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46話 女スパイ

「社長、すぐに避難してください。街中でパニックが起こっています」

 アマンバードカンパニー本社社長室に慌てて入ってきたのは最近入社したばかりの新人秘書の女性だ。

「僕は大丈夫だ。それよりも社員の安全が大事だ。マニュアル通りに避難開始してシェルターへ向かってくれ。アマイ、お前が指揮をとって6人で護衛と街の状況の把握を並行して頼む」

「了解です!!」

「リーナ、あそこに突如出現した擬似ダンジョンへ行ってくれ、できるなら回収で頼む」

 天鳥が指差すところには高くそびえ立つ塔があった。もちろん最初からこの街にあったわけではない、あの塔が出現して一連の問題が起こっている。


 社員達がシェルターへ向かうのを確認して天鳥は別行動をする。

「セツラはいいんだが、君はみんなと一緒にシェルターへ行った方がいい。今ならまだ間に合う」

「いえ、社長にお供させてください、多少の心得はありますので」

 新人秘書は張り切って返事をする。


 天鳥が向かっているのは魔力が高まっている場所の一つ。何らかしらの狙いがあると思われる。

 新人秘書のユーリとセツラの3人で道を走っていると突如現れた男が天鳥の顔を目掛けて蹴りを放つ。セツラが間に入り腕でガードするが数十メートル飛ばされると、蹴りを放った男はこちらをチラッと見てその場から跳躍してセツラを追いかけていった。

 天鳥はそれを見て目的地へ歩みを進める。

「社長、セツラさんはいいんですか?」

「あいつなら問題ない、先を急ごう」


 ユーリはこの状況が好都合だと考えていた。



§



 それは入念に計画されていた大規模テロ攻撃。

「ユーリ、お前に重要な任務を与える」

「葉月様、何なりと御命じください」

「アマンバードに潜入してもらう。あそこの戦力は今回の計画の邪魔になる、社長の天鳥を殺せ」

「……仰せのままに」

 少しの無言はどう潜入するかを考えていた。アマンバードといえば一大企業で並大抵のことでは潜入など許されるはずもない。

「そう心配するな、アス渡してやってくれ」

「どうぞこちらです」

 偽造パスポートに偽の経歴、そしてアマンバードの社長秘書としてのIDまで準備されていた。

「すでにアスが潜入しているがお前には天鳥からの信頼を得てより近いところにいてもらう。そして計画の日に殺せばいいだけだ」

「分かりました」

 ユーリは1年ほど前からこの組織に参加して活動を行なっているが改めて『ジュゼルバル』という組織の凄さを痛感していた。魔法適性がないメンバーで構成されていて、魔法至上主義の国を、世界を壊すのを目的にしている。メンバーはどこにでもいると言っても過言ではない。今回のアマンバードをはじめとし、冒険者ギルドや自衛隊、さらには政治家の中にもメンバーはいる。


 葉月様に命じられてから3ヶ月、社長の天鳥に近づき信頼を得ると同時に情報収集も抜かりなく行なっている。

 天鳥の能力は使役系の能力で、それ自体は多少珍しい程度のものだ。人それぞれ使役できる種類があって下級モンスターしか使役できないやスケルトン系だけしかダメとか、羽が生えていれば使役できるなんて例もある。まぁいろいろと制約がある訳だが天鳥の使役対象は恐らく魔人限定と推測される。

 魔人はモンスターの中でも知能が高く人語を理解した高位の存在のことを指す。

 つまり天鳥を護衛する数人はかなりの力がある。

 そして使役系は本人自体はそれほど強くないのが一般的だ。作戦成功の鍵は戦力を分断できるかどうかにかかっている。


 そして今に至って作戦は成功したと言えるだろう。天鳥の性格を考慮して戦力を分断するように仕向け、天鳥は一人になっている。天鳥からすれば私が護衛にいるので安心していることだろう。

 今の位置を仲間に知らせる。


「おーっと、ここは行き止まりだぜ」

 一人の男が道を塞ぐ。この男は仲間の一人で戦闘能力は組織の中でも上位に位置する。


「ユーリ任せた」

 もちろん社長は私に頼む。

「はい、任せてください」

「っ!? 何をする?」


 ちっ、天鳥の首元を狙った隠しナイフは避けられた。運の良い奴だ。

「すみません、社長、死んでください」


 2人で社長を殺せばそれで任務達成。組織での評価も上がるはずだ。

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