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黒き剣帝 元最強のアラフォー全盛期を取り戻して無双ハーレム  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!
第3章 新たな使命

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1 堕天の牙

ジラルドを追放した冒険者ギルド『栄光の剣』絡みのエピソードです。

次回からまたジラルド視点に戻ります。


「やれやれ、モンスターの襲撃を防ぎきれず、積み荷を根こそぎ奪われたとは、ね」


 依頼主──とある商会の主人は馬鹿にしたようにため息をついた。


「最近、クエスト失敗が増えてるんだってぇ? 天下の『栄光の剣』も落ちぶれたもんだねぇ」

「も、申し訳ありません」


『栄光の剣』のギルドマスター、バルツは平謝りだった。


(くそっ、ちょっと前までは『ぜひ「栄光の剣」様に護衛の仕事をお願いしたいんですよ~。予約がいっぱいなのは知っていますが、うちとそちらの仲じゃないですか、お願いしますよ~。報酬にも色付けさせてもらいますから』なんて愛想を振りまいていたくせに!)


 内心で毒づきつつ、表面上は愛想笑いを浮かべる。

 黙って耐えるしかなかった。


「邪神大戦の英雄『黒き剣帝』が仲間たちと設立した冒険者ギルド──そんな栄光も地に落ちたもんだ。所属する冒険者は減る一方なんだろう?」

「い、いえ、そんな……」

「隠しても知っているよ。我々にだって横のつながりというものがあるんだ。仕事柄、優秀な冒険者ギルドの助けが必須だからね。各ギルドの情報には自然と詳しくなるのさ」


 依頼主が笑う。

 ただし、バルツを見る目はどこまでも冷たい。


 最近はこういう目で見られることにも、すっかり慣れてしまった。


『栄光の剣』はもう駄目だ。

 かつての戦力はない。

 ここを得意先にするのはやめて、これからは別のギルドと──。


 依頼主が何も言わずとも、視線がそう語っていた。


(これ以上、落ちぶれるわけにはいかない。『栄光の剣』は天下に有数の冒険者ギルドで、俺はそのマスターなんだ!)


 背中がじっとりと汗ばむ。


「そういえば、最近すごい冒険者が出てきたそうじゃないか。なんでも──あの伝説の『黒き剣帝』が全盛期並みに活躍し始めたんだって?」

「えっ……?」

「昨日だったか、第二階位の堕天使を一瞬で倒したそうだよ。君らのギルドもそれくらいの活躍をしてくれたらいいんだが……まあ、今のメンバーじゃ無理か。ははは」

(ぐっ……)


 バルツは拳を握り締めた。

 屈辱で全身が震える。


 少し前までは、立場は逆だった。

 栄光の剣のクエスト達成率はトップクラス。

 難度の高いクエストの依頼がひっきりなしで、かなり先まで予約が埋まるほど。


 それらのクエストを、エースのヴェルナ・ロードをはじめとした精強な冒険者たちが高い成功率でこなしていき、ギルドの名声はさらに高まる──。

 そんな好循環を繰り返していた。


(なぜ、こんなことになっているのだ……)


 ──その後もさんざん嫌味を言われた末に、バルツは追い出されるようにして商会を後にした。




「お困りのようですね、バルツ様」


 帰り道、バルツは突然声をかけられた。

 振り返ると、全部で十人ほどの冒険者が立っている。


「……なんだ、お前たちは」


 全員十代や二十代のようだが、身にまとう気配は歴戦の猛者のそれだった。


(最低でもBランク……たぶんAも何人か混じっているな)


 バルツは内心でつぶやいた。


 冒険者のランクを示すペンダントを見るまでもない。

 落ちぶれたとはいえ、バルツは名門ギルドのマスターである。

 冒険者の力量を見抜く目には絶対の自信があった。


「我らは『堕天(だてん)の牙』に所属する者です。私はメティスと申します」


 リーダーらしき女が丁寧に一礼した。

 褐色の肌に長い金髪の美女である。

 楚々としながらも、匂い立つような色香を漂わせていた。


 ごくり。

 バルツは思わず生唾を飲みこむ。


「で、その『堕天の牙』が私になんの用だ?」


 このあたりの有力なギルドの情報はすべて頭に入っている。


『堕天の牙』といえば、数か月前から勢力を伸ばしつつある中堅ギルドである。

 なんでもAランクやBランクの腕利きが何人も新加入したんだとか。


「単刀直入に申しますね。ぶしつけながら──移籍のお願いに参りました」

「移籍?」

「我々は以前から『栄光の剣』に憧れておりました。冒険者ランクを上げ、いつかは『栄光の剣』のような名門ギルドに入りたい、と」


 告げるメティス。


「そして今、私たちはいずれもAやBランクに到達しています。私を含めてAが7名、残りの3名はBです」

「ほう」

「一方で『栄光の剣』は最近、冒険者が少なからず離脱し、苦しい状況だとお聞きしました。微力ながら、私たちがその手助けをできれば……と」

「では、お前たちは全員『栄光の剣』に来てくれるというのか?」


 バルツは思わず身を乗り出した。


 Aランクが一気に7名、Bランクも3名が入ってくれるとなれば、大幅な戦力アップである。

 エースのヴェルナたちが抜けた穴もかなり埋められる。


 少なくとも、ここ数週間の成績急落をある程度食い止められるだろう。


「もちろん、『栄光の剣』ほどのギルドとなれば入会審査も厳正でしょう。私たちを認めていただけるなら、ですが──」

「認めるに決まっているだろう!」


 バルツは即決した。

 今は喉から手が出るほど人材が欲しい。


(……しかし、いくらなんでも都合がよすぎないか?)


 頭の片隅に懸念が浮かぶものの、それを押し殺して、バルツはメティスたちに会釈した。


「歓迎するぞ、君たち全員を。ようこそ『栄光の剣』へ──」


     ※


「……少しくらいは警戒するかと思ったが、まったく疑いもせずに我らを迎え入れたか」

「これだから人間は短慮だというのだ」

「我ら邪神軍が地上に作る拠点の隠れ蓑として、お前のギルドを利用させてもらう」

「所属する冒険者はそれなりの数がいるようだから、下位の堕天使か聖獣、神操兵あたりの素材にでも使うとするか」

「今はせいぜい喜ぶがいい」


 バルツに聞こえないよう、神術による通話でメティスたちが話していた。


 そんな会話の内容など想像もしていないのだろう、バルツは機嫌よく鼻歌を歌っている──。

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