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24話:四天王のプロ野球チップス大好き担当

 ピアノ発表会から更に一日後。

 我は従兄弟(いとこ)のサディートと共に、二日ぶりに出勤した。


 いつものように、まずは銀髪ゴシック服の鑑定係の部屋へ行く。

 鑑定係は事前に話を聞いていたのか、我らが到着すると待っていたと言わんばかりに立ち上がり、


「先王陛下とー外務大臣閣下ー。この本に書かれてるのがー、ただいま召喚待機中の魔方陣たちでーす」


 と言って、召喚帳簿を両手で持ち上げた。

 その様子を所長が緊張した面持ちで見ている。「娘がまた王族に失礼なことを言わないだろうか」などと考えているのであろう。


「メッシュ、確認してください」

「わかった。」


 確認、とは召喚魔方陣の中から『神のいる世界』を探すことだ。その世界へ行き、神を殺す。カチコミをかけるというヤツだな。


「どーぞー」


 と言っている鑑定係から帳簿を受け取り、我はページをパラパラめくり……あっさり『神のいる世界』を探し当てた。

 さすが我だな。後で自分へのご褒美としてマシュマロでも食べよう。


「これだ。神の実力までは分からぬが……とりあえずいる(・・)

「そうですか、では早速行きなさい。早くしないと魔方陣が消えてしまいますからね」

「うむ」


 我は該当ページを開いたまま、帳簿を鑑定係へ返した。

 鑑定係の手で、魔方陣を帳簿から床へ『展開』して貰おう。

 展開作業は我でも出来るのだが、原則として斡旋所職員しかやってはならぬというルールがある。

 マートは展開していたが魔王だからセーフ。


 しかし鑑定係は帳簿を受け取った後、中々展開作業を開始しなかった。


「……どうした?」

「べつにー」


 鑑定係は、何故かふくれっ面で我を睨んでいる。


「召喚術師の実力を鑑定するのが私の仕事なのにー、メッシュ陛下は『召喚先にいる神』の鑑定までしちゃっててー、私の立場がないなー……なんて、思ってませーん。どうもしてませーん」

「そうか。どうもしていないならば早く展開してくれ」

「むー……はーい」


 どさくさ紛れに、鑑定係から初めてメッシュと愛称で呼ばれた。

 我も職場に馴染んできたという証拠であろう。

 所長は「ああああ娘が失礼をいたしましたああああ」とペコペコお辞儀し、毛髪と胃にダメージを蓄積しているようだが。


「あー、言い忘れてましたけどー。この魔方陣、久しぶりの超絶特(SSS)級案件ですからー。気を付けてくださいねー。ふふふー」




 ◇




 そして、我は無事に召喚された。



 薄暗い場所だ。

 明かりはロウソクのみで、窓もない。


 壁も床も木造だ。

 室内……何かの研究室にも見える。

 部屋の隅には、本や木箱が無造作に散乱している。おそらくは召喚魔方陣を描くため、部屋の真ん中に散らかっていた荷物を無理矢理隅へ片付けたのであろう。

 普段の整理整頓がなっていないな。


 魔方陣の近くには一人の男が立っている。こやつが今回我を呼んだ召喚術師であろう。

 黒いピッチリ全身タイツの上へ、胸と肘と膝と股間に銀色のプロテクターをつけている。更にその上から黒いマントを羽織り、マントの両肩部分には謎の赤い半球。頭には二本ツノ付きの兜をかぶり、兜正面にも謎の赤い半球。

 股間が銀色なのはともかく、少々古めの魔王スタイルに見えるが……


「せ、成功した……ようっスね……! はは、ははははは! 異界の邪神よ! 僕……この魔王ヨッピーの下僕となって、僕に一生仕えろ! まずは勇者を殺すのだ! ははははは!」


 案の定、魔王だった。


 今回の召喚術師、魔王ヨッピー。

 あまり強そうでは無い名前だが、一応は超絶特(SSS)級の術師であるため一級品の魔王であることは間違いない。我やマートは超一級であるがな。


 我はとりあえず、


「一生の下僕にはならん。我は期間契約のレンタル召喚獣である」


 と、相手が勘違いしていそうな点を正した。

 ヨッピーは「えっ。そうなのか……いや、そうなんスか!?」と驚く。

 どうやらこれが初召喚であり、システムをよく理解していないようだ。

 そしてすぐに敬語へ切り替えるあたり、少々気が弱いらしい。


『メッシュ。聞こえていますか』


 突如、頭の中に声が響いた。サディートの声だ。

 サディートは魔界の召喚斡旋所にて、鑑定係の感知能力を通し、我の様子を伺っているのだ。


『今回の目的は神殺し……ですが、レンタル召喚獣の本分も忘れてはいけません。まずはそのヨッピーなる異界の魔王の依頼内容を聞き、サクッと叶えて差し上げなさい。その途中で神の気配を探り、居場所を探知しサクッと殺すのです』

