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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第7章 先輩と後輩
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第76話 海で

 場所は前回と同じ天美家の別荘で、日程も前回と同じ二泊三日。

 到着してから荷物を降ろし、それぞれの部屋の中へと荷物を運ぶ。

 車から出てきた文研部女子たちの表情がいつもとは少し様子が違うような気がしたけど、そのことについて尋ねてみても何でもないと言われた。


 今回は人数が増えたので、女子は部屋を分割して使う。


「ここが天美先輩の家の別荘……綺麗なところですね」と、南央。


「私もロケで別荘地とかに行った事があるんですけど、こんなにも立派なところは初めてです」と、小春。


 見学も程ほどに、まずは荷物を運びこむ。

 とりあえず荷物を部屋の中に運びこんだ後、一階に集まってこれからのみんなの予定を確認する。

 この後は海に行くことになっており、その準備を行う。


 こういうのはだいたい、女の方が準備が遅いと相場が決まっていて、待つのはいつも男なのである。

 俺たち男子陣は既に準備を終えて、荷物も確認して一階に下りて女子たちの準備が終わるのを待っていた。

 去年の初日は海で遊べなかったけど、今回は時間に余裕を持って来たので初日から海で遊ぶという予定になっている。


「そういえば、新生生徒会はどうなんだよ」


「ん。まーまーだな」


「新しく入ってくれた一年生も頑張ってくれてるしね」


 正人と国沼の反応を見る限りは生徒会の方もなんだかんだで充実しているようだ。

 よかったよかった。


「葉山の方はどうなんだよ? 文化祭実行委員」


「ん。僕の方も充実してるって感じかな。かわいい新入部員も増えたしね」


「へぇ。かわいい新入部員か。お前がかわいいっていうぐらいなんだから、かなりかわいい女子なんだろうな」


 興味ないけど。


「え? 違うよ、男子だよ?」


 キョトンとした顔で言われた。

 かわいい……男子?

 ふむふむなるほど。葉山からしたら元気のある『かわいい後輩』ってことなんだろうか。


「おっまたせ~!」


 しばらくしてから、女子たちが二階から降りてきた。

 準備も完了し、人数も揃ったということでさっそく海まで歩いていく。

 海までは歩いていけるぐらいの距離なので、割とすぐだった。


 休憩場所を確保しておき、その場所にパラソルを立てる。

 そこでようやく一息ついて、休憩場所のレジャーシートの上に座り込んだ。


「ほらほら、かいくんもあそぼーよっ!」


「そうですよ。せっかく海に来たのにもったいないです」


「……同意」


 三人がぐいぐいと引っ張ってくる。

 そんなわけで、俺は加奈、南帆、恵の三人に引っ張られつつ、海に向かった。その後に美羽、美紗、南央、小春も続いてくる。

 ていうかこうして見ていると、加奈たちが俺のコミュ障を頑張って更正させようとしているようにしか見えないな。


 何一つ間違っていないのが悲しい。

 恋歌先輩は姉ちゃんや徹さんと一緒に荷物番、葉山と国沼はさっそく二十代のBBAたちに囲まれている。大変だなぁ。

 正人は……なんかナンパしていたけど失敗しまくっているようだ。


 おかしいな。あいつはコミュ力高かったはずなんだけどな。

 他の人たちの様子を見ながら海に入る。

 やはりこの季節の海は冷たくて気持ちが良い。


 正直、プカプカ気楽にのんびりと浮いているだけでも十分なような気もするが……うん。せっかく友達と海に来たんだし、今回は遊ぼうかな。

 勿論、かわいい水着姿の幼女を探すのも忘れない。


 常に脳内録画状態を続けている。

 やれやれ、夏の海って本当に最高だな。

 愛用のカメラを濡らしたくはないから鞄の中に置いてきたが、後で景色をとるとみせかけて撮影しておこう。家に帰ったらラミネート加工してアルバムに挟むんだ。ロリコン紳士としては当然の嗜みである。


「うーん、やはり通報しましょう」


「変態だからね、仕方がないね」


「……市民としての当然の義務」


「はぁ。これも仕方がないですね。私たちは平和を愛する市民の一人としての義務を果たしましょう」


「え、えーっと……うん……仕方がない」


「先輩、スマホとってきます」


「あ、まって小春ちゃん。私もいく」


「おいコラ待てやお前ら」


 おかしい。どうして俺は自分の好きな物を見ているだけなのに通報されなきゃいけないんだ。

 第一、かわいいものをかわいいと思うだけで通報されるなんて世の中ぜったいにおかしいよ。

 俺はただ、ラブリーマイエンジェルたちを見ていたいだけなのに!


