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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第3章 襲来するお姉ちゃんと夏休み
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第23話 始まる夏休み

 夏休み。

 それは学生たちにとって休息の時である。だが卑劣にも教師という畜生は容赦なく夏休みの課題をシンクロ召喚させ、俺たち学生を苦しめようと息巻いている(※あくまでも個人的なイメージです)。

 そんな夏休みに、俺はクーラーのよくきいた部室の中でギャルゲーをしていた。画面の中では一目見てこのソフトの購入を決断させたラブリーな幼女が無邪気な笑顔を向けてくる。

 やはり幼女と戯れているこの瞬間が俺にとっての至福の時、なのだが。

「はぁ」

 出てくるのはため息である。

「どうしたのですか。幼女と戯れている時が至福の時と豪語する変態さん。幼女の目の前でため息とは、らしくないですね」

 というようなことを、正面の席に着いた天美加奈が言ってくる。その手にはニッパーと切り取ったばかりのプラモデルのパーツ。現在、絶賛組み立て中だ。

「……海斗が幼女を攻略している時にため息なんて病気? 普段は気持ち悪い笑みを浮かべているのに」

 と、失礼なことをぬかしやがるのは楠木南帆だ。その手には携帯ゲーム機が二台。どこの神にーさまだお前は。

 この日本文化研究部という名前の割に全くそれに沿った部活動をしていない部活動の部員二人がこんなことをいうのはもはや定番である。ということはここで、残った一人、牧原恵が何か失礼極まりない一言を放り投げてくるのかと思いきや。

「…………」

「……?」

 恵は窓の外に視線を向けたままぼーっとしている。そのアンニュイな表情は普通の男子高校生ならばクラッと来てしまうのだろうが、幼女ではない限り俺には何も思えない。

 大人ぶってアンニュイな表情をしようと頑張る幼女。最高です。

「おい、どうした恵。この辺りで『相変わらずかいくんは本当に変態さんだね』だのなんだの失礼極まりない発言をするかと思ったんだが」

「え? あ、うん。かいくんは本当に救いようのないぐらいの変態のロリコンさんだね」

 あれ? いつもより容赦なくね?

