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ここにも策士がいた

俺が抗うことをやめてしばらく経ったがファル達は一向に起きる気配はなくそれどころかさっき加わった二人が眠りについてしまっていた。


ケトは寝言で 兄ぃ とか言って頬を緩めているしネスは嬉しそうに寝ているから起こそうにも起こせない。


俺はいつからこんなラノベ主人公みたいな事になったんだよ。


取り敢えずそろそろ起きないと朝食に間に合わなくなりそうだな。


俺は顔以外をしっかり固定されて動かせないので少し顔を起こしてネスの耳に息を吹きかける。


「んむぅぅ?」


よし、ネスは起きたな。


次にケトの耳に息を吹きかけるが一向に起きる気配はない。


むしろこっちに近づいているようにも見える、ので耳を噛む。


「うひゃあぁぁぁ?!」

「お、起きた」

「なななっ何しやがるです!!」


耳を優しく噛むといつものケトは絶対に出さないような可愛らしい声を出し起きる。


そして涙目になりながらナイフを取り出し構える………これ二つの意味でヤバいかもな。


「ね、寝てる時にそんな事をしてくるなです………」

「おう、ごめん」

「せめて起きてる時とかこういうボソボソ……………」


俺が素直に謝ると何かをぼそっといいながらナイフをしまう。


この二人も起こさないとな……


「アス、起きろーでないと変な事するぞー?」


━━スッ


俺がそう言うとアスが顔を近ずけてくる。


あ、こいつ起きてやがるな。


「さっさと起きたら撫でてやろうかな~起きなかったらグリグリするけど」

「起きた、なでなで」

「……起きてたろ」

「今起きた、なでなで」


扱い安くて助かるわ、そう思いながら俺はアスの頭を撫でる。


後はファルだけなんだが、こっちは完全に熟睡中なんだよなぁ……俺の指齧ってるし。


「おーい、ファル?起きろーそして指を噛むな痛い」


………耳元で言っても効果なしと。


「もうファルはこのまま運ぼう、ねぼすけの朝食は無しで」


そうして起き上がるとアスが頬にキスをしてきた。


「アス?」

「おはようのちゅう」

「え、あ、はい」


俺も言われるがままに返すと


今度はネスとケトが同じようにキスをしてくる。


「ネスにもしてー?」

「く、空気を読んでやっただけです、お返しぐらいはしやがれです」


素直なネスとツンデレっぽいケトの額にキスを返すとファルに齧られている指を抜き取る。


「ん、んんぅ…」


するとファルは赤ちゃんの様に指を探して手をパタパタとさせる。


随分と可愛いな。そう思っていると行き場を探している手が俺の頭を抑え━━


━━マウスtoマウス


はい?!


「「え」」


周り━俺も含めて━が呆然としている中ファルがゆっくりと目を開け悪戯に笑いながら


「んむ、おはようルアン♡」


あぁ、策士はここにもいた。

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