後日談
本日三話目です
次はちょっとあけるかもしれませんが、やっと話が進みます
後日談、というかおまけ。
俺とアイリアは男女隔てなく褒められた。
……何でも、あの雑魚王子は高位の貴族の女子なら誰でも口説き、下位の男子は鼻であしらうというのが普通だったらしい。
そんなんだから、かなり嫌われていたとか。……そりゃそうか。
で、アリエス教師の支持率がぐーんと上がったのは、国王から直々に使いが来てご迷惑をおかけしましたと一言侘びを入れ、今度王子直々に謝らせに来るということだった。
使いの人によると、国王は大激怒し、王子がショックで寝込む程だったとか。立ち直り真の王子として教育し直してから謝らせるということらしい。
……さすがに国王もアリエス教師含む英雄達を敵に回したくはないらしかった。
王子との決闘とアイリアとの恋人騒動は瞬く間に学校中に広がり、俺は再び白い目で見られる結果となったが、最近やっと真実が語られアイリアの彼氏役は演じていただけと誤解が解け始めていた。
アイリアの一件以来ムスッと拗ねていたフィナの機嫌も直り、一件落着、もうこれで婚約者騒動に巻き込まれることはないかと思っていたら、下位貴族の女子から高位貴族との婚約を彼氏役として破綻させて欲しいと言われたのが三回くらいあってちょっと面倒だった。
自分より上の婚約者ではなかなか断るのが難しいそうだ。
彼氏がいない人に関しては喧嘩売ったりして破綻させ、彼氏がいた人は彼氏に破綻させてもらえと説教してやった。
……何故か俺の立ち位置が妙なことになりつつある。
そんなこんなで一日を送りつつも今日も終わり、フィナが俺のベッドでゴロゴロしている間、俺はベッドに腰掛けてアイリアと話していた。
「……そういやお前、婚約者はいないって言わなかったか?」
俺は少し気になって聞いてみる。最初に会った時だったか。アイリアがそう言ったのを思い出したのだ。
「……ええ。元々設定された婚約者は断ったのよ。それで婚約者のいなくなった私に、王子が目をつけたの。お父様に掛け合って私との婚約について言い、本人の許可がないと、と言ったお父様に対して、では二人は認めるんだな? と言って私の下に来たのよ。それをお父様がいち早く文で伝えてくれたから、彼氏役を頼んだって訳」
アイリアはうんざりしたような顔で言った。
「……何で俺にしたんだよ。最終的にアイリアが自分で断っただろ」
最初から自分でやればいい。
「……それはその……。彼氏がいれば諦めてくれるかと思ったのよ」
「だから何で俺」
「……それは……。ルクスなら身分関係なくやれると思ったからよ」
……何だそりゃ。
「……じゃあお前は、俺と違って身分気にするってのか? 俺が成り上がり貴族だからって差別すんのか?」
「しないわよ」
「じゃあ何で、下は気にしないで上は気にするんだよ」
「……それはその、王族だし」
「じゃあアリエス教師はお前よりも高位の貴族になる訳だが、お前がアリエス教師に敬語使ってんのは自分より上の貴族だからか?」
「……違う、わね。教師だし、年上だし、英雄だし」
「じゃあ俺の親父はどうだ?」
「敬語を使うわよ。年上だし、英雄だし」
「下の貴族だぞ?」
「それでもよ」
……何だよ、ったく。
「……じゃあやっぱり身分気にしてねえんじゃん」
「……」
「お前、身分じゃなくてその人自身を見てるんだろ? その人に敬意を払うべきかは、身分で決めるんじゃないって自分で言ってんじゃん」
「……」
アイリアがハッとしたような顔で黙る。
「……確かに、言われてみればそうね」
「だろ? じゃあ何であいつに敬意を払う必要があったんだ?」
「……何でだろう」
アイリアは首を傾げてしまった。……王子だから、とかあいつと同じこと言うんじゃないだろうな。
「……やっぱり、親の顔を立てるとかがあったんじゃない?」
「……」
自分のことなのに何故疑問形?
「……ルクス」
俺がアイリアと話していると、フィナが服の裾を引っ張ってきた。唇の尖らせて不満そうな顔をしている。
「……しょうがないな。ほら、よしよし」
俺は構って欲しいのかと思い、フィナの頭を撫でてやる。
「……ん」
フィナは気持ち良さそうに目を細め、抱っこしてくれと両腕を広げてアピールしてくる。……仕方ないか。
「……よっと」
俺はフィナを抱えてやる。
フィナが俺の胸元に顔を埋めて眠そうに欠伸をしたのを見て、よしよしと頭を撫でてやる。
「……ルクス」
「ん?」
不意にアイリアが俺を呼んだ。俺は何かと思ってアイリアを見る。
「……ありがと。その、嬉しかった」
アイリアはそう言って顔を真っ赤にする。……おぉ。
「……じゃあ私は先に風呂入るから」
「……お、おう」
恥ずかしいのか、アイリアは早足で風呂場へと向かい、フィナが一緒に入ろうと俺から離れていく。
……人って、変わるもんなんだなぁ。
俺はしみじみとそう思った。




