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第19話 悪魔の薬

 ジャック会長の尽力があって、新しい化粧品の製造販売は着実に進んでいる。

この調子で進めて行けば、来月には販売まで持っていけるだろう。


 エミリアはそんな事を考えながら、王宮内を歩いていた。

その時、前を歩いていた少女が急に倒れ込んだ。


「大丈夫ですか?」


 急いでその少女の元へ駆け寄る。


「医師のエミリアです。聞こえますかー?」


 反応が無い。

苦しそうに表情を歪めている。


 すぐに気道を確保して窒息を防ぐ。

脈拍は異常に早く、発汗もすごい。


「この症状ってもしかして……」


 エミリアは似た症状をみた事があった。


「薬物中毒……でもなんで?」


 服装を見るに、どこかの貴族令嬢だろう。

そんな高貴な身分の人が薬物中毒になどなるだろうか。


「考えている場合じゃなさそうですね」


《癒しの加護を救いの御手を》


 回復魔法で一時的に症状を落ちつかせる。


「誰か、手を貸してください!」


 エミリアが叫ぶと、それを聞きつけた騎士たちが数人やってきた。


「エミリア様、どうされました?」

「彼女をどこか横になれる場所に運びたいので、手伝ってもらえますか?」

「かしこまりました」


 騎士たちに手伝ってもらい、少女を来客用の休憩室へと運んで横にさせる。

エミリアの魔法で症状は落ち着いているが、いつ悪化するか分からない状況だ。


「マヤ!!!!」


 その時、勢いよく扉を開けて1人の男が入って来た。

その後ろにはアーサー陛下もいる。


「マヤ! マヤ!」

「あの、落ち着いてください。お父様ですか?」

「取り乱してしまって申し訳無い。彼女の父のロラン・フロレンスと申します」


 フロレンス侯爵家のことは聞いている。

この国の宰相を務めていた優秀な男だと。


「医師のエミリア・メディです」

「では、あなたが陛下の病を治したという」

「ええ、そうです。それより、お嬢様は薬物中毒の可能性があります。何かご存知ではありませんか?」

「それは、私から説明しよう」


 今まで黙っていた陛下が口を開いた。


「陛下は何か知っているんですか?」

「エミリア殿が言うように薬物中毒で間違いない。それも、最近許可を出した新薬だろう」

「どういうことですか?」

「最近、新たに処方を許可した薬があるのだが、それを違う使い方をしたら麻薬と似た効果があることが分かったんだ」


 本来、新薬を出すには薬師協会、医師会が安全性を認めなくてはならない。

その二つをすり抜けて来た薬物だというらしい。


「確かに、正しく使えば効果的な薬になるのだ。だからその危険性を誰も疑わなかった」

「では、その薬を悪用した人間がいるということですか?」

「ああ、今や美容効果があるや、新たな自分に出会えるなどを謳っているらしい」

「許せませんね。そんな危険なものを市場に出回らせるなんて」


 貴族令嬢まで被害が及んでいる。

このまま放置していたら、事態は深刻なことになってしまう。


「まずは、彼女を治しましょう」

「頼む!」


 ロラン侯爵が頭を下げる。


「頭を上げてください」


 そう言って、エミリアはマヤの手を取る。


「治すよ。あなたの未来」

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