ありえへん!
人生で、自分で買った車は1台だけです。今日はその車にまつわるお話を……。
離婚して一人になって、一番こまったのは車がナイことでした。彦根市に住んでいた頃は自転車生活をしていましたけれど、新しい(非合法の)お仕事について甲賀市甲賀町へ引っ越したら、マジで車がないと移動できなくなった。シャレにならんお仕事の話は、またいつか書きます。
その頃は、漆職人をしていました(← コレもすごい話だよな)。漆だけでは食べていけないので新しい仕事についたら、どうしても車が必要になった。だって職場から最寄り駅まで5㎞くらいあるのですよ! バスは一日に2~3本しかない! 最初に提示されたお給料は破格の高待遇だったし、ボーナスや臨時ボーナスもたくさん支給されるという話だったので、何とかなるかも……という希望的観測のもとに中古の車を買いました。
知り合いの紹介で、小さな整備工場に「ボロくていいから、安い車を探してください」そうお願いしました。ラッキーなことに、とある高齢のご婦人が「免許を返納して乗らないから」と、軽自動車を工場に持ち込んで処分を依頼した直後だった。走行距離はたった5千㎞、車検は1年ある。大きな故障もない。それをたったの20万円で売ってくれる! 超ラッキー!
工場主:ただしあちこちにぶつけたキズや凹みがあって……。
ソウ:かまわないです! 私もぶつける予定ですから!
工場主:それと致命傷なのがガソリンの盗難にあった時に、フタを工具でこじ開けられてキズだらけなんです。
ソウ:見た目は気にしないですよ♪
工場主:それだけでも残念な状態なんですけど、閉まらなくなったフタをご婦人がガムテープ(!)で貼っていたので、エライ状態で……。
ソウ:気にしません♪
工場主:閉まらないフタはこっちで修理しますけど、カギも壊れているからガソリンを盗まれるかもしれません……。そういうのを全部キレイにしたら高い値段で売れるんですけど、急ぎならフタだけ修理して20万円で……。
ソウ:今すぐ欲しいので、今すぐください!
こうして2分で商談を済ませ、人生で初めて自分の車をゲットしました!
ソウマチ号は、シルバーの軽自動車です。ラジオもエアコンも付いてないし、窓は手動! それでも自分で買った車ですから、すごく愛着がありました!
当時はビンボーでしたから、常にガソリンはギリギリでした。ガソリンランプが付いたら、1ℓだけ入れる(!)。セルフならいいのですけれど、店員さんが入れてくれるスタンドで「1ℓ入れてください」とお願いすると「え!? 1ℓ!?」と毎回ビックリされて恥ずかしかったです。でも、お金なかった。ww
そうこうしているうちにヤバイ会社を退職して、二度目の結婚をしました。もうお金の心配は無用です! しばらく遊んでいましたけれど、ご縁があって市役所に嘱託職員として就職した。田舎なので通勤は車です。毎日ソウマチ号で通っていました。
ある日の夜。仕事で遅くなって、私は山間の道をトコトコ運転していました。いつもなら明るいうちに帰れるのに、暗くなってしまった。もうちょっとでアパートという所で、山から大きなイノシシが飛び出してきた! イノシシ! デカイ!! とっさにハンドルを切ってよけることができました!
いつでも安全運転(ノロノロ運転ともいう)なので、対処することができた! アタシ、えらい!
アタシ、すごい! 自画自賛している最中に、2匹目のイノシシが飛び出してきた!
ガシャン!!
さすがの私も、二匹目をよけることはできませんでした。一匹目をパスした時に車が斜めになっていたので、二匹目は車の角に激突した! そして車はイノシシに乗り上げて、でもイノシシは大したものでヨロけながらも山へ逃げていった。動転していたので、このヘンの描写はあいまいです。イノシシに車が乗り上げたけど、イノシシは一目散に逃げていった。これは、間違いない。なぜわかるかと言うと、乗り上げた衝撃で車軸が歪んだから。暗い山道でボーゼンとしていましたけれど、後続車が来ると危ないので急いで車を移動しようとしたら、タイヤがガタガタして走るのが難しい状態になっていた。なんとか車を安全な場所に移動して、私は考えました。これから、どうしたらいいんだ?
