渾身のおせち料理!
ありがたいことに、おせち料理を頂きました。彼のお母様の手作りおせちです!
漆塗りの立派なお重に、色とりどりのおせちが美しく詰められています。
私:カブの昆布巻き、美味しいです! ゆずの香りがする!
彼:ゆずはご近所さまから頂きました。ご自宅の庭で採れたそうです。
私:すごい! お庭で採れたゆず! 香りが良いです! ムグムグ……この黒豆も、柔らかくて美味しい! たしかお母様が七輪でコトコト煮てくださるのですよね? お手間が掛かっているだけあって、美味しいです! それにお豆がプックリしていて、おっきい!
彼:その黒豆は、農家の方から頂きました。畑で作った黒豆だそうです。
私:へええ! 当たり前ですけど、豆って畑で採れるんですね! でも栽培するのは難しそう! モニュ、モニュ……このコンニャクの煮つけも美味しいです! 歯触りがプリプリする!
彼:母の知り合いの方の手作りです。
私:コンニャクを手作り!? すごい! コンニャク芋って素手で触るとかぶれるのでしょう!? 危ないしお手間がかかるし、大変だ! でも美味しい~! モニュモニュ!
彼:そのお宅では、コンニャク芋から作るそうです。
…………さすがに噛むのが止まりました。わたし、知ってます。以前にお料理教室でコンニャクを作ったことがあるから。本物のコンニャクって、買うとすごく高価なので自分で作ろうと思ったのです。たまたま市主催の料理教室でコンニャク作りがあったので、軽い気持ちで申し込んだ。
教室の当日、参加者は私を入れて8名でした。私が最年少で、先生もご婦人方も60代の方。
最初は机に座って座学です。先生が実物のコンニャク芋を並べて話してくださる。
先生:コンニャク芋を買うのも良いですが、おうちで栽培する方法もあります。
ふむふむ。栽培か……。ガーデニングですね! 楽しそう! メモっておこう。メモメモっと。
先生:まずは等間隔に苗を植えて、1年待ちます。
1年……メモメモ。
先生:1年たったら、苗を掘り起こして1メートル間隔でまた植え付けます。
1メートル……え? 5本植えたら、5メートルの土地が必要? うちのベランダ、そんなに広くないんですけど?
先生:翌年には倍の距離、2メートル間隔にします。芋が収穫できるまで2~3年かかります。
え? ムリです。10メートルも土地ないです! ってか、たった5本でそれだけの土地が必要!? コンニャクが出来上がるためには、どんだけの土地が必要ですか!? うちはムリです! ねぇ、皆さんもムリですよね!? キョロキョロする私に反して、皆さん熱心にメモをとっていらっしゃる。皆さん、土地をお持ちらしい……。
先生:芋が収穫できたら、風通しの良い涼しい場所で保管します。納屋の天井だとちょうど良い温度と湿度で最適です。
ちょっと待った~! 家さえ持ってナイのに、納屋なんてムリですって! 皆さんだってたとえ家はお持ちでも、納屋はナイでしょう!?
参加者:先生、納屋のどの辺りが良いですか?
参加者2:土蔵でもいいですか?
参加者3:天井裏はないですが、納屋の軒先でも大丈夫ですか?
えええっっっ!? 皆さん納屋持ってるんですか!? 納屋はなくても土蔵はある!? どういうこと!? 全員、お金持ち!?
その後もビックリ続きです。コンニャク芋は危ない成分(シュウ酸カルシウム・劇薬)を含むので、コンニャクを作るお道具は専用の桶やトレイが必要らしい。それがまたデカイんですよ! バケツよりデカイ桶とか、業務用のトレイとか! そんなの保管する場所ないですから! しかし皆さんは売っている場所や値段をガンガン質問している! 買う気だ! 道具を揃えて自宅で作る気だ! わたしは無理です! 不可能です! 土地も納屋も収納スペースもありません!
その後やる気を失った私は黒子に徹し、皆さんのアシスタントになりました。だって作り方を覚えても、二度と作れませんから! 出来上がったコンニャクは、夢のように美味でした。ブリブリしてそのまま食べられる! いつでもコレが食べられたらな~! でも作ることはできないし、買うとものすごく高いし!
…………っていうコンニャクを、今まさにおせち料理で食べているわたし…………。時間もお手間も費用もかかる手作りコンニャク……。何の心の準備もないままに、食べてしまった…………。モニュ……やはり美味しい……モニュ……買ったコンニャクも美味しいけれど、やはりこちらは歯触りが格段に良い……モニュ……これ作るのに、どれだけの費用がかかっているんだろう……モニュ……滋賀でいくら土地代が安いとはいえ、維持費だって固定資産税だって……モニュ……。
このおせちって、そういう食材ばっかりですか? 莫大な手間と時間と費用がかかっていますか? なんか食べるのが怖くなってきたのですけれど……。
よく見ると栗やシイタケも、形が不揃いだったりする……。たぶん自分の山で採れたとか、そういうヤツ……。自分の山……。滋賀の皆さんは奥ゆかしいので言わないのですけれど、そういう方ってけっこう多いんですよね……。しかも高速道路とか新幹線が山に引っかかって、莫大な金額で売れたとかいう噂もチラホラ……。私の知っている範囲でも、死ぬまで働く必要のない方が幾人か……。でもそういう方って、見た目ぜんぜんわからんのですよ。フツーに働いて(子どもに働く姿を見せたいから。お金が必要だからではない)、フツーのお洋服を着て(近所に平和堂しかないから)、フツーに生活している。なんならクソ貧乏の私より質素だったりします。本物のお金持ちは、質素倹約を第一となさっていますから。
……美味しくてありがたいおせちではあるが、おそれ多くて味がしなくなってきた……。ちょっと落ち着きたい。急にカレーが食べたい……。庶民の味が食べたい……。
今日の私の晩御飯は「しゃぶしゃぶ」だそうです。彼いわく「ちょっと良いお肉を手に入れたので」とのこと。彼の言う「ちょっと」が私のレベルと合致するかは、神のみぞ知る……。




