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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第7章 先輩と後輩
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第69話 ヒロインたちの作戦会議

「作戦会議だよっ!」


 私、楠木南央は恵先輩の突然の言葉に驚いた。思わず手に持っている、小春ちゃんから借りた某アナザー機動戦士種運命の外伝漫画を落としかける。

 読んでた途中で「あれ? これストフリよりテ○タメントの方が強いんじゃないのかな?」とぼんやりと考えていた時に恵先輩のこれだ。

 冷房の効いているこの気持ちいい天国のような空間であやうく寝落ちしかける私を引き戻してくれたことには心の中で感謝しておこう。


「恵先輩、作戦会議って?」

「そりゃあもちろん、かいくんについての!」


 かいくん……つまり海斗先輩のことなんだけど、その作戦会議となればやっぱあれだろうか。

 その、れんあい、みたいな……。

 ううっ。心の中とはいっても恥ずかしい。


「どうやったらあのかいくんを幼女から引き離せるのかな?」

「うーん。でもそれは無理なのではないでしょうか?」


 ややあきらめ気味につぶやいた私の言葉に、この場にいる全員がうんうんと頷いた。

 なぜか恵先輩まで。気持ちはわからないでもないですけど。

 ちなみに今日、件の海斗先輩は部室ここにはいない。

 海斗先輩いわく、「今日は同志たちと、幼女先輩を押しのけて台を占領するア○カツおじさんの除去に忙しいんだ」という理由で部室にはこないらしい。

 彼の行動原理はなにからなにまで『幼女』であり、そのためにどんな無理無茶無謀もやってのけるのは凄い。まあ、その『同志たち』と一緒にいつかまとめておまわりさんのお世話にならないか心配ではあるのだけれど。


「でもでも、このままロリコンさんのままだとかいくんの攻略なんて一生かかっても無理だよ?」

「そりゃそうですけど……でもそれと同じぐらいに海斗先輩をロリコンから脱却させるのは無理ゲーだと思うんですけど」


 ロリコンじゃない海斗先輩……だめだ想像できない。


「うーん。でも、私はもうロリコンでもいいかなって思うんですけどね」


 ああ、小春ちゃんが諦めの境地に達している。

 実を言えば私も同意見である。


「うんうん。ついにこはるんもその境地に達したんだね……私は先輩としてうれしいよ!」

「もう海斗くんがロリコンの変態さんであることは許容しています。ですけど、今のまま『幼女=お姉さん>>>(越えられないロリの壁)>>>その他』の価値観だと、いろいろと、えっと、伝わらないじゃないですか」


 加奈先輩がちょっと恥ずかしそうに頬を桜色に染めながら言う。

 なにこのかわいい生き物。

 こんな人のハートをキャッチしておいて、海斗先輩はなぜ何も気づかない。


 やはり『幼女=お姉さん>>>(越えられないロリの壁)>>>その他』の価値観だからフィルターか何かでもかかっているのだろうか。


「えっと、ほ、ほら、趣味は人それぞれだし……」


 渚美紗先輩のいうことも一理ある。

 確かに趣味は人それぞれ。

 ただ、


「……ただ、おまわりさんのお世話になるような趣味だと……」


 お姉ちゃんの一言。

 うん。確かに趣味は人それぞれだけど犯罪はだめだよね。

 好きな人がおまわりさんのお世話になっちゃいましたじゃあまりにもバットエンド過ぎるよね。

 バットエ○ド王国もびっくりの自滅エンドだよ。


「でもさでもさ、悠長にしているとまーた倍率が上がっちゃうかもしれないんだよねぇ」

「どういう意味ですか?」


 美羽先輩が首をひねる。

 私も恵先輩の言っていることがよくわからない。

 倍率が上がる? 今でさえ高すぎるぐらいなのに?


