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38話 風使いと傭兵

 後藤さんと背を合わせる。

 相変わらず鍛えられた肉体は衰えてはいない。しかし、隻腕となった腕に目がいってしまう。


 本来は戦わなければいけないとこだが、今この状況下ではこれがベストな選択なのだろう。

 いくつかの隆起した崖の後ろに冒険者がいることは分かっている。

 俺たち2人は囲まれているのだ。相手が何人かは定かではないが3人以上は確実にいる。


 開けた平地に吹く風が草木を揺らす。張り詰めた空気に頬を汗が伝い、徐々に緊張感が高まっていっているのが分かる。

 少し離れた岩場の後ろから魔法使いが姿を現して魔法を展開する。

 その魔法使いの元に空気が集まり圧縮された空気は風の斬撃となってこちらへ放たれた。

 それと同時に隠れていた他の冒険者も姿を現して一斉に攻撃してくる。

 俺は『涼暮』で身を守る。

 後藤さんはた突っ立っているように見えたが近づく攻撃は全て直撃する前に弾かれていく。

 よく見ると半透明の巨大な腕が後藤さんを守っている。


 これが後藤さんの得た能力なのだと悟った。

 冒険者は命がけでダンジョンに潜る。命はあったとしても大きな怪我を負うことは珍しくない。

 そんな中、稀にではあるがその怪我がきっかけで能力に目覚める冒険者がいる。

 その能力は怪我を補うようなものであることが多く、失明したなら周りを把握する能力能力、足を失えば移動に関する能力、そして後藤さんの失った片腕を補うのは能力で作られた新たな腕といわけだ。

 追撃で飛んでくる風の刃を避けながら魔法使いの元へ走っていく。

 後藤さんは逆方向の魔法使いへと走っていく。


 風の刃その一つ一つが一撃で命を刈り取るのに相応しい威力をしている。

 それらを躱して風の魔法使いに近づくがそこにいたのは幼ない、少女とも間違えそうな少年がいて、少年は余裕の表情を見せていた。

 それでも油断はしない。この武闘会に出てる時点で普通ではないことは分かっている。

 しかし、あまりにも隙だらけに見えるその佇まいに『鳴雷』の高速の刺突を決めようと動こうとした時だった。

 風使いの後ろから刀を持った男が飛びかかって斬り伏せようとしていたが、風使いは振り向きもしない。飛びかかった男は空中で急に動きが止まり、風使いはこちらを見ながら指を上から下へ少しだけ動かす。

 その瞬間、男は刀ごと切り刻まれて肉塊と化した。

 斬りかかった男のいた空中に血の線が浮き出る。何かを伝うように血が線を描いていく。

 よく見ると糸が張り巡らされている。そしてその糸は俺の周りにも張られていてあのまま突撃していたら肉塊になっていたのは俺だっただろう。

 風使いは空中の鍵盤を叩くように指を細かく動かすと糸が大きくうねり血を飛び散らせる。

 そしてそのまま地面を抉りながら糸がこちらへと向かってくる。

 かなり集中して目を凝らさないと認識できないせいで対処が遅れる。

『鳴雷』で糸を切ろうと振り払うも鋼鉄を斬りつけたような硬い感触。

 ヤバイと思い、すぐに距離をとるが数本の糸が体に触れる。ギリギリで肉塊にはならずに済んだが左腕と右足に大きな傷を負う。

 ダンジョンで出会ったら真っ先に逃げなければいけない格上の相手、戦うまで相手の力が分からなかったのがさらに格上だと悟らせる。

 逃げるにもそれなりの実力は必要で風使いがそんなこと許してはくれないだろう。

 玉砕覚悟で挑んだ方がまだ可能性があるかも知れない。

 幸いにもここは仮想空間で実際に死ぬということはない。体に魔力を流し飛び込む気持ちを作る。

 しかし、俺が肉塊になることはなかった。


 飛び込もうと思っていたら、風使いが急に横を向いて指を動かす。

 俺には何が起きているか分からないが風使いは遠くの崖を見て舌打ちを鳴らす。

 俺はその隙をついて風使いから距離を離した。



§



 しがない傭兵稼業の俺がこんな武闘会に参加できるとは思わなかったな。

 といっても出たくはなかったが依頼とあっちゃあやるしかない。

 冒険者ギルドに登録してはいるが冒険者かといわれるとそうではない。

 俺はダンジョンにもいかないし、モンスターを相手にすることも少ない。

 じゃあ傭兵とは何かって言われると簡単に言えば何でも屋ってやつで、金さえ貰えれば大抵のことはやる、要人警護から護送に果ては殺しまで請け負う。

 その多くが対人間ってことで表には滅多に出ずに日陰を歩く。

 今回の依頼は武闘会に出てとある会社の宣伝をすること。

 その会社は武器を扱ってるが主な商品は銃だ。商品を使って武闘会で有名な奴を倒せばそれで依頼達成。


『超遠距離狙撃魔弾銃-桜ノ陸』はその名の通り、相手の認識外の超遠距離から魔弾を撃ち放つ。

 この最新作のスナイパーライフルは今まで愛用していた旧作よりも性能は格段に上がっているにも関わらず防がれた上に狙撃場所までバレるとは、風間の神童の名は伊達じゃないということか。


 一旦は諦めてもう少し場が整ってからにしよう。

 何人か狩って数を減らすか、後は流れでなんとかなるだろ。

 3発撃った。何が起きたとも分からないままに3人の冒険者は地面に倒れる。

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