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74話:ネタバレ。祖父が悪の組織のボス

「もしかして、チャンピオンのフユキくんはモトモト団では無いのか?」


 我は思い切って、サトケン少年にそう進言してみた。


 この言葉を口から出すのに、我は少しだけ躊躇した。

 何故ならば『チャンピオンが実は悪の組織のメンバー』という、言うなれば『お約束展開』に水を差してしまうことになるかもしれないからだ。


 元魔王である我はそういう『お約束』に対し、ある種の敬意と尊重の念を持っている。

 何故ならば魔王と云う存在自体が、お約束の塊のようなものであるからだ。

 しかしよく考えたら今は魔王じゃないし、まあいっか。ということで思い切って言ってみた。


 するとサトケン少年は、首を傾げて答えた。


「えー。違うと思うよ。どうしてそう思ったの?」

「どうしてって……語尾がモトだからだ。成人男性の口調としては不自然では無いか?」

「ちょっと何言ってるのか分からないや」


 サトケン少年は先程と逆方向へ首を傾げた。


 我がおかしいのだろうか?

 もしやこの世界では、変な語尾が普通なのだろうか?


 ぬぅ……よく考えると『語尾がモトだからモトモト団員』というのも、我ながら意味不明で軽率な決め付けである気がしてきた。

 偏見だったかもしれない。

 コンプライアンスを重視している非差別主義者の我ともあろう者が、早とちりしてしまったかな。


 そうだ。心配のしすぎだ。

 とにかく今の我は、トモモモンとしてサトケン少年の指示に従うとしよう。




 と。そんな訳で準決勝だ。


「いけモトー! テガオオイ! アシオオイ!」


 チャンピオンのフユキくんは、手が八本あるタコのようなトモモモンと、足が十本あるイカのようなトモモモンを繰り出した。

 何をもって手と足を区別しているのかは分からぬが……しかし、ただのタコイカではなく二体ともかなりの巨体だ。先の試合のデブ犬よりも大きい。

 流石はチャンピオンの使うトモモモンだけあり、中々に強そうである。


 そしてフユキくんは、二体のタコイカを激励する。


「頑張るモトよ~! モトモト団の力を見せてやれモト~!」



 …………言ったな。



 ああ。やっぱりこやつモトモト団だ。

 何故か周りの皆はスルーしているが……



 もう知らぬ。

 ともかく試合だ。

 フユキくんのトモモモンは強そうではあるが、


「メツキワルーイ、応援ビーム! そしてロカピュウ水を吐く攻撃!」

「わかった」

「ロッカッピュッ!」


 といういつものコンビネーションにより、瞬時に勝負が付いた。

 タコとイカはダウンし、元いた世界へ強制帰還する。


「も、モト~! 信じられないモト!」


 一方的な試合運びに、フユキくんはオーバーに大口を開けて驚いた。


「強いモトね~やる~サトケンくん! 僕の完敗モト! さすがは博士の孫だモト! 次の試合も頑張るモトよ!」

「ありがとうチャンピオン。ボク頑張るよ!」


 そして二人は熱い握手を交わした。

 小学五年生に負けたというのに、フユキくんは潔い男である。

 モトモト団ではあるのだろうが、この大会にはあくまでも一選手として出場しているのであろうか。


「そうだモト。決勝戦の前に、サトケンくんにプレゼントがあるモト」

「えっ、チャンピオンからプレゼント!? やったあ、ありがとう!」

「ちょっと今から、この会場の地下にある秘密研究施設……じゃなかった、トモモモン仲良し教室に来て欲しいモト~。ホント、ちょっとで済むから。ちょっとだから。全然怪しないし、痛くもしないから」

「うん。わかった!」



 怪しい。



 怪しすぎるだろう。

 犯罪の臭いがするぞ。それも少年を狙った下衆な類の犯罪。

 モトモト団とはそういう組織だったのか。


 しかし「身内以外の大人について行くのはやめなさい」とサトケン少年に注意する前に、我は強制的に魔界へ戻されてしまった。

 試合が終わり、用が済んだからである。

 この割れセンベイ式の召喚術は、帰還時に召喚獣側の意思が尊重されない。これは明確な欠点だな。



「あー。おかえりなさいメッシュ陛下ー」


 魔界の召喚斡旋所へ帰還すると、ゴシックドレス姿の鑑定係が出迎えた。

 食べかけのじゃがりこを差し出してきたので、我はとりあえず口に入れる。

 鑑定係は満足げに「ふふー」と微笑んだ。


「旨い……が、しかしそれはそれとして、ふむ……」

「何ソワソワしてるんですー?」

「今まさに、少年の身体的外傷及び心的外傷(トラウマ)になり得る事件が起ころうとしているのだ。悪魔の我としては少年の尻や直腸がどうなろうが正直どうでも良いのだが、それにより少年の心が折れてしまい、我の仕事である潜入捜査に支障をきたすのが心配なのである」