「私、この前見ちゃったんだよねー。ママから買い物頼まれて歩いてたら、かいくんがいたの」

『ふむふむ』

「そんで、『あ、かいくんだー』と思って声をかけようとしたらかいくん、知らない女の子と一緒にいたの」

『!?(ガタッ)』

「その女の子ってここの近くにあるお嬢様学校の制服着てたんだけどね、どうやらその子、DQNに絡まれて逃げたところを転んで足をひねっちゃったみたいでさ。それを見たかいくんがDQNを撃退してその子に駆け寄ったってところだったらしいの」

『…………(ドキドキドキ)』

「そのあとかいくんがその子をお姫様抱っこして、その学校まで送り届けてた」

『!?!?!?!??(ガタガタガタッ!)』

「で、こっそり私も後をつけてみたんだけど」

『……………………(ドキドキドキ)』

「そのまま保健室までお姫様抱っこで送って、その子を保健室の先生に預けた時に私見ちゃったんだけど……」

『続きをはやく!』

「なんかね、その子の表情がね……こう、一言でいうならば『恋する乙女』といいますか」

『また(ですか)!?』


 な、なんてことだろう……。まさか他校の生徒にまで手を出していたなんて。

 あのお嬢様学校……ていうか女子校の生徒に。

 お嬢様キャラなら加奈先輩でじゅうぶんじゃないですか!


「本当に、どうして先輩の道行く先には美少女がごろごろ転がっているんですかね……」


 小春ちゃんがアイドルらしからぬ表情で遠い目をしながら呟いている。

 しかも道行く先にいる美少女が片っ端から海斗先輩に惚れているようにしか見えない。

 なにこれコ○ンくん? いや、あっちは半ば死神みたいなもんだからちょっと違うけど。

 明らかにあの人はラブコメの神様に愛されているとしか言いようがない。


「うーん。やっぱりもうハーレムエンドしか……」


 恵先輩がブツブツと何かを呟いている。

 ハーレムエンドか。もうそれでいいや。

 これもう明らかに収集つかないよね。

 お姉ちゃんは「……やっぱりあのおみくじ……」だのなんだのわけのわからないことを言ってるし、これはもう私たちの精神衛生上、ハーレムエンド安定の気がしてきた。


「これは確かに早急に手を打つ必要がありそうですね」

「でもどうやって? あの変態ロリコン犯罪者をどうやって幼女から離れさせれば?」


 美羽先輩の疑問はもっともだ。

 そんなこと出来るのだろうか?

 状況的にはもはや手詰まりだ。

 例えるなら、卍解を使わないと勝てないような強敵に上司が卍解を奪われて打つ手のない状況になって卍解を使おうとしたら上司に「卍解を使うな」と止められて「どうやって戦えばいいんだ!」と叫ぶような、そんな状況だ。


「はっ、そ、そうだみなさん。私に考えがあります!」


 と、ここで小春ちゃんが何かを閃いたようだ。

 何か策があるのだろうか。


「もういっそのこと、一度幼女と触れ合いをさせて心行くまで幼女との時間を堪能させてあげれば、一周まわってロリコンじゃなくなるのかも!」

『それだ!』


 ――――あとになって思ったが、この時の私たちはあまりにもあのロリコン先輩の攻略が無理ゲー過ぎて、いろいろと頭とか思考回路とか、そういうのが麻痺していたのかもしれない。

 錯乱状態ともいうのだろうか。

 小春ちゃんの発言を文字に起こすとしたら、『もういっそのこと、一度幼女と触れ合いをさせて心行くまで幼女との時間を堪能させてあげれば、一周まわってロリコンじゃなくなるのかも!(錯乱)』とするべきだろう。

 だがこの時の私たちは錯乱状態。

 攻略対象が難易度ぶっちぎり状態の化け物相手についに狂ってしまった私たちは……小春ちゃんのお姉さんという、あろうことかあのロリコン先輩の大好きな合法ロリとの出会いの場をセッティングしてしまったのだった。



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