表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第7章 先輩と後輩
91/165

番外編 一月一日

あけましておめでとうございます!


新年初投稿となります。


新年、ということで今回は番外編。

時系列は文化祭と体育祭が終わって、その後。第二部までの空白期間にあたる冬休みの一月一日になります。

今回の番外編では海斗たちはまだ一年生なので後輩組は出てきません。


「新年、あけましておめでとうございます。海斗くん」


 朝起きて、姉ちゃんがいつの間にか作ってくれていた世界一美味しい絶品おせちを食べていると、不意にドアのインターホンがなったので出てみると、そこには私服姿のBBAこと、天美加奈がいた。

 ニコニコと、とびきりの笑顔を見せている。

 既に学校は冬休みに入り、俺は順風満帆な幼女ライフを過ごしていた。昼は部室で幼女(二次元)と戯れ、夜は自室で幼女(二次元)と戯れる。

 なのに新年早々、幼女でもないBBAが家にやってきた。今年こそは幼女を最初に家にお招きしたかったのにこいつのせいでその願いも無残に打ち砕かれた。


「あけおめことよろ」

「随分と簡略化しましたね」

「BBAに対してはこれで充分だろ」

「まったく。相変わらず海斗くんは新年早々……。では、幼女が訪ねてきたらどう挨拶するつもりだったんですか?」

「新年、あけましておめでとうございます。旧年中は私の人生の指標として何かとお世話になり、ありがとうございました。お陰さまで私は無事に新年を迎える事ができました。これも幼女先輩のみなさまのおかげです。本年もみなさまの影から一歩一歩を大切に、たとえおまわりさんのお世話になろうとも悔いのない生き方をしたいと思います。本年も親しいおつき合いのほど、よろしくお願いいたします」

「長っ! ていうかおまわりさんのお世話になっちゃダメでしょう!? そこはちゃんと悔い改めてくださいよ! あと、『親しいおつき合い』って海斗くんが言うと怪しい意味にしかきこえないんですよ! ああもう、頭では追えても、ツッコミの反射が追いつかないですっ!」

「で、何の用だ新年早々。俺は去年撮りためた幼女フォルダの整理で忙しいのだが?」

「そのフォルダについては後でゆっくりとお話しするとして、新年のご挨拶ですよ。だって私たち、お隣さんじゃないですか」


 そういえばそうだった。なかなか活用されない設定だから忘れがちだが、俺とこのBBAはお隣さんだった。


「よし、それじゃあ挨拶は終わったな。俺は今から幼女フォルダの整理に戻る」

「待ちなさい(ガシッ)」


 ドアを閉めたら足をはさんで止められた。

 こ、こいつぅ!


「そのおせちはあとでみんなで食べましょう。これから外に出ますよ?」

「は? 嫌だよそんなの。ていうかどこに行くんだよ」

「初詣です。近くの神社に、文研部のみんなで行こうと思いまして」

「なんで新年早々BBAに囲まれなきゃならん。俺はこれから幼女フォルダで癒しの時間を……」

「私たちと一緒に初詣に来れば振袖姿の幼女を拝めるかもしれませんよ?」

「お前マジで天才だな! ちょっと待ってろ。四十秒で支度する」


 なんだよそれを早く言えよ!

 本気出して準備するか。カメラも用意しないと。


 ☆


「まさか四十秒どころか三十秒足らずで支度するなんて……」

「は? 幼女への愛で時間をちょっといじれば余裕だろ?」

「もう海斗くんが私の手の届かないところに行っている気がします」


 俺と加奈は、集合場所までの道のりを一緒に歩いていた。集合場所は、学校と俺たちの家の中間あたりにある公園らしい。

 そこにつくまでしばらく歩かなきゃならない。正人と葉山を誘ってみたが、正人はどうやら生徒会メンバーと行き、葉山は文化祭実行委員のメンバーと行くらしい。

 しばらくの間、俺は加奈と一緒に集合場所までの道を歩く。


「……海斗くん。あの、お願いがあるのですけど」

「なんだ」

「さ、寒いので手を繋いでくれませんか?」

「お前手袋つけてるのに?」

「…………」

「ん? なんで今手袋をしまったんだ?」

「なんでもありません。そもそも私は手袋なんてはじめからしていませんよ?」


 なんでやねん。

 思わずベタなツッコミが出てしまった。なに言ってるんだこいつ。バカじゃねーの?