「はー。わかんないけど難しいこと考えてるんですねー。もっと気楽に生きましょうよー」

「それもそうだな」


 心配しても仕方が無いか。召喚獣である我は、あくまでも召喚術師が呼び出した時にしか異界へ行けぬのだ。

 サトケン少年も何かあったら尻にダメージを負う前に呼び出すだろう。多分。


 などと考え、じゃがりこをボリボリ食べていたら……はたして、早くもサトケン少年から呼び出された。


「いってらっしゃーい」

「うむ」


 そして我は、再び召喚される。


 召喚先は、まさに『研究所』と言った様相の部屋であった。

 ゴチャゴチャした機械やら、ボコボコと泡を立てている緑色の液体が詰まった巨大カプセルやら、怪しい設備が大量だ。

 研究室内ではフユキくんが「モ~トモトモトモト!」とどこか無理のある笑い声を上げ、それをサトケン少年が睨んでいた。


「ロッカ~ピュッ」


 我と同時にロカの姉御も呼び出されていた。

 我と姉御が揃うと、サトケン少年は難しい顔で状況を説明する。


「大変だよ皆! チャンピオンのフユキさんが……実は、悪の組織モトモト団の幹部だったんだよ!」


 知ってた。

 まあ一応驚いておくか。


「そうだったのか」

「ロッカ~」

「ホント、びっくりだよね!」

「モ~トモトモトモト! 我々モトモト団の目的を知りたいって顔してるモトね? 実は、なんと! 強いトモモモンがバトルした時に発生するエネルギーをこの研究施設で吸収し、兵器に転用してるんだモト~! 全国大会の本当の目的は、兵器エネルギー収集! そのために我々モトモト団が毎年開催しているんだモト! そしてサトケンくんのロカピュウとメツキワルーイが繰り出す、強力なコンビネーション技は……まさに我々が理想とする兵器エネルギーそのもの! さあサトケンくん! もっと僕とトモモモン・バトルして貰うモトよ~!」


 フユキくんが丁寧に説明してくれた。

 それは親切で良いのだが、


「さあいけモト~! テガオオイ、アシオオイ!」


 繰り出すトモモモンは、結局先程のタコとイカである。


「くっ……仕方ない、いくよ! メツキワルーイとロカピュウ、応援ビーム&水を吐く攻撃!」


 サトケン少年はフユキくんの話を理解したのかしなかったのか、いつも通りの指示をした。

 兵器エネルギーに転用されるからもう戦えない……などという悩みは一切無い。まあ子供だからな。


「ロッカッッピュー!」


 そしてロカの姉御の水ゲロ攻撃により、タコイカはあっさり退場。

 当然だ。力の差は歴然だったのだから。


 しかしフユキくんの目的は、我と姉御のコンビネーション攻撃で発生するエネルギー。

 タコイカは犠牲となったが、一応の目的は達成できたのであろうが……


「モト~! 一瞬で負けるから、エネルギー収集する暇が無かったモト~!」


 ダメだったらしい。

 結果論だが、サトケン少年の躊躇無き攻撃は正解であったようだ。


「もう一度……もう一度勝負モト!」


 再度タコイカを召喚しようとするフユキくん。

 というかチャンピオンなのに、タコイカ以外のトモモモンは持っていないのだろうか?


「チャンピオンもうやめようよ。こんな戦い……悲しいよ!(キリッ)」


 サトケン少年が諭すように言った。

 どこかこの優位な状況に浸っているのか、(キリッ!)が少々腹立たしかったが……


 しかし小学五年生に諭される成人男性、という絵面は直視し難いものがある。

 と居たたまれない気持ちになっていると、


「ほっほっほ! 情けないぞフユキくん! どうやらワシの出番のようじゃな」


 悲壮な空気を払拭するように、軽快な笑い声が研究所内に響いた。

 ゴボゴボ泡立っているカプセルの後ろから、老人が現れる。


「しかしさすがはワシの孫じゃのうサトケン。最近トモモモン・バトルを始めたばかりだというのに、まさか二度もフユキくんに勝利するとは」

「お……お爺ちゃん!? どうしてここに……」


 老人はサトケン少年の祖父、トモモモン博士であった。


 ああ、でもだいたい分かるぞ。

 どうせ『祖父かつ博士が悪の組織のリーダーだった』とかいう展開であろう。

 そもそもモトモト団が大会を開催していたというのなら、その大会の運営委員長である博士もモトモト団の関係者に決まっている。


「総帥……! 総帥が直々に戦うんトモか!?」

「総帥!? お爺ちゃんが……? 一体どういうこと!?」


 驚愕するサトケン少年。

 そして博士が言う。


「そうじゃ。今まで黙っていてすまなかったな孫よ。このワシこそが、モトモト団の総帥なのじゃよ!」

「そ、そんなあ!」


 知ってた。


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