 とりあえず通報を阻止したのちに、改めて海に入る。

 が……ここからどうすればいいのだろう。


「で、何するんだよ」


 俺は今まで友達と一緒に海に行った事なんて一度もなかった。

 よって、海に入って友達と一緒に遊ぶにしても何をして遊べばいいのかがさっぱり分からない。


「ふっ。そんなの決まってるじゃないですか海斗くん。シーバ〇チャーに依頼して海底のビットモ〇ルスーツを回収するんですよ」


「お前はどこの戦後世界に生きてるんだよ」


「じゃあ、ハードス〇ラッシャーに乗って敵を追いかけまわす遊びは?」


「ねーよ。つーか誰だよ敵って」


「かいくん」


「ですよねぇ!」


 俺はコネクタにメモリを差し込んでドーピングした覚えはないのだけれど。


「……じゃあ、イ〇ルギで」


「俺は時の列車とかもってねーから!」


「……私に釣られてみる?」


「釣られねーよ!?」


 ちょこん、とかわいらしく首を傾げる南帆。

 ……正直な話、ちょっとドキッとしたけど所詮はBBAだと自分に言い聞かせる。

 そもそも、海にまで来てなんでわざわざ円盤に乗って飛ばなきゃならんのだ。


「文句が多いですね、アクアミラ〇ダーならいいんですか」


「マシンの問題じゃねーよ!」


 美羽は簡単に言うが、そもそもあれって四十年後の未来技術で作られてるだろうが。

 どうやって入手しろっていうんだよ。


「じゃあ、正人くんを呼んでお肌の触れ合いを……」


「それだけはマジで勘弁してください!」


 ぽっ、と頬を赤く染める美紗。

 ある意味、海という場所は男にとっても危険な場所だということか。

 肌の露出高いし(男的な意味で)。


「先輩も苦労しているんですね」


 と、俺の苦労のわかってくれる後輩である小春が言ってくれる。


「ああ、そうなんだよ……俺も苦労しているんだよ……もう疲れたよ」


「そうですか。さ、オリョクルに行きましょうか」


「この鬼畜提督!」


 どうりで疲労が溜まるわけだよ。


「え、先輩スク水着るんですか?」


「着ねーよ!」


「でちでちうるさいですよ変態先輩」


 南央からも誤解を受ける始末。

 別に俺は機能美にあふれている提督指定の水着を着るつもりはこれっぽっちもないのだが。


 結局、ここは無難にみんなでテキトーに泳いだり、ぷかぷかと浮いてみたり、ボールを使ってバレーをしたりして過ごした。

 夕食の用意もあるので少しはやめに海から上がると、今度は買い出しに出かける。

 買い出しから帰ってくると夕食の準備だ。


 今日の夕食はバーベキューにした。

 明日はカレーらしい。

 夕食が終わると、今度は女子と男子で別々の部屋に分かれて、休憩しつつ入浴の時間となる。


 人数が多いために俺たち男子勢が入浴するまでかなりの時間を要したが……まあこれも仕方がないだろう。

 全員が風呂から上がると、一階でみんなで何かゲームをしようということになっている。

 時間が指定されていたので、そのゲームが始まる時間まで部屋でくつろぐことにした。


 が、何か飲み物がのみたくなった俺は一階にある冷蔵庫にジュースを取りに行った。

 その時、一階に誰か人の気配を感じた。

 こっそりのぞいてみると、そこにいたのは葉山と美紗である。


 何やら真剣な顔をして二人して悩んでいる。邪魔したら悪いし、ジュースは二人の邪魔をしてまで飲みたかったものじゃない。

 ここは静かに二階に戻ろ……


「やっぱり、ここは根本的に見直すのが必要かもしれないね」


「うん……正人くんが攻めで海斗くんが受け。でもこの頃、逆もアリなんじゃないかなって思えてきて……」


「あるあるだね」


 そうそう、あるある……じゃねぇええええええええええええええええええええええ!

 ねーよ! ぜんぜんねーよ!

 ていうか、二人していったい何の相談してるの!?


 もしかしてBではじまってLで終わるアレ!?

 いやいや、葉山がなんでそれについて美紗と悩んでるの!?