 もしかして正月ボケ? いやいや早すぎるだろういくらなんでも。


「とにかくですね……だから、手を、繋いでください……こ、公園につくまででいいですから」


 加奈はマフラーで表情を隠しながら、ごにょごにょと顔を赤らめて言ってくる。

 まあ、集合場所に着くまでならいいか。

 そう思った俺はポケットの中に入れていた手を出して、加奈の指と絡める。


「ひゃっ」

「これでいいんだろ?」

「は、はいっ……いきなりなんてちょっとびっくりしました……かいとくんのばか……」


 ぼそぼそと隣にいる俺ですらきこえないぐらいの音量で何かを呟く加奈。なんでこいつはいつも人にきこえるぐらいのボリュームで声を出さないのか。

 しかも言われた通りにしたのに、顔を真っ赤にしたまま俯いて黙り込むし。

 顔が赤くなるぐらいに寒いのだろうか。いや、でも繋いでいる手は温かいのに。


「それにしても、女子の手って柔らかいんだなぁ。当然だけど自分のと全然違うわ」

「海斗くんの手は……大きいです。なんだか、頼りになる感じというか」

「この手は幼女を愛でることにしか使わないと心に決めてたんだがな……」

「そんな遠くを見るような目で言われても」


 しばらくそのままの状態で歩くと、集合場所である公園が見えてきた。ここはかなり広い運動公園で、遊具も充実しているし野球やサッカーが同時に出来そうなぐらいに広い。

 公園が見えてくると加奈は名残惜しそうに手を離した。そのまま公園の中に入っていくと、いつもの四人の姿が見えた。

 南帆に恵、美紗と美羽の渚姉妹。これでいつものメンバーが揃った。


「かいくん、かなみん、新年あけおめことよろだよ!」

「……あけおめ」

「えっと、あけましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いします」

「あけましておめでとうございます」


 新年の挨拶もほどほどに、俺たちは初詣のためにこの辺りにある神社へと歩いていく。

 神社に近づいていくと、徐々にお祭りの時に見かけるような屋台が顔を覗かせていく。それにつれて、参拝客も多くなってきた。


「さて、振袖幼女は……」

「新年早々かいくんはブレないねぇ」

「そろそろ警察を呼びましょうか」


 なんて危険な事をしようとしているんだ美羽は。そんなことをすればリアル逃〇中になってしまう。

 新年早々おまわりさんとのチェイスに興じる暇はないぜ。


「一、二、三、四…………ふむ。半径一㎞以内にいる振袖幼女の数は把握した」

「なにそれかいくん凄い」


 幼気を高めればこれくらい造作もないな。


「あとはこの持参したマイカメラで振袖幼女の姿を――――」

「……手が滑った」

「足が滑りました」


 南帆の手が不自然な動作を見せて俺の手からカメラを弾き飛ばし、次いで美羽が不自然な動作で地面に落ちた俺のカメラを踏みつぶした。

 なんてことをしてくれたんだこのBBA共!


「貴様ら貴様らぁ! バカ野郎ぉおおおおおおおおおおお!」

「ナイスですよ南帆、美羽」

「これで参拝客の中にいる振袖幼女の平和が守られたね!」

「あはは……海斗くん、元気だして……?」


 そういうけどな、美紗。壊れたカメラの中に中にある幼女の画像データは戻ってこないんだよ……。まあ、バックアップは各写真五枚ずつとってあるけど。今日はまだ一枚もとっていないから助かった。こうなったらいつものように懐に忍ばせておいた予備カメラその②でBBA共に見つからないようにこっそり撮影していくしかないな。まったく、この一年で俺の撮影スキルもあがったもんだぜ。(幼女のみを)乱れ撮るぜ!