『なるほど。ではサクッと終わらせよう』


 という訳で、ヨッピーへ今回の召喚理由を聞いてみた。


「えっとっスね。僕はこの世界で魔王をやってて、世界征服的なアレしようと……でも神がなんか邪魔とかしてきて。で、神の使い……だと思うんスけど、最近現れた勇者が超強くて。魔王四天王も半分死んじゃって。それで新しい四天王になって欲しいなーと思って、邪神さんを呼び出したんスよ」

「なるほどサクッと分かった。要は、我に四天王の一員となり、勇者や神を殺せと言いたいのだな?」

「はい。オナシャッス。期間限定の四天王でも大丈夫なんで」


 ヨッピーはぺこぺこと頭を下げた。

 魔王にしては腰が低いな。


『まさか依頼内容も神殺しとは、一石二鳥で丁度良いではないですか』


 サディートもこう言っていることだし、我としても願いを断るつもりは無い。


「承知した」

「マジですか、あざス! じゃあまずは、生き残ってる四天王たちに紹介したいんスけど」




 ◇




 そして、ヨッピー魔王城の四天王ミーティングルームへ案内された。

 先ほどの研究室っぽい部屋とは違い、ここは明るい。

 部屋の奥には豪華な椅子があり、その手前に大きなテーブル。それを囲う四つの小さな石椅子。

 石椅子の二つに、生き残りの四天王らしき二人が座っていた。


 我は空いている石椅子へ座り、ヨッピーは一番奥の豪華な椅子へ腰かける。


「はい皆さん注目っス。こちら新しい四天王のメッシュさん。異界の邪神でっス」


 さっそくヨッピーから紹介された。

 すると、


「貴様が新しい四天王か……私は四天王の知力担当。脳みそ将軍だ」

「ガハハ。俺様は四天王のパワー担当。筋肉大臣だ!」 


 ガリガリの人とムキムキの人が自己紹介をした。


『なんだか凄い名前ですが……おそらく本名では無く、四天王としての芸名のようなものでしょうね』


 とサディートが分析している。

 それでは我も自己紹介を返すとしよう。


「よろしく。我はメッシュ……ええと……」


 知力担当とか、パワー担当とか、そういうキャッチコピーも言わないといけないのだろうか?

 我の異名と言えば『宇宙最強の魔王』……だが、この称号はもうマートのものだ。

 ええ……と……


「四天王の、プロ野球チップス大好き担当だ。好きな選手はソフトバンクの千賀だ(野球は実際に見たこと無いけど)」

「センガ? 誰?」

「我も知らぬが、プロ野球チップスのカードに描かれている人物だ。とにかく凄い戦士らしい」

「そうか……」

「ガハハ。よろしくな」


 一部謎を残してしまったが、仲良くなれたようだな。


「さて皆さんまたまた注目ッス!」


 ヨッピーが立ち上がり、手をパンパンと叩いた。


「メッシュさんが来てくれたおかげで、四天王が抜けた穴はあと一枠。とりあえず僕が魔王と四天王を兼任するので、抜けた穴は全部塞がりました! これで一気に戦力が立ち直ったっス!」


 それは、穴が塞がったと言って良いのか?


「僕が四天王の魔王兼任担当。ヨッピーでっス! さあメッシュさん、悪は急げ。さっそく勇者を殺しに行くッスよ!」

「そうだな。我も早い方が良い」


 ヨッピーの口ぶりでは、勇者の居所も分かっているようだ。

 これは本当にサクッと終われそうだな。


「脳みそ将軍と筋肉大臣はお城の留守番頼むっス」

「ふっ、分かった。任せろ魔王様」

「ガハハ。安心して行ってきな大将!」


 これは我の根拠なき予想だが……脳みそ将軍と筋肉大臣は、多分これで出番終了だ。


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