二人のメイド
朝食を終え宿屋の自室に戻りしばらくのんびりしているとふとメアがいないことに気づいた。
心配だから探しに行くか。
そう思いたった俺は宿屋の人に鍵を預けると街へと繰り出す。
とは言ってもどこにメアがいるかなんてほとんど検討がつかないんだよなぁ。
俺はそう思いながら街の屋根を伝いメアを探していく。
そうして暫く街の屋根を飛び回っていると一人のメイドを見つけた。
お、メアか?
屋根から裏路地へ降りメアのいる通りまで出て確認してみるがそのメイドはメアでは無く別のメイドであった。
メアではないことに気を落としているとメイドが裏路地へと入っていくのが見えた。
気になるからちょっと何してんのか見ちゃおうかな。
この場にファルやケトがいたら探しに行くぞと連れて行かれるだろうが今は違う、一人だからな。
この機会に異世界のメイドはどんなのか観察しようではないか。
そう自分に言い聞かせメイドの動向を観察しているとメイドの前から柄の悪そうな二人組が歩いてきているのが見えた。
少し心配になって何時でもあの二人組を撃退できる準備をしておく。
そして、少し様子を見ていると案の定メイドが二人に絡まれる。
あぁ、やっぱりかぁ。
そう思いながらナイフを射出しようと構えるとあることに気づいた。
それはメイドが何故か興奮している事だ。
あの二人組は全くもって分かっていないがあのメイドは確実に興奮している、向こうの世界でもある程度と言っても電車や道端で見る程度だが変態は見てきた方だからわかる。
あれは変態だー
メイドにもガラの悪いヤツらにも絡まれたくないからさっさと退散するか━━
━━カラン
そう思った矢先に俺は足元にあったゴミを蹴り飛ばしてしまった。
『潜む者』
俺はスルースキルを発動するとさっさとその場をあとにした。
〜〜〜
変態達から逃げ、俺はアガナ達のアジトへと足を運んだ。
すると誰もいないであろうアジトから人の気配がする。
二人くらいいるな。
不審に思った俺は潜む者を使いながら気配のする場所へと近づいていく。
そして気配のする部屋の扉の前に立つと音のしないように扉を少しだけ開け中を確認する。
するとそこに映ったのは二人のメイドだった。
片方はメア、もう片方は先程のメイドだ。
━━ギィィ
扉が嫌な音を立てながら開く。
その音に二人は驚いたようにこちらを向き俺を見た瞬間安堵の表情へと変わる。
「お……おかえり…なさいませ、ご主人様」
「ご主人様おかえりー」
「ただいま。ところでメア、そっちのメイドさんは?」
「ご主人様ぁ酷いですよぅ、忘れたんですか?フィルですよフィル!!あなたの可愛い可愛いワイバーンちゃんですよ?」
なんということでしょう、あの至って普通のワイバーンが鱗とおなじ藍色の短い髪を肩までさげて、瞳は黄色く少し野性味を帯びたファル並の美少女へとビフォーアフターです。
さらに頭には小さくなった角がちょこっと生えている。
「あ、あの……フィルが、一人がさみしい……みたいで、頑張って人型になれるように一緒に、練習…してました」
そんなに寂しい思いをさせてたのか
「うんうん、メアは偉いな。フィルもよく頑張ったね、これで一緒に街にいれるぞ!」
「「やったー!」」
それにしてもなんでフィルはあの状況で興奮してたんだろう。




