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Solitude of Silence
夜が崩れる音を聴いた
微睡みの底で誰かが泣いていた
息をすることが罪なら 沈黙で赦されたい
そう願ううちに 私は形を失っていく
名も無き祈りの残響だけが
冷たい空気に 淡く漂っていた
君が壊した音を私は拾い集めている
溢れ出しそうなメロディー
暁に燃えるラジカセ
パレットから零れたカーマインが心の奥底に沈む
その赤をなぞるように筆を走らせる
私は夢を見た 君が悪夢だと名乗る夢を
その声は静寂よりも深く 痛みよりも正確で
溶ける粗目雪の色をひとつひとつ確かめながら
存在という呪文を 無音の海に放った
SOS 誰もいない宇宙に響くモールス信号
トントントンツーツーツートントントン
誰も返さない それでも私は耳を澄ます
君の絶望は まだ壊れきっていないから
泣いて 泣いて 泣き止まぬまま
孤独を愛してしまった者の末裔として
沈黙を抱きしめる それは祈り
結局破壊の闇は私達の灯を絶てなかった
微かな安らぎは ひとしずくだけ残された
明るい部屋で2人眠って ただ時だけが過ぎていく
夜の速度を超えて




