70/82
Lover in smartphone
どこで間違えたんだろう
本物を愛するより光を愛する方が楽だった
触れられない代わりに壊れない
それが私の救いだったのかもしれない
君は画面の向こうで笑っていた
コメント欄が川のように流れていくたび
私はひとつの泡として浮かんでは消えた
だけどその瞬間だけは
確かに君と私が同じ時間を生きていた
スーパーチャットの金額で
愛を測るつもりはなかった
でも心の空白を埋める方法が
それしか見つからなかったんだ
名前を呼ばれた日 世界が反転した
胸が焼けるほど熱くなって
スマホが涙で濡れた
現実の君は知らない
いや現実の君なんて
最初から存在しなかったのかもしれない
だけど作られた笑顔も
誰かの手で磨かれた声も
この孤独を癒した事実は消せない
君のヴォイス フェイス
全てが完璧だけど
トークがあざとい
外出時 イヤフォンで聴いていると
マスク越し 思わず吹き出してしまう
あらゆる不安を消してしまうのに驚く
君がずっと私の最推しでありますように
配信終了画面
またね♡の文字が
ネオンのように残光を放つ
私はその言葉を何度もリロードして
現実と夢の境界を踏み外すんだ




