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8話 炎剣vs炎の魔法使い

 ……記憶が蘇る。

 初めて死に直面したあの日のことを……


 いや、自分の力に限界を感じて逃げるしかできなかったあの日は違う。

 新しい武器に新しいスタイルで何度もダンジョンに潜り成長してきた。

 さらに今の俺はさらに成長できる可能性がある。


 自分にそう言い聞かせて恐怖を振り払う。


 襲われたという地点に辿り着くがそこには予想だにしない光景が広がっていた。


 モンスターは一体もおらず、別れたはずのメンバー達と知らない顔がいる。

 そして、彼らの足元にはFランクとEランクの冒険者の死体が転がっている。


「どういうことか説明をしろ!!」

 リーダーの怒号が飛ぶが彼らは平然としていて笑みを浮かべている。

 副リーダーを筆頭に彼らは明らかに敵対していることが見てとれる。

 しかし、そんなことがありえるのか!? 副リーダーだったこの男はギルド職員でもあるんだぞ。


 副リーダーだった男はリーダーの問いにゆっくりと答える。


「いやね、ちょっとお金に困ってまして、アイテムや装備なんかを恵んでもらおうかなと思っただけなんですよ。気付きませんでしたか、この依頼に来た方達の装備に?」


「まさか……」


 装備? なんのことを言っているのか分からないがリーダーは何かに気づいたようだ。


「そうなんですよ、ギルド職員の権限で実力もないくせに装備だけ立派な方を集めました」


「こんなことをしてただで済むと思っているのか?」


「面白いことを言いますね、死体は喋りませんよ。あなた方は不慮の事故でモンスターにやられたことにしますよ」


 冗談ではないことは足元に転がる死体が物語っている。

 これから冒険者同士の殺し合いが始まるのだ。


 こちらはリーダーに俺に光哉とEランク冒険者が2人。

 相手は元々パーティにいた3人とここで待っていたであろう3人が合流している。

 人数的に不利な5対6の構図となっている。 

 救いはこちらのリーダーがCランクということでこの中では最も実力があるはずだ。


「簡単にやられると思うなよ!!」

 リーダーが構えたのは巨大な戦斧、これを軽々と振り回し、道中の戦闘でも全てのモンスターを一撃で屠っている。


「作戦通りにはじめるぞ」

 副リーダーの掛け声で新たに合流した3人が詠唱を始めた。


「ハァァァァァァ、唸れウィンド・アックス」

 戦斧は呼吸をするように空気を吸い込み、唸り出した。


 相手までは距離があったがリーダー戦斧を上から下へ振り下ろすと、吸い込んだ空気が吐き出され風の刃となって飛んでいく。


 風の刃は地面から迫り上がった土の壁で阻まれた。詠唱をしていた1人の男の魔法が発動したようだ。

 続いて、土の槍がこちらに飛んでくる。

 リーダーはそれを戦斧で弾いたと同時に2体のロックゴーレムがリーダーに襲い掛かった。

 ロックゴーレムの攻撃を戦斧で弾き、避けているとリーダーは分断され、3人の魔法使いと相対している。



§



「お前、なかなかやるじゃないか。さっきも見てたが何故Gランクなのか不思議だな」


「ハァ、ハァ……」


『武器と戯れる者』のカウントはやっと折り返しといったところか……

 格上である副リーダーと1対1の状況でここまでやれてるのは単純に相手がこちらを舐めているからだろう。

 初めから全力なら既にやられている。


「助けを待っても無駄だぞ、リーダーのあいつは土系魔法に弱いからな、後の2人も助けに来ることは無理だろうな」


 この男の言う通りで対リーダーとして新たに合流した3人は土系魔法使いでリーダーは戦闘開始から苦戦を強いられている。

 ただでさえ苦手な相手の上に数でも不利な状況でここまで耐えれてることが凄い。


 他2人も苦戦を強いられていてこちらにはこれそうにもない。

 光哉は戦闘開始直後に副リーダーに腹部を思い切り蹴られ後ろへ吹き飛んで戦闘続行は不可能な状態だ。

 1人でなんとかするしかない、チャンスがあるとすれば相手の油断だけか……


 相手は炎の魔法を要所要所で使ってきている。

 今のところ使っているのは1種類、威力自体はないが攻撃範囲が広く避けたり防いでも熱で体力が奪われていく。

 中距離は炎の魔法で近接は短剣と片手盾で攻撃をいなしながらの持久戦の構え。


「そろそろ終わらせるか、助けを待って粘っていたようだが残念だったな」

 副リーダの体に一段と魔力が込められる。

 まずいな、カウントも溜まりきってない


「すっ……凄いな、皆月さん……でもあの時はもっと凄かったはず、徐々に動きは良くなっていっている」


 光哉は皆月が時間経過で徐々に強くなっていることに気づく。そして助けを待っているために粘っているのではなく、何らかしらの能力で時間経過が必要だとあたりをつける。


「終わりだ、『拡散する火炎』」


 今までで一番大きな炎が襲ってくるが、なんとか避けるも態勢を崩した上に左腕が熱で火傷を負ってしまう。

