幕間、新たな刺客チロヌップ
ギャグ風味です! はしやすめにいかがでしょうか。
「お、わっ……」
慌てて抱きかかえようとすると。あろうことか狐は私を踏み台にして、しゅたっとその場に着地した。
目が点になるとは、まさにこのこと。
……私の、私のまな板に、肉球痕がくっきりつけられていたのだ。
膝をつく私に向かって、犯人は「あっかんべー」をしながら、はるかかなたへ走り去ってゆく。
「あっはは! 見事に化かされちゃいましたねーーってトラちゃん⁉︎」
私は忽然と、沖田さんの前から姿を消す。
おのれよくもやってくれたなーーじゃ、なかった。
「沖田さん。私、あの子とちょっと"お話"しなきゃならないので。」
自分で言うのもなんだが。その時の私は、きっと恐ろしいほど満面の笑みを浮かべていたに違いない。
*
「さあふたりとも、お互いに何か伝えるべきことがあるんじゃないですか?」
私は自分の爪に視線を落とす。
まったく、狐にほっぺたを引っかかれるわ、沖田さんに強制連行されるわで、さっきは本当に大変だった。
私も、ちょっと身体的特徴をいじられたくらいでムキになりすぎたところは、たしかに、あったかもしれないけど。
(はあ、しかたない。今回だけだ。)
「………………ゴメンナサイ」
やれやれといった感じで右手を差し出し、狐をチラ見。
ところがーー奴はむしゃむしゃ、いなり寿司を頬張っていやがった。
(コイツ……)
とりあえず、怒りの矛先は沖田さんにでも向けておくことにしよう。
私に睨まれた沖田さんは一瞬、ぎくっとしたように頭をかいた。
「僕はただ、大事なお客さまをもてなそうとーー」
その先を言わせてたまるかと、私はさらに圧をかける。どうせ「当然のことをしたまでですよ」とか言うに決まっている。
で、あるからして。
「……ください」
「へっ?」
私はふいっとそっぽを向いて言う。
「その、砂糖じょうゆにヒタヒタさせてそうなおいなりさん。私にも一個、ください。」
やっと食べ物らしい食べ物を見つけたのだ、腹の虫が自己主張しないわけがなかった。
あとがき
読者のみなさまこんにちは。この間二才のいとこと遊ぶ機会がありまして(私は青二才)、興味本位で「ワンワンとニャンニャンどっちが好き?」と聞いてみたところ「ねこが好き」と返ってきました。トラちゃんと沖田さんもたぶん猫派ですよ。ほんと猫好きが多いですね、この国は。
あ、ちなみに筆者は鳥派です。