 しかも俺と正人がモデルかよ!


 ……いやまて、あの葉山と美紗が参加しているんだ。あの二人が参加しているのだからそんな変なことじゃないはずだ。

 想像してみろ。

 俺と正人がお肌の触れ合いをしているところを…………………………うん、やっぱダメだわこれ。

 

 こんな想像をした俺がバカだった。

 ここは、あの二人に気づかれるまえに二階に退避しよう。

 幸いにも、二人は話に夢中でこっちに気づくような感じは微塵も見せていないし、こっちは気配を完全に消している。気づかれるようなことはないはずだ。


『はっ、いまホモホモしい気配が』


 なんでだぁああああああああああああああああああああああああああ!


 おかしいだろお前らの気配察知の基準が!

 俺は急いで足音を殺して二階に退散しようとした。

 が、思わぬ人物と鉢合わせる。


 いつの間にか、俺の背後には国沼がいた。

 ぼーっとしながら、俺……ではなく、何故か美紗と葉山の二人を見ている。


「? どうしたんだ」


 小声で国沼に話しかけると、国沼はしばらくぼーっとしたのちにすぐにハッとして、気を取り戻した。


「え、あ、いや……なんでもない。ちょっと飲み物を取りに行こうとしてたんだけどな」


「ああー……じ、邪魔になると悪いからとりあえず戻ろうぜ」


「ん。そうだな」


 とりあえずここにいることはない。

 あんなにも真剣な顔をして話し込んでいる二人を邪魔しちゃ悪いと思っているのは確かだし。


『はっ、いまホモホモしい気配が』


 だからなんでだぁあああああああああああああああああああああああ!

 こいつらの基準が色々と分からんわ!


 その後、時間になったので一階に集まってみんなでトランプしたり人生ゲームしたりした。

 南帆が家から据え置きのゲーム機を持ってきていたので、パーティ系のゲームをしたりして楠木姉妹が猛威を振るっていた。


 明日もあるし、そこそこの時間になったので就寝時間になったので、その日はみんな眠りについた。

 だけど俺はどうにも寝付けなかった。

 さっきの国沼の顔がどこか印象的だったからだ。


 何か、手の届かないものを見ているような気がして。

 明日もあるので早々に寝ようとしたが眠れない。

 だから俺は気分転換も兼ねて外に散歩に出てみることにした。


 一人で夜道を歩く。

 夜空を見上げてみれば綺麗な星々が煌めいていて、いつもとは違う空の光景に心が落ち着いていく……ような気がする。

 なんとなく黙々と歩き続けていると、気が付けば海にまで出てきてしまっていた。


 潮の香りを肺に取り込み、深呼吸。

 波の音をきいて浜辺を歩いていると、見知った人影を見つけた。


 恵だ。


 一人で突っ立って、海を眺めている。

 いつもは元気いっぱいの恵が、今はどこか儚げな、遠くを見るような表情を浮かべているのを見て、俺は思わず立ち尽くす。

 なんだか恵が、俺の知らない女の子のように感じてしまう。


 俺の知らない、恵の別の魅力の一面を垣間見た気がした。

 しばらく恵を眺めていると、恵は俺に気づいた。

 ずっとそこに突っ立っていたことを思い出した俺は、恵に歩きながら近づく。対する恵は、すぐにいつもの元気いっぱいの笑みを浮かべてきた。


「あ、かいくん。どしたのこんなところに」


「……そりゃこっちのセリフだよ。こんな時間にこんなところで、一人でほっつき歩くなよ」


「心配してくれるんだ」


「当然だろ。お前は女の子なんだぞ。そういうところはもう少し自覚しろって言ってるだろ……それに、ほら、お前らってけっこうかわいいし」


「ふぇっ……かわっ……あ、ありがと」


 さっきまでニコニコしていたのに、唐突にもじもじとして指をいじったりする恵の顔は、見間違いでなければちょっと赤い。

 暗いから自信ないけど。


「かわいいって言われることぐらい慣れてるだろ」


「む……そ、そうかもしれないけど。でも、かいくんからかわいいって言われるのは違うよ」


「何が違うんだか……ていうか、そろそろ帰るぞ。あんまり夜更かししても明日に響くし」


 そういって、俺は恵を連れて帰ろうとした。

 だが、恵はそんな俺の手を掴んで、ちょっと震えたような声で、


「ねえ、かいくん。ちょっと……お話、しよ?」







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