Lost Crown
白いワンピースにローレルクラウン
夏の日の君の面影
今でも鮮やかによみがえる
フォトフレームの中の君を見て
幸せになってくれているだろうかなんて心配で
未だに夜も眠れません
つき合ったきっかけはバスに乗り遅れた僕と君
停留所でどうしましょうかなんて苦笑いして
僕から会社休んでこれから海鮮居酒屋行かない?
なんて強引なナンパしたんだよね
君は満面の笑顔で海鮮もお酒も好きです
会社なんて休んで行きましょう
そう意気投合してさ
なんだかんだ夜9時まで吞んだくれて
君はポロっと私、会社の社長なんです
そう言った
ビックリしたよ
冴えない平社員の僕が
女社長と出会って呑むなんて
君は今日は全部奢りますって
いやいや僕が奢るよって押し問答
結局その日ホテルへ
モテる方とは言えいきなりこんな勝ちパターン
あるとは思って無かったけれど
実は僕には数年つき合っている幼馴染がいる事は隠していた
一挙両得を狙ってもバレるはずないだろうと高を括って
まさか彼女が君と同じ会社で勤務してるとは…… ね
スマホの着信履歴を見られてこれウチの社長じゃん どういう事?
って問い詰められて大喧嘩
結局全てがバレて2人とも失った
君は最後にこう言った
結局私達は住む世界が違うのと
それから僕は出会った時の君が着ていた
白いワンピースとローレルクラウンを
君の服飾会社から買って狭い部屋に飾って
眺めている そんな日々
いつの間にか時は過ぎ去っていった
それからは女とはまったく縁が無くて
65歳で会社を定年退職した
君と笑い合っている写真と
抱き合った時の温もりを糧に1人 生きている
本当に二兎を追う者は一兎をも得ず
そんな言葉が今では胸に沁みる
少し、侘しい人生だけど
それでも…… これで良かったのかも知れないな
ロストクラウン 僕なんかにはお似合いさ