事故証明が必要になるかもしれないから、警察に電話をしたほうがいいような気がする……。
警察に電話をして、現場まで来てもらうことになりました。
次は、どうしたらいいんだ? 保険会社か?? お財布に車の保険のカードを入れていたので、探し出します。緊急デスクという番号に電話をする。対応してくれた男性は「それはお気の毒です」と同情してくれて「当社の保険でご提供できるサービスをお調べしますので、少々お時間をください」そう言われました。わかりました。また後で電話します。
しばらくするとミニパトが来てくれました。今まで何度か警察にお世話になった(被害者のほうですよ!)のですけれど、いつも謎に思うのですけれど、おまわりさんって役割分担しています?
一人は親切で優しいおまわりさん、もう一人は意地悪で疑い深いおまわりさん。この時も一人は「なんで事故った?」と私を責めるような口調で詰問して、もう一人のおまわりさんが「まあまあ、そんなこと言わんと」そう取りなしてくれました。まるでマンガみたいな極端すぎるキャラクターなので、あれって演技なのかなぁ?
そうこうしているうちに警察の調べは済んで、おまわりさんたちは帰ってゆきました。私は暗い山道で一人、電話をかけます。保険会社が助けてくれるか、教えてもらわないと。
保険:はい。〇〇保険サービスデスクです。
ソウ:あの、お世話になります。滋賀県甲賀町のソウと申します。
保険:お世話になります。
ソウ:先ほど事故になってしまって、御社のサービスを受けられるかお調べ頂いているのですけれど……。
保険:滋賀県のソウサマさま…………? あっ!!
イノシシの人!! (笑いを嚙みころしている) …………すぐ担当に変わります!
「イノシシの人」って言われた……(涙)。事故だけでもショックなのに、ヘンなあだ名で呼ばれてる……(涙)。
担当:お待たせしております! 申し訳ありません! ちょっとケース(他の事故)が重なっていまして、どのような事故だったか再度ご説明願いますでしょうか!? すみません!!
そうですか。他にも気の毒な方々がいらっしゃるのですか。そして誰が誰だか、わからなくなっているのですね……。私が誰か、あなた様は知りたいのですね……。
ソウ:…………イノシシの人です…………。
担当:………………ブホォッ!! (プロ意識を駆使して声に出さないように努力したが、思わず笑ってしまった声)
ソウ:イノシシにぶつかっちゃったソウです! イノシシなんて初めて見ましたよ! おたく、見たことあります!?
担当:ガハハハハ! すみません! でも、ブフっ!!
ソウ:かまわないです。私だって人の話だったら、笑っちゃいますもの!
担当:ククク、すみません……クク……。
ソウ:何か御社で助けてもらえることって、ありますか? 保険の内容を理解していないので、私にはサッパリなんです。
担当:お調べした結果、自賠責保険のみのご加入ですので、車両の修理はできません。レッカー移動などはできるのですが……。
ソウ:なんとか自走できますし、自宅はすぐ近くなのでレッカーは必要ありません。もし相手が人だったら、損害賠償とかできますよね? これ、イノシシだったらどうなるんですか?
うっかり笑ってしまったとはいえ、担当様はプロです! この質問には、めっちゃ真面目に答えてくださいました!
担当:こういう場合、イノシシの持ち主への損害賠償が可能かもしれません。
ソウ:野生ですよ! 野生動物のイノシシですよ! 勝手に山で生まれて、勝手に走り回ってるイノシシです!
担当:ブハハハハ!! それじゃムリですね~!!
ソウ:やっぱ、ムリですか~!
担当:本当にお気の毒ですけど……。ククク……。
ソウ:イノシシに修理代は払えませんものね~!
担当:ハハハハ! そうですね~!
電話をしたのは緊急の番号ですから、毎日ほとんど深刻な事故ばかりだと思います。そんな中、大笑いしてもらえる案件をご提供できて、嬉しいかぎりですよ…………(ため息)。
保険は使えず、整備工場に修理代の見積もりをお願いした結果「車軸が歪んでいるので最低でも40万円かかる。でも他の箇所も歪んでいると思うので、あちこちに不具合が生じるかも」。そう言われました。20万円で買った車に40万円……。しかも他の修理も出てくるかもしれない……。
私は泣く泣く、愛車を手放しました。
泣いたらいいのか、笑ったらいいのか、愛車との別れとイノシシの間で揺れ動く感情ですけれど、どちらにも共通している言葉があるので、その言葉を本日の締めの言葉とさせていただきます。
ありえへん!!!!!!!!




