと?」
「この乗り物引く魔物によって色々なことがで来るようです、例えばこの乗り物をドラゴンが引けばそれに続いて一緒に飛ぶことができるし馬が引けば地上を走れると言ったように地形と魔物によって運転方法を変えられるものらしいです」
え?もしかしてこの乗り物恐ろしく便利?
「とりあえず俺が引いてみるかそれでダメだったなら頑張って持ち上げればいいだけだし」
そして、実践してみるとあら不思議重くも無いし違和感もない、そして本当にあの馬車もどきが飛んでいる。
「これなら移動が楽だな」
「すごい、です……馬車って飛ぶん…ですね」
「これが特別なだけだからね?」
そんなやり取りが出来る時間が帰ってきて少しほっとするのであった。