「フッ。馬鹿め。クリアマインドを会得した俺にとって今やロリコンという言葉すら心地よい響きなのだよ」

「もうだめですねこれは。完全に手がつけられないぐらいの変態さんになってしまっていますよ」

 失敬な。

「にしても、お前も家で何かあったのか?」

「…………うん。まぁ、そんなトコ」

 言いにくそうに言葉を濁す恵。

「そ、それよりさ、お前『も』ってことはかいくんもお家で何かあったの?」

「え? あ、まぁ……うん」

 突然こっちに投げ込まれた話題に今度は俺が言葉を濁す番だった。だがそこを目ざとく加奈が突く。

「何があったんですか?」

「まぁ……なんつーか、そこまで重い話題じゃないんだけど俺にとっては重いというか……」

 一人で悩んでいても仕方がない。いや、そもそもこれは不可避だといってもいい。

 言うなれば必中の出来事であり、こうなってしまえば話してしまったほうが楽なのかもしれない。

「……姉ちゃんが来る」

『はい?』

 ぼそりと俺が言った言葉を、部員全員が疑問符を浮かべた。

「だから、姉ちゃんが来るんだよ。俺の家に」

「……それがどうかしたの?」

 と、南帆がきょとんと首を傾けながら言う。まあ、そりゃそうか。普通の人からすればどうってことのない普通のことなんだから。でも、俺にとっては大問題なのだ。

「いや、俺の姉ちゃんって凄いテンションの高い人というか何というか……」

「かいくんはおねーさんが嫌いなの?」

「いや。そういうわけじゃないんだぜ? 好きか嫌いかで言えば姉ちゃんは好きだし、俺の師匠でもあるし」

「師匠、ですか?」

「ああ。俺を鍛えてくれたのも、萌えロリ幼女アニメを勧めてくれたのも姉ちゃんだからな」

『あっ……(察し)』

 なんだか物凄く哀れなものを見るような目を向けられた。

「その姉ちゃんがウチに来るとなるとしばらく騒がしくなりそうだし……まーた毎晩毎晩抱き枕にされて体の節々が痛むだろうし」

『ちょっと待て』

 俺を除く全ての部員からストップがかかった。

「ちょっと待ってください海斗くん。何だか今、聞き捨てならないようなことが聞こえてきたのですが」

「は? 何が」

 さっきの言葉のどこにそんなものがあったのか、こっちが聞きたいぐらいだ。

「……抱き枕って?」

「どーいうことかなぁ? かいくん」

 怖い。全員の笑顔が怖いです。特に恵、お前だよ。

 やめて! このままだと殺されちゃう!

「あのお姉さんに抱き枕にされるって、本当にどういうことかなぁ?」

「いや、だから文字通りだよ。夜中に俺の布団の中に潜り込んでこう、むぎゅううううううっとしてくるんだ。寝ぼけて」

「……そのお姉さんはどんな人?」

「こんな人」

 というわけで、俺はまだ見せたことのなかった加奈と南帆に携帯の画像フォルダの中にある姉ちゃんの写真を見せる。

『……………………』

 絶句していた。

 まあ、確かに弟の俺が言うのもなんだけど、姉ちゃんは凄く可愛いと思う。

 だがBBAだ。

 スタイルも抜群だし、姉ちゃんが高校生ぐらいのころはしょっちゅう告白されていたのも覚えている。

 だがBBAだ。

「海斗くん、見損ないました」

「は?」

「……海斗はそのままずっと犯罪者ロリコンだと信じていたのに」

「え? 俺はこれからも幼女好きだけど?」

「こんなぼん、きゅっ、ぼん、な人にはしるなんて、酷いよかいくん! 私たちの信頼を裏切る気!?」

「何で俺が犯罪者であることを信頼されてるんだ!?」

 理不尽だ。そもそも俺はこれからも幼女を愛し続ける所存だ。そもそもぼんきゅっぼんなスタイルなど、俺の理想とはまさに対極に位置するスタイルだぞ。

「と、とにかくだなぁ。そろそろ合宿について話し合わないか?」

「合宿、というのはこの文研部の合宿ですよね?」

「……合宿ラッシュ」

「スペシャルラッシュだね!」

 確かに、この前、親睦会という合宿を行ってからの文研部での合宿だ。連続になるし、やっぱり控えた方がいいのか?

「とりあえずお前ら、合宿は行けるのか?」

「はい。夏休みなんて基本的に一日中部屋の中でジオラマ制作に励むか道具や材料を買いに行くぐらいしかやることがありませんし」

「……私もゲーセンやカードショップで暴れるぐらいしかすることがない」

「それ、普段とどこが違うんだ?」

 と、ここでまたもや恵が出遅れていることに気づく。いつもは二人に続くはずなのに。

「恵?」

「ふぇ? あ、えーっと、その……」

 どうにも歯切れが悪い。まるで、何かを隠しているみたいだ。

「どうしたのですか、恵?」

「……もしかして、夏休みは何か予定がある?」

 もし夏休み中、何か予定が入っているのならば合宿は中止だろう。恵一人を置いていけないし、誰か欠けてしまえば意味はない、ような気がする。

「う、ううん。何も予定はないよっ! だいじょーぶ! ちょっと考え事していただけだからねっ!」

 そう言った恵の顔はどこか、無理をしているように思えて。

 だけどそこに踏み込むことも、できなかった。

 なので。

「よし、そんじゃあさっそく、計画でも立てるか!」

 そこに触れてほしくないという恵の気持ちを汲み取り、そのまま合宿についての話題は進行した。


 【日本文化研究部】(4)


