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45話 自衛隊の誇り

「どうなってる、外に出られないのか」

「通信もできないぞ」

「調べてみないとなんともだが、ダンジョンって感じだな」

 不測の事態にもかかわらず中に閉じ込められた人間達は至って冷静であった。

 ここにいるのは幾度の困難を乗り越えてきた冒険者やギルド関係者に軍関係者だったからだ。

 そしてすぐに答えに辿りつき、ギルドマスターの口から語られる。

「おそらくこれは擬似ダンジョンの中だと思われる。俺たちをここに閉じ込めたのには何か理由があるはずだ、すぐに出なければいけない」

「出口を探すか無理やりこじ開けるかですが後者は厳しそうですね」

 副ギルドマスターは外界とを隔てる壁を殴って答える。壁には傷一つついていなかった。

「出口は上だろうな、とりあえず登っていくか」

 全員がそこにある一つの上へと続く階段を見つめる。ダンジョンにもルールがあって、出入口が必ずあるというのが最もポピュラーなルールの一つだ。

 もしその出入口がなんらかの理由で使えなくなったのならば別の場所に作られる。

 よってここは塔型の擬似ダンジョンで出口が上にあると考えられた。



§



 街ではダンジョンが氾濫したと情報が流れて人々はパニックに陥り避難所が溢れかえっていた。

 氾濫の対処をしようにも高ランクモンスターが相手ではそこらにいる冒険者など相手にもならずそれぞれができる最善に努め、主に救助と避難の誘導を行っていた。

 そして高ランク冒険者が氾濫の対応に向かう、簡易的だがそれだけで十分。高ランク冒険者は一人で街を壊滅させるだけの力を持っている。細かい作戦など必要ない。あるのは敵の排除だけ。


 自衛隊本部でも多くの部隊が出動して残っているのは僅かな兵士だけだった。

 そんな中、襲撃を受けていた。攻撃を仕掛けてきたのは10人程度の人間。


「基地にある防衛システムを作動させろ」

 指揮をする若い男は緊張していた。男は現場に出ることはなく主にシステム関連の指揮をしている。

 軍は未曾有の危機に対して兵を余らせている余裕はなかった。そのため急遽基地の臨時総指揮を命じられたが、本来は簡単な任務で街の被害が縮小するのを待っていればいいだけだった。それがなぜか基地に脅威が現れ、初の戦闘指揮を執ることになってしまったのだ。

 男の掛け声で外部から基地の外にいる敵対勢力に設置されている機関銃が照準を合わせ四方から一斉射撃を行う。

 巻き上げられた土煙が風で流れるとそこには無傷の姿が確認され、設置された機関銃は全て破壊された。

 さらに基地に待機していた兵士たちが投入されるが傷一つつけることができない。

 男はみるみると兵士の数が減っていくのをモニター越しで見ていることしかできなかった。


「くそっ、装備を準備してくれ、俺も出る」

「何を言ってるんですか、臨時隊長殿が戦場に出れば誰が指揮を執るというんですか?」

「どうせここにいても何もできることはない」

「ではお供いたします!!」

 準備された装備はカードが数枚。魔力を込めると予め設定された武器が魔力によって形成される。

 今の自衛隊のほとんどの兵士がこの武器カードを使って戦闘している。


 男は戦場に赴くとそこには敵勢力に蹂躙された兵士たちが横たわっていた。

「ガハハハ、なんだこれは、弱すぎて相手にならんぞ、お前達もどう考えても弱いだろ、魔力をほとんど感じんぞ」

 敵勢力の指揮をとっていると思われる2メートル以上の大男が高笑いをしてこちらを見下している。


「うわぁぁぁぁぁーーー」

 男はカードに魔力を込めてマシンガンを形成して大男に向けて引き金を引く。それに続け後ろにいた数人もマシンガンの引き金を引いた。

 無情にも当たったはずの銃弾は全て大男の魔力に阻まれて傷をつけることができない。

 大男の一撃が腹部に衝撃を与える。なんとか意識を保つことはできているが立つことができない。


「やはりこの国は間違っているのだ、お前達も不満に思ったことあるだろう。この魔法絶対主義の国に、魔法が使えないというだけで迫害されるこの現実によぉ、お前もこっちに来いよ」


 突然の勧誘。

 敵勢力の装備はこちらと同じ武器カードだった。攻撃方法も武器カードを使ってはいるがマシンガンや手榴弾による旧時代のものだ。そして発言内容からもどういったテロ組織か想像がつく。

 この武器カードは魔法適性がない人間でも戦闘を行えるようにしてくれる。自衛隊のほとんどの人間がこれに頼っているのが現状だ。すなわち自衛隊は戦闘能力が高くない。しかし、そんな現実を日々の努力と隊員同士の連携によって高めて高めて国のために尽くしているのが自衛隊だ。

 これまでも確かに随分とバカにされてはきたが、自衛隊に入り自分以外の人間の努力や葛藤を見てきている。この男の言い分も分からないわけではない。だが……


「俺は死んでも一生、自衛隊員だ!!」

「そうか、残念だ、じゃあ死ね」


「あぁーあぁ、こんなに荒らしてくれて……」

 戦場を白髪の老人が闊歩してくる。


「なんだ、ジジィ、迷子にでもなったか」

「閣下、危険です逃げてください」

 その老人は自衛隊の中でも魔法に才能があるエリート集団の魔導部隊の頂点に立つ男、魔導部隊総隊長その人だった。

 伝説とまで言われてはいるがしかし、今は仕事のほとんどを息子に任せて隠居していたはず。

 戦闘などできるはずもない。ましてや相手は危険なテロ組織だ。

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