 俺たちも列に並んで順番を待つ。時間が経つごとに順番は進んでいき、ようやく順番が来た時には賽銭箱を入れて、俺は神様に「今年こそ合法ロリと健全なお付き合いができますように」とお願いしておいた。神様、信じてるぜ。……あと、もう一つ、ついでにお願いしておこうかな。

 参拝が終わると、今度はおみくじを引いた。

 ちなみに俺は大吉。いろいろ書いてあるなぁ。はっ、そうださっき幼女に関してお願いしたから『幼女』の項目に良い事が書いてあるかも……なんだ『幼女』の項目が無いじゃないか。ポンコツおみくじだな。じゃあ代わりのそれっぽい項目は『恋愛』か? まあ、BBAとのことならどうでもいいが、幼女との恋愛に関しては大歓迎だ。なになに「より取り見取り。これからも増える」? マジかよ。幼女をより取り見取りとか最高じゃねーか。しかも増えるとか。今年は最高の一年になりそうだ。ん? なんかまだ書いてある。「全てを選ぶのもよし」? 当たり前だろ! たくさんいる幼女の中から一人だけを選ぶなんて俺には考えられないぜ。


「海斗くん、どうでした?」

「かいくんのおみくじっ!」

「……見たい」

「わ、私もっ」

「う……私もですっ」


 五人のBBAがいっせいにそんなことをきいてきたもんだから、哀れでか弱い紳士である俺はしぶしぶおみくじを見せた。BBAって怖いね。

 すると、五人は何やら真剣な顔をしてどこか一つの項目を凝視していた。大吉だとか、そういう項目には目もくれていない。どこを見ているんだろう。

 やがて五人はジトッとした目で俺を見てきた。なんだ。俺が何をしたっていうんだ。


「海斗くん、より取り見取りって……しかも増える? これ以上?」

「うーん。でもこれはハーレムエンドの可能性も微レ存……」

「……もうどうにでもなれ」

「でも海斗くんらしいかも……」

「まったく。あなたという人はこれ以上増やしてどうする気なんですか?」


 お前らは何を見ていたんだ。

 その後、俺はBBAたちからあーだこーだ言われ続けた。

 理不尽だ。新年早々BBA共に囲まれてあーだこーだ言われる。誰か、俺と交代してくれませんかね。

 参拝者たちの列から離れると、今度は適当に屋台を見て回る。その間にこいつらに元旦は家族と過ごさなくていいのかと言ったら、家族ごとの用事は明日からになるようだ。親戚の家に行ったりとか色々とあるのだろう。かくいう俺も三日には実家に一度帰って親戚の家に行ったりしなければならない。


「よーし、それじゃあ屋台で何か食べよー!」

「……おー」


 恵と南帆のコンビは屋台の方を見てうずうずしていた。確かに美味しいもんなぁ。こういう場所で食べる食べ物って。

 かくいう俺もこういう屋台で食べるベビーカステラは大好物だ。色々と屋台で買ってみた俺たちは、落ち着いて食べる為に、参拝客の列が見渡せる広場のようなところに向かい、適当な場所を見つけて腰かけた。ちょうど、俺たち全員が向かい合うような感じになる。さて、俺はさっさと買ったベビーカステラを食べ、


「海斗くん、海斗くん」

「あ? なんだよ」

「あーん、ですよ」


 にこっ、とした笑顔で加奈がベビーカステラを差し出してくる。普段ならお断りする場面ではあるが、大好物を差し出されたとなっては黙って従う。

 ありがたくいただいたベビーカステラを咀嚼する。うん。やっぱり美味い。


「美味しいですか?」

「ん。美味しい」

「ふふっ。よかったです♪」


 嬉しそうなやつだなぁ。まあ、知ったことじゃないけど。

 さて、今度こそ俺は自分の分のベビーカステラを……と思ったら、誰かがくいくいっと服の袖を小さく掴んで引っ張ってきた。


「……海斗」

「なんだ、南帆」

「……あーん」


 今度は南帆がたこ焼きを、加奈と同じように差し出してくる。まあいいか。拒む理由は特にないし。

 大人しくたこ焼きを南帆に食べさせてもらう。うーん。やっぱり美味しい。こういう屋台の雰囲気のおかげか、ソースの味などが普段食べるたこ焼きよりもはっきりと感じられる気がする。


