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39話 失った左腕

「井口さん、Eブロックは熱い展開を見せるかと思いましたが一転静かになりましたね、開始してすぐに皆月選手と後藤選手を取り囲むようにして攻撃が一斉に放たれたんですが両選手はそれを見事に防ぎました、そして皆月選手とあの風間選手が対面して戦闘かと思われたところの不意をついた攻撃が2回ありましたよね」

「そうですね、1回目は田端選手が風間選手を背後から斬りかかったんですが呆気なく瞬殺。そして2回目は黒の狩人による遠距離狙撃が風間選手を襲いましたがこれも難なく防ぎました。そしてその隙に皆月選手は姿を消しましたね」

「魔導十家、風間の神童と呼ばれる風間選手が武闘会に出ているのも驚きましたが黒の狩人がでてるのにも驚きを隠せません。少し静かになったとはいえまだまだ目が離せません」


 激しい戦闘から一転、各々が姿を消して機会を伺う中、時間経過によりフィールドが縮小する。

 残っているのは4人だけだった。

 風間は黒の狩人へと接近し、皆月は後藤と対面していた。


「後藤さん、よろしくお願いしますね」

「片腕だからって遠慮はいらないからな」

 皆月はノーモーションで『青江松風』で短刀を撃つ。

 後藤はその場から動くことなく全て弾いて、距離を詰めスキルで作った左腕で殴りかかる。

 その腕は大きく肥大し人よりも大きくなった腕は巨人の手のようだった。

 振り下ろされた拳は大地を砕く。ジャンプして後方へ避けた皆月を拳が追撃する。

 空中で捉えられたが『涼暮』でガードして数メートル飛ばされる。

 それだけでその巨人の手の威力が窺える。

 まさに自分の手足のように使いこなすそれは皆月にとって厄介ではあったがやりようがないわけではない。

巨人の手のラッシュを『黒紅』を握って全て避ける。『身体凶化』で速度を上げて後藤へ近づき斬りかかろうとすると、避けたはずの巨人の手が消えて、目の前に急に現れる。

 間一髪でそれを躱す。

 巨人の手を一度消して、再び出すことで攻撃の隙をなくしていた。


「なかなか無茶なことしますね」

 いくらスキルとはいえあの質量を出したり消したりするのは負担がでかい。

「君の方こそその体を覆う黒い魔力は負担がデカそうだな」


 両者無茶を押し通して攻撃と防御を成立させている。

 だがその均衡は徐々に崩れていく。後藤の方が負担が大きかった。

 疲労で巨人の手は消え膝をつく後藤をみてチャンスだと思った皆月は黒紅で斬りかかる。

 下を向いたままの後藤だったが渾身の一撃。今までで最も巨大な手は5メートル以上もあり、さらに速い攻撃だった。

 完全に皆月を捉えてその衝撃は地面を大きく抉る。

 だが数メートル先まで地面を抉ったのに皆月は飛ばされてはいなかった。


『涼暮』の能力は空間固定だ。しかしそれはその場で全ての力を受け止めるということで強すぎる攻撃は本体である盾と使用者に大きな衝撃を与える。

 だが後藤の最大の一撃の衝撃は皆月の後方へ抜けている。

 これが新たな技『涼暮-涼陰流し(りょういんながし)』。

 衝撃を後ろへ流すことによってその場で攻撃を受けつつも盾と使用者への負担が軽減される。

 渾身の一撃を見事に受け流された後藤に為す術はなく皆月の一閃により倒れた。



§



 こりゃあ、嬢ちゃんに安請け合いしちまったかな。

 遠距離から狙撃しているがそれらを防ぎながら高速で近づいてくる少年の影。


「まさかあなたほどの人が参加してるとは思わなかったですよ。お陰で少しは楽しめそうです」

「ロートル相手にやる気出されても困るなぁ、こっちは楽して稼ぎたいだけなのになっ!!」


『超遠距離狙撃魔弾銃-桜ノ陸』をアイテムバックにしまい、取り出したのは二丁の拳銃『自動吸収型魔弾銃-SAKURA04』、引き金を引き続ける限り弾幕の嵐を作り出す。

 弾という概念がなく魔力を吸って魔弾を形成しそれを放つこの拳銃は弾切れのない限り使用者の魔力を消費し続ける。

 どれだけ撃っても届かない、全てが風の障壁と糸で弾かれる。


「なんだ、楽しめると思ったのにとんだ期待外れですよ、この程度なんですね」

「油断してると痛い目に遭うぞ」

「この実力差で何ができるというんですか」


 一本の糸が黒の狩人の首元にかかる。

 風間は鍵盤を弾くように中指上から下へ下げた。

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