53話 黒騎士の軍勢
自分なんてまだまだだなと痛感させられる。そもそもがお情けで予選を勝ち上がった俺とは違ってここにいるのは実力で勝ち残ったものたちばかりだ。
閉じ込められた擬似ダンジョンからの脱出を邪魔しようする相手勢力の強者をものともせずに打ち破り外に出ることができた。
街は混乱の渦に陥っていて、脱出に気づいたギルド職員が大慌てで現状報告をしている。
「ギルドマスター、大変なんです!! 今、街の要所である東西南北の4か所とその中心にある冒険者ギルドが襲撃されて、妙な魔法陣が仕掛けられてます。その上、ダンジョンが反乱を起こしてもう何がなにやら……」
「分かった、皆さんお聞きのとおりなので、私は一度ギルドへ戻ります」
それぞれが混乱を収めるべく動き出す。
俺は一緒にギルドに向かうことにした。
ギルドにつくと襲撃の後は残るものの戦闘は既に終わっていた。
「マスター、ご無事でしたか。良かったです。現状は沈静に向かっていますが一連の首謀者は未だに出てきてないようです。それと気になる点があって、モンスターの氾濫を冒険者総出で抑えてる状態なんですが、それでもモンスターが漏れて街で暴れています。それで避難にあたっていたギルド職員達と連絡が取れなくなっています」
いつもは冷静沈着なエマも少し慌てた様子で報告をする。
「改めてチームを編成して対処に当たるぞ」
ギルドマスターはこんなときでも冷静だった。
ギルドに入り、俺はある人を探すが見つからない。
「エマさん、こんな時にすみません。光月さんを知りませんか?」
「実は連絡がつかなくなった避難誘導隊に参加していて、ここら付近で行動していたの分かるんですが、今はどうなってるか分からない状態です、すぐに応援部隊を派遣するのでお待ち下さい」
「ありがとうございます」
皆月はギルドを飛び出してエマの教えてくれた位置へ急いで向かう。
街の至る所で戦闘音が響いている。ただただ無事であることを祈る。
目的地点につくが誰もいない。
あたりを見回していると一際大きな戦闘音が近くで起こる。それを確認しに行くとギルド職員と冒険者がモンスターと戦闘をしていた。
その後方に光月の姿もあり一般人を守っていた。
「光月さん、無事だったんですね」
「皆月さんも無事そうで良かったです」
光月さんは無事とは言っているが全身がボロボロになっている。
武器と戯れる者を発動させて戦闘に加勢することにしたが、沸沸と怒りがこみ上げてくる。
相手は黒い鎧を纏ったモンスターが数体いる。武器も持っていて、剣や槍や斧など様々だがモンスター達はまるで冒険者のように連携して戦っている。
前線の戦闘を邪魔しないように青江松風で援護に務める。
この援護が気に障ったのかモンスターの一体がこちらをターゲットにして襲ってくる。
迫りくる槍を避けて、鳴雷で応戦する。
槍と槍が交錯する。
このモンスターは確かに強い。こんなレベルのモンスターに囲まれて連携されたら勝ち目などないだろう。
しかし、連携をしているのは相手だけでなくこちらもだ。前線で他のモンスターを押さえ込んでくれている人達と目が合う。そこには信頼が感じられた。
「おい、そいつを早くやってこっちに来てくれ、それまで他のやつはなんとかここで止めておく」
顔見知りのギルド職員も俺を頼ってくれる。
突いてきた相手の槍を鳴雷で円を描くように逸らして、そのままモンスターの胸を貫く。
一瞬動きが止まるが、胸に槍が刺されたまま襲ってこようとするが、電撃をお見舞いするとモンスターは崩れ去った。
すぐに前線に加勢に向かう。一体ずつ連携をして倒していき、最後の一体も地に伏せた。
「いやー、助かりましたよ」
顔見知りのギルド職員は腰をつけて安堵の表情を見せる。
「正直、ここまでできるとは思わんかったわ、ありがとう」
冒険者の一人が俺にお礼を投げかけると、他の戦闘していた人達もお礼をしてくる。
助からなかった者もいるような最悪の戦場にいても今の一瞬だけは危機を乗り越えたことを共感して少しだけ気が緩む。
後方では光月さんや避難していた人達も助かったという表情を見せている。
「まだここは危険なので避難所に向かいましょう」
「そうですね、行きますか」
腰掛けている知り合いのギルド職員に手を差し出し起こす。
次の瞬間、一気に重圧がかかる。
握っていた手の伸びる先にあるはずの知り合いの顔が二つに分かれ、黒い刃は下まで振り下ろされそのまま体も二つに分かれた。
体半分の重みが右手にかかる。
さらに刃は大きな黒い軌道を描いて360度回って振られた。俺は咄嗟にしゃがんだが、近くにいた立ったままの二人の首が地面に転がる。
さらに重圧を感じ、手を振り解き全力でその刃の持ち主から距離を取る。
そこには先ほどのモンスター達と同じような黒い鎧に黒い剣を持ったモンスター。しかし、少し違うところもあって他のモンスターに比べると線が細く、マントを羽織り、カブトの先から赤の毛の装飾が腰辺りまで降りている。
剣を地面に突き立てこちらを見る様はまるで騎士のような出で立ちをしていた。