「……おいしい?」

「おいしいおいしい」

「……よかった」


 珍しいな。南帆が笑みを見せるなんて。こいつはここ最近、というよりこの一年でかなり表情が柔らかくなってきたが、こうやって笑みを見せるのは珍しい。笑みといっても小さなものだけど。それでも南帆の笑顔は珍しい。そんなにも良いことがあったのか?


「かいくん、私にもあーんさせてよっ」

「はぁ?」

「ほらほらかいくん、あーんっ」


 今度は恵がフランクフルトを差し出してきたので、もう抵抗はすまいと大人しく食べさせてもらう。なんでこいつらは揃いも揃って俺に食べ物を分け与えてくるんだ? そんなにも俺の腹を満たして何になるんだ。


「美味しい?」

「ああ。美味しいよ」

「えへへっ。よかったぁ」


 よかったも何も誰が食べても同じ味になるだろうに。

 変な奴だな。


「あの……海斗くん」

「どうした美紗」

「私のも……その、食べて?」


 今度は美紗がわたあめを構えていた。美紗はそれを持って近づいてきて、


「あ、あーん……」


 おずおずと上目遣いのまま、それを差し出してくる。俺はもう流れでそれを口に運んだ。


「美味しい、かな……?」

「うん。そーだな」

「そ、そっか。よかった……ふふっ」


 そういって、美紗はふわりと柔らかい笑みを浮かべる。

 幸せそうに。まるで、今の状況が夢みたいだと言わんばかりに。

 まあ、これはあくまでも俺の主観なので大げさだなぁとは言わないが。


「あ、あのっ……えっと……」


 今度は、美紗の隣にいる美羽が何やらもじもじと何かを言いにくそうにしていた。なんかこの流れは……。


「わ、私も……あーん」


 視線をぷいっと逸らしつつ、それでもチラチラと視線を俺の方に向けてくる美羽が差し出してきたのはたい焼きだ。美羽が恥ずかしそうにしつつも食べさせようとしてくれているそれを、有難く頂戴する。

 おっ、白あんか。これも好きだ。美味しい。


「……その、美味しいですか?」

「ん。美味しいぞ。ありがとな」

「ふぇっ……。べ、別にお礼なんていりませんっ」


 さて、BBA共のあーんラッシュが終わったところでようやく俺は自分のベビーカステラを食べることが出来るわけなのだが……。その前に、


「じゃあ、今度は俺の番だなぁ」

『えっ?』

「俺のもやるよ。はい、あーん」


 五人のBBA共にお返しのつもりでベビーカステラを一個ずつ、あーんで食べさせてやる。

 うんうん。これでおあいこだな。

 全員に食べさせた後、何故か五人は顔を真っ赤にして俯いていた。そんなにも寒いのかな。

 ふと周囲を見渡してみると、何故か道行く男たちから妬みの視線をもらった。何故だ。BBAに囲まれているだけのこの状況のどこに妬む要素がある?


 ☆


 初詣が終わると、例の如くこいつらは俺の家に集まってきた。もう諦めよう。

 姉ちゃんが作ってくれたおせちをみんなで食べながら、色々とおしゃべりに興じる。


「そーいえばかいくんは、初詣で神様になにをお願いしたの?」

「そりゃもちろん、『今年こそ合法ロリと健全なお付き合いができますように』だよ」

「相変わらずブレませんね」

「……ロリコン」

「褒め言葉だな」


 それと、あと一つ。

 俺が神様にお願いしたのは、


 ――――今年もみんなで楽しく過ごせますように。






今年も作者共々、『俺は/私は オタク友達が欲しいっ!』をよろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