48話 ギルド襲撃
「燐、お前が当主だ。どうするかを決めろ」
燼は家族の前であえて当主という言葉を強調して燐に問いかけた。
「皆はここにいてよ、とりあえず俺が行ってくる」
今まで格下だと思っていた人間に急に上から命令されるのはプライド的にどうなんだろうか。
そんな思いもあって一人で行くことにした。ただでさえこの面倒な事態に仲間からの攻撃にも警戒しないといけないなど最悪としか言いようがないからだ。それほどに実の家族を信用していない。
いずれは和解できればいいとは思うが、今は時期尚早だろうな。
「にいに、気をつけてね」
「ありがとう、行ってくるよ」
数少ない味方である妹に見送られ怪しい魔力の感じられる場所へ向かう。
当初は一人で行くつもりだったが、隼斗と新しく俺のお付きになった灰原アヤメがついてくる。
「これは酷いですね」
アヤメは倒壊するビルを見てそう呟く。
「まだまだ酷くなるだろうな。それに魔法陣を完成させればこんなもんじゃ済まない、急ごう」
目的地に着くと一人の女を先頭に数人が魔法陣を守っていた。
「これはこれは、まさかあの噂が本当だとはね、不知火のお坊ちゃんが生きてるなんて、それにしても何しにきたのかな」
燐に向けられる視線は汚物を見るような冷ややなものだった。
「主人への侮辱は許さないぞ」
「……許さないぞ」
アヤメが前に出る、それに遅れて隼斗も続く。
「私は嫌いなんだよ、聞いたよ、あんた逃げ出したってなぁ、恵まれた家庭に生まれたあんたには分かんないだろうね、泥水を啜るように生きるしかない私たちを」
女は過去を思い出す。それまでは美貌につられた男どもが媚び諂ってきていた。それがいつからか魔法適性がないだけでヒエラルキーの最下層へと転げ落ちていた。
媚び諂ってきてた男に逆に媚を売らなければいかずセクハラ紛いの行為にも我慢をするしかなかった。力が全ての弱肉強食の世界。法律はまともに機能せず、気づけば魔導十家などというものが先陣を切ってそれを加速させる。
絶望に打ちひしがれている時に声をかけられた。
「こんな世界は間違っている。共に戦おう」
組織に誘われて戦闘技術を学んだ。そんなものとは縁のなかった私に取って訓練は辛いものだったが、復讐を思えば耐えられた。
少しづつ力を手に入れて自分を見下してきた連中をモルモットにして研究した。そいつらを軒並み殺し尽くした頃には幹部の席が用意されていた。
新しい力も手に入れた。
燐は魔法適性のことをいっているのだろうとすぐに悟る。
まぁ、確かに可哀想だとは思うが手心を加えるつもりはない。
魔法適性がなくても真っ当に生きている人間を知っている。我慢して我慢して我慢して結果に繋げる人間を知っている。
§
冒険者ギルドは特に酷い攻撃を受けている最中だった。何十人ものテロリストと冒険者が交戦を続けている。ギルドの建物だけでなく、その周りも酷い有様だ。
「光哉、やばいよ」
「くそっ、あいつら戦い慣れてやがる」
光哉をリーダーとしたパーティも冒険者ギルドの防衛をしていた。
ダンジョンに潜って数多のモンスターを倒し、経験を積んできたがそれらの常識は通用しない。
本来、冒険者が相手にするのはモンスターで主となる戦場はダンジョンの中だ。
だが今は街中で相手は狡猾な人間。しかも対人戦に特化している。
中々、近づけない。敵ながら見事な連携をもって弾幕を張って冒険者を好きなようにさせていない。
何よりも地の利を活かしてるのは相手だ。建物をうまく利用して常に上から攻撃を仕掛けてくる。
そのせいでこちらの攻撃は届きづらい。
隙を縫って近づいて槍での高速三連突きも簡単に躱されてしまう。
そもそもが相手部隊は銃を主力武器に置いて、中距離を維持しているが時間稼ぎが見え見えだ。
一人一人が身体能力が高く接近戦が苦手には見えない。
一人が急に接近戦を挑んできたが槍で薙ぎ払う。
……しまった!?
大量の手榴弾が防衛していた陣地にばら撒かれる。
爆発は爆発を呼び冒険者ギルドは半壊、冒険者も吹き飛ばされ地面に這いつくばっている。
目がチカチカと照準が合わない。耳鳴りが酷くて音も拾えない。
感覚を取り戻した時にはもう遅い。制圧され銃を突きつけられていた。