 加奈「これがリア充御用達ツールのLINEとやらですか」既読3

 海斗「まさか使う日が来るとは思わなかったぜ……」既読3

 南帆「……アプリはダウンロードしてたの?」既読3

 海斗「ああ。だが、相手が正人しかいなくてな。そもそも携帯の電話帳も父さん、母さん、姉ちゃん、正人の四人だけだった」既読3

 恵 「かいくん。悲しすぎるよ、それ……」既読3

 海斗「ほっとけ!」既読3

 加奈「でも、これは連絡ツールとしてはかなり便利ですね。無料通話もできますし」既読3

 恵 「そうだね。これならいちいちメールで回さなくてもみんなで一気に見れるし」既読3

 南帆「……時代は進歩した」既読3

 海斗「ただまあ、問題は『友だち』の欄がガラガラという点だけどな」既読3

 加奈「え? 私は割といますよ? ぜんぜん話しませんが」既読3

 海斗「え?」既読3

 恵 「まあ、私もいるっちゃあいるかな。塾の知り合いとか。ぜんぜん話さないけど」既読3

 海斗「え? え?」既読3

 南帆「…………」既読3

 海斗「な、南帆……お前は……お前だけは、俺の仲間だよな?」既読3

 南帆「中学時代の友だちとか、ゲーセンやカードショップの顔なじみとかなら。ぜんぜん話さないけど」既読3

 海斗「畜生! もうLINEなんて嫌いだああああああああああああああああ!」既読3

 恵 「かいくんの馬鹿野郎。無茶しやがって……」既読2

 南帆「……『既読』が2になってる」既読2

 加奈「あまりの辛さにもう落ちたようですね」既読2

 南帆「……哀れ」既読2

 恵 「あちゃぁ。ついに現実逃避しちゃったかぁ」既読2


 【日本文化研究部 女子部員の部屋】(5)


 加奈「と、いうわけで、私たち女子メンバーはここでお話ししたいと思います」既読4

 恵 「所謂いわゆるガールズトークってやつだね!」既読4

 美紗「あのぅ……私たちも参加してもいいのでしょうか?」既読4

 美羽「そもそも私たちは部員ではないのですが」既読4

 南帆「……こまけーこたぁいいんだよ、というもの」既読4

 加奈「とりあえず本題に移りましょうか」既読4

 美羽「本題、と言いますと?」既読4

 南帆「……今度、文研部で合宿がある」既読4

 恵 「だから二人もどうかなーって思って」既読4

 美紗「いいんですか?」既読4

 恵 「もちのロンだよ!」既読4

 美羽「私は構いませんが」既読4

 美紗「わ、私も……」既読4

 加奈「決まりですね」既読4

 南帆「……よかった」既読4

 美羽「それで場所は?」既読4

 加奈「海を予定しています。宿泊は私の家が所有する別荘で」既読4

 美紗「すごい。別荘なんてあるんですね」既読4

 加奈「まあ、一応。家族で行った記憶は殆どありませんけどね。仕事が忙しいせいで私は両親にあまりかまってもらえませんでしたから」既読4

 恵 「楽しみだね! 夏といえば海! 海だよっ!」既読4

 美羽「ん? ちょっと待ってください」既読4

 美紗「どうしたのお姉ちゃん?」既読4

 美羽「文研部の実態は理解しています。だからこそ疑問なのですが、文研部のこの合宿の意味は……?」既読4

 加奈「…………」既読4

 南帆「…………」既読4

 恵 「…………」既読4

 美羽「あの……」既読1

 美紗「みんな、逃げちゃったね……」既読1

 美羽「いや、気持ちはわかりますけどね。夏休みですし、夏休みといえば合宿という考えに至る気持ちもわからなくはないんですけど」既読1


 【男部屋】(3)


