Opus
大地に鋤を入れるたび
私は神に近づいているのか
それとも神の背を見送っているのか
空を仰いで 返事を待つ日々は
もう幾千年も続いている
ゼウスがパンドラを送り出した日
人は初めて労働を手にした
それは罰として あるいは慰めとして
神の世界から切り離された我らの
唯一の祈りのようなものだった
プロメテウスは火を与え
ヘパイストスは道具を鍛え
デメテルは種の秘密をこっそり教えた
それでも大地は時に牙を剥き
雨は降らず 作物は腐り 飢えは訪れる
人は問う
なぜ我々は働かねばならぬのか
なぜ朝日と共に汗を流し
月影に照らされて 膝をつくのか
それでも手を止めない
それでも麦を刈り 石を積む
これは祈りではなく 誓い
神々に背を向けた我々の
たったひとつの生きる術
英雄たちは戦場で名を刻んだが
名もなき者たちは
畑を耕し 壁を築き 火を絶やさなかった
終わりなき営為 終わることのない責任
オルフェウスが竪琴で愛を奏でたように
私はこの土で 未来を奏でる
歌は無くとも 言葉は地に還る
誰のためでもない 私自身のために今日を終える
私は神に選ばれなかった
だからこそ 人として生きる
人として働き 悔い 老いて
そしてまた土に還る
神々が忘れても
この指に刻まれた傷は
この背中に染みついた熱は
誰よりも雄弁に 人生を語ってくれるだろう
土を抱きしめるように
私は今日も働く
それが私の詩であり
誰にも褒められぬ 私だけの労働だ




