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40話 長曽根工房と黒き狩人

 奇妙な音は何かが切れる音を示していた。

 しかし、俺の首に掛かった死を運んでくる凶悪な糸が切れた音だ。

『魔鉱振動ナイフ』は流した魔力で刃を高速振動させ切れ味を大幅に上げる。

 長曽根工房では銃をメインに扱っているがそれだけではない。

 このナイフも有名な作品だ。長曽根工房の特徴は量産。昨今の工房は各々の特徴に合わせたオーダーメイドの作品に力を入れるが長曽根工房では量産した武器を作り置きして販売している。

 そしてそれらの武器は常にバージョンアップされている。


「ちっ、作り置きの武器のくせにっ」

「誰でも使える非常にいい武器ですよ」

 宣伝も忘れてはいけない。まぁ、いい作品なことは変わりないんだが、武器なんて相手にバレないように偽装するのが基本なのに派手に使えとはなかなか面倒な依頼を長曽根工房の女社長から受けてしまった。


 再び二丁拳銃に持ち替えて弾幕を張りながら、風間を中心に動き続ける。

 風間は何食わぬ顔で防いでいるが、さすがは神童と呼ぶべきか。


「めんどくさいですね、無駄って分からないんですか!!」

 各指と連動した10本の糸が全てこちらを襲ってくる。

『超遠距離狙撃魔弾銃-桜ノ陸』を取り出して狙いを風間につける。

 この狙撃銃の悪いところがあるとすれば金がかかる。それは本体の値段ではなく弾薬が高いのだ。一つ一つの弾薬に魔法陣が刻まれていて圧倒的な威力を実現しているが使い捨てである。今まで使っていたのは威力を上げるためだけの弾薬で今から撃つものはその3倍以上も値段がはる。


 この距離でスコープはいらない、目視して撃ち放つ。

 放たれた銃弾は高速回転してカマイタチを撒き散らしながら飛んでいく。

 ゆく手を阻む10本の糸もその銃弾の前では無意味で全て引きされていく。

 風間は驚きながらも風の障壁を展開して銃弾の軌道をずらす。

 銃弾は風間の左肩から先を抉り取っていった。


「くそっ、くそっ、くそっ」

「まさか、烈風弾を使って腕一本とは提供してもらってなかったら大赤字ですよ」

 さらに照準を付けて撃ち放つ。

 風間は早めに避けるが銃弾は途中で大爆発を起こし風間を飲み込んだ。

 高く上がる黒煙の中から全身にダメージを負った風間が飛び出すがその心臓を貫いたのは黒き閃光だった。

「はぁ、これで依頼も達成ですね。これ以上手の内を晒すのは流石にやめときましょうか。しかし黒閃弾まで使わされるとは……」

 強制転移していく風間を見て黒き狩人も舞台を降りた。


「さぁ、誰がこんな展開を予想したでしょうか、風間選手が黒き狩人に敗れて、勝利した黒き狩人もリタイアしてしまいました」

「あの選手は依頼を受けて武闘会に参加していたようなのでその目的である宣伝を終えてリタイアしたんでしょうね」

「ということです残ったのは皆月選手です」


 魔導十家の者に土をつけたと会場でも盛り上がりを見せ、長曽根工房の名を知らぬものはいないだろうというほどに宣伝は成功していた。



§



「黒木さんお疲れ様です!! 完璧でしたよ、まさか風間の坊ちゃんが出てるとは思わなかったけどこれでウチも明日からがっぽがぽですよ」

 会場のVIPルームで高笑いをする女社長の横に先ほどまで対戦をしていた黒き狩人こと黒木伊織(くろきいおり)はコーヒーをすすっていた。

「嬢ちゃん、目が金マークになってるぞ……まっ運が良くて勝てたってだけだよ」

「何を言ってるんですか隠し球も残してたし弾薬の節約してたくらい余裕があったじゃないですか、それに黒木さん固有のあれも使ってないし」

「こんなとこで使うわけないでしょ、使ったら殺されるよ」

「そっちの裏のルールは怖いですね、とりあえずお疲れ様でした。提供した弾薬もそのまま使ってもらって構いませんし、報酬に色もつけときますね」

「それはそれは毎度どうもありがとうございます」


 仮想空間で受けた傷は肉体だけでなく身につけている武器や防具も戦闘後は修復される。

 しかし使った魔力は戻らない。弾丸に施された魔力で書かれた刻印は撃つと発動する仕組みになっている。そしてそれは使い捨てで戦闘終了後に銃弾は戻ってくるが、その弾に書かれていた刻印は消滅していた。



§



 街が武闘会でお祭り騒ぎ一色の中、不知火家本邸では熾烈な争いが起きていた。

 不知火家はその系列も含めて今3つの派閥に分かれている。

 帰還した不知火燐を当主として迎え入れる一派。これは当然だろう。長年の歴史で炎狐の加護を受けたものが当主になる決まりなのだからその資格を持つ不知火燐が当主になるのは最も理にかなっている。そして現当主で燐の祖父でもある不知火炎樹もこれを認めている。

 もう一つの派閥が燐の2人の兄のどちらかを当主にしようとする一派。

 2人の兄だけでは到底及ばない派閥だが兄弟たちの母がこれに力を貸しているため3つの派閥の中で最も人数が多く力がある。

 最後の一つは中立派。特に系列の家系に多く本家のことは本家で片付けてくれというのが本音である。

 兄たちと母は話し合いなどする気はさらさらなく、実力行使で不知火燐の排除に乗り出そうとしていた。

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