 正人「おい、このむさ苦しいルーム名はやめろとあれほど……ってまあいいや。後で自分で変えるわ」既読2

 爽太「そうかな? 僕にとっては凄く良い名前だと思うけど」既読2

 正人「そうかぁ?」既読2

 爽太「ん。じゃあ、これならどうかな」既読2


 【┌(┌^o^)┐男部屋ァ...】


 正人「ごめん。俺が悪かった。だから元に戻してください。お願いします」既読2

 爽太「そっか……ちょっと残念だな」既読2

 正人「頼むから残念がらないでくれぇ!」既読2

 爽太「まさか僕も招待されるなんて夢にも思わなかったよ。ありがとう、海斗くん」既読2

 海斗「葉山はまだ転校してきたばかりだからさ、もっとコミュニケーションをとりたいと思って」既読2

 爽太「こ、こみゅにけーしょんっ!? そ、そんな……いきなり大胆だよ」既読2

 海斗「大胆? ははっ。大胆も何も、自分から動かなきゃ。葉山だってまだ慣れていないだろうし」既読2

 爽太「だ、大丈夫。確かに初めてだけど僕、頑張るよ」既読2

 海斗「? お、おう。まあ、頑張れよ」既読2

 正人「凄いなこれ。文面だけ見るとすごく……いや、何でもない」既読2

 海斗「? なんだよ。今日はやけにハッキリしないな」既読2

 正人「いや……知らない方がいい幸せってあるんだぜ、ってのと、見ていてこれはこれで面白いからな」既読2

 海斗「???」既読2

 正人「で? わざわざルームまで作って、どうしたんだ?」既読2

 海斗「そうだった。えーっと、今度、文研部で合宿に行くことになったんだけど、お前らもどうだ?」既読2

 正人「文研部の合宿?」既読2

 爽太「へぇ。文研部って合宿もするんだね」既読2

 海斗「ああ。夏休みといえば合宿って相場が決まってるんだよ」既読2

 正人「えらい短絡的な考えだな。因みに、だ。海斗、メンバーは?」既読2

 海斗「俺、加奈、南帆、恵、そんで、あとは美羽と美紗も誘う予定。あと、お前らと……下手をすればもう一人、増えるかも」既読2

 正人「ぜひご一緒させてください! 頼む! 頼むうううううううううううう!」既読2

 海斗「やけに必死だなオイ」既読2

 爽太「合宿……海斗くんも行くんだよね?」既読2

 海斗「ああ。あと、正人こいつもな」既読2

 爽太「ぜひ僕もご一緒させてください」既読2

 正人「おおっと? 今ちょっと身の危険を感じたぜぃ」既読2

 海斗「? むしろ、葉山ならこっちから頼みたいぐらいだ」既読2

 正人「っと、日程はいつになるんだ? 俺、夏休みも生徒会があるから休みいれるなら早めに言っておかなきゃならねぇんだよ」既読2

 爽太「夏休みも生徒会あるんだ?」既読2

 正人「ああ。二学期にある文化祭の準備とかでこの時期から結構、忙しいんだよ」既読2

 海斗「この学園の文化祭、去年行ってみたけど凄かったぞ」既読2

 爽太「そうなんだ。楽しみだなぁ」既読2

 海斗「そういえば日程だったな。えーっと、日程は――――――――」既読2


 ☆


「ふぅ。こんなもんか」

 俺はLINEでメンバーを収集する作業を終えると、ため息をつきながらベッドに倒れこんだ。

 今日の部活での恵の様子が少しおかしかったのが気がかりだ。

 合宿で何とか手がかりだけでもつかめるといいんだけど。

 と、その時。


 ピンポーン。


 という、インターフォンの電子音が家の中に鳴り響く。俺はのろのろと起き上がると、玄関に向かい、ろくに外に誰が居るのかも確認せずにドアを開けた。

 視界が駄肉で塗りつぶされた。

「もごぁ!?」

 違う。これは……この懐かしい感触は、間違いない……!

「かいちゃ――――ん! お姉ちゃん、寂しかったよぉおおおおおおお!」

「もごがっ……ぷはっ、ね、姉ちゃん!?」

 駄肉の塊、恵風に言うならばぼんきゅっぼんの抜群のスタイルを持った姉ちゃんが、その豊満な胸をに俺の顔を押し付けてむぎゅううううっと抱きしめている。

 苦しい。駄肉の感触が気持ち悪い。もっと絶壁のまな板がいい。

 窒息死してしまいそうになりながら、薄れゆく中で俺は思った。


 ……ああ、厄介なことになるだろうな、と。


 

いつか正人を主人公にした生徒会の話を書きたいですね。

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