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20話 常闇の人狼

 ゴブリンジェネラルとの戦闘で『武器と戯れる者』に頼っていると気付かされた俺は短刀一つである転移型ダンジョンのゲートをくぐっていた。

 転移型ダンジョン『アルタフ・ラタ』の中では日が昇ることはなく、月が欠けることもない。


 月明かりに照らされ草原を進むとスケルトンの群れと遭遇した。下級ダンジョンのスケルトンとは違い骨太で大きく武装をしていて、まるで別物のモンスターのようだ。

 大剣を持っていたり、戦斧を振り回すもの、大楯を構えて動かないものもいるがその全ての武装がスケルトンの体と同じく骨で構成されている。

 大きくジャンプしたスケルトンが大剣を振り下ろしてくる。


 体に魔力を張り巡らせ『身体強化』を発動、大剣を躱し短刀で首を狙おうとするが振り下ろされた大剣が薙ぎ払いでこちらの胴に迫る。

 距離を取って一呼吸を入れる。いつもなら『松風』で短刀を撃っているところだが、今回はそうはいかない。

 スケルトンの骨の体はもろく、力が弱いと思われがちだがそれは下級ダンジョンのスケルトンだけで、ここにいるようなスケルトンは多くの魔力を骨に流しているため、骨から禍々しいオーラを放ち骨は硬く身体能力も高い。

 さらに厄介な特性もあるが、基本的に遠距離攻撃はないと考えていい。


 続いて大剣に加えて戦斧までもが襲いかかってきた、どちらの攻撃も短刀で受け止めるのは厳しいだろう。躱しざまに戦斧を振り回すスケルトンの手首を切り落とす。

 そのスケルトンは戦斧を置き、落ちた片手を拾いそれを繋ぎ合わせると何事もなかったかのように修復した。


 これがスケルトンの厄介な特性で魔力が尽きるまで傷が回復する。

 攻撃を避