 痛みに膝をつくと副リーダーが目の前に迫っていた。


「3連突き!!」

 光哉は回復薬で最低限動けるようにして限界を超えた攻撃を放つも簡単に盾で弾かれてしまう。

 しかし、皆月が態勢を立て直すのには充分だった。


 光哉はさらに続けて攻撃を繰り出す。皆月も武器を替えながらそれに合わせる。

 2人の怒涛の攻撃でも一切傷を負わせることはできない。


「目障りなんだよ!!」

 炎は光哉を襲い吹き飛ばした。


「光哉!! 大丈夫か?」


「すみ……ません、後は……お願いしま……」


 気を失ったようだ。そばにいって無事かどうかを確認したいがそんな余裕はない。


「何の意味があったんだろうな、ほんのちょっとの時間、お前が生き延びただけだろ」


「充分すぎるほどの援護だったさ」


 Time:03:27 count:100


 一気に距離を詰める。


「拡散する炎!!」


 炎が向かってくるが気にせず前に進み、剣で受けると炎が体を覆い、土埃と煙が巻き上がる。


「バカが、まともに受けやがって、焼け死ね」


 土埃と煙を振り払い完全に油断している副リーダーへ斬りかかる。


「バカな!? あれを受けて平気なはずが……くっ、『炎纏』発動」


 完全にやれると思ったが剣は炎の鎧で弾かれた。

 距離を置いて仕切り直しといったところか、右手には炎で包まれた剣を握る。

 これは相手に燃やされたわけではない、炎剣の能力で燃えているのだ。

 これを握っている間は炎への耐性が高くなる。この炎剣はCランクで相手の炎魔法はほぼ効かなくなった。

 しかし、急がなければ武器と戯れる者が切れると炎剣に燃やされることになる。


「炎が使えるのが自分だけだと思うなよ」


「そうか、その炎の剣で耐性を上げたんだな、ランクも高そうじゃないか。しかし、お前の攻撃は俺の炎纏を突破できねぇだろ」


「その魔法、使いこなせてないんだろ」


 ランクの見合わない武器を使用すると戦力が上がるどころかマイナスになることすらある。

 炎剣はその使い手ごと燃やし、多大な犠牲を要求してくる。


 魔法も同じでランクに見合わない魔法は術者へ大きな負担を与える。

 炎纏は身体強化に火の魔力を足したものでその防御力も魔法の難易度も身体強化とは比にならない。

 

 副リーダーは炎纏を発動したのはいいが、その効力は一瞬で切れて体に火傷の跡が残っていた。

 明らかに使いこなせていないのが分かる。

 

「確かに、この魔法はまだ使いこなせていない。だがそれはそっちも同じことだろ、明らかにお前の扱える武器のランクを超えている。持ってるのも限界じゃないのか!? そのままじゃあ、焼け死ぬぞ」


「その前にお前を倒せばいいんだろ!!」

 副リーダーは俺が炎剣を無理して持っていて、もう剣は振れないと勘違いしているが、武器と戯れる者のお陰でノーリスクで炎剣を振るうことができる。

 ただし、制限時間はあるためのんびりとはしていられない。

 勘違いを利用して一気に畳み掛ける!!


 炎剣を強く握り、副リーダーへと一直線に走り出す。


「ハァァァァァ、燃えろ『炎剣』!!」

 剣に魔力を流すと刀身は赤く染まり、炎が剣を包む。


「フンッ、最後の悪あがきか」


 横から薙ぎ払うように剣を振ると、副リーダーは盾を構え、先程よりも強力な炎纏を発動した。


 お互いの剣と盾が交錯すると辺りを強い熱気が襲い盾は熱によって融解していく。

 すかさず副リーダーは剣で反撃をしてくるが、炎剣で受け止めると、剣も溶けて消えていった。

 それでも反撃の手が緩まることはなく、炎纏を発動したまま、拡散する炎を近距離で放ってくる。

 炎剣で防ぐも幾度かの炎と炎のぶつかり合いによって、さらに洞窟内ということもあり、辺りの温度は異常なまでに上昇していた。


 炎剣と拡散する炎がぶつかった瞬間、爆発を起こし炎の柱が上空へと高く巻き起こり、2人を包み込んだ。



§



 幾度かの衝撃と熱により、目を覚ました光哉は爆発の瞬間を目撃していた。

 そして激しい熱波で飛ばされそうになるのを地面に折れた槍を突き刺し耐えていた。

 炎の柱が徐々に低くなっていき、爆発の中の様子が見えるようになる。


 立っていたのは副リーダーの男で上半身の服は燃え尽き、皮膚も所々黒く焦げている。

 炎剣は地面に突き刺さっているがそこに皆月の姿はなかった。


「ハァハァ、ハハハ、ハッハッハーーー、消し炭になりやがったかぁ」


「そん……な……」


 光哉の目は絶望を映し、高笑いする副リーダーと目が合う。


「お前もすぐに燃やしてやるよ」


 隣の戦闘は未だに終わっていない。

 助けが来ることはないだろう。


 相手は皆月との戦闘でボロボロの上に魔力もかなり使用している。一矢報いることくらいはできるはずだと光哉は覚悟を決め折れた槍を両手に握る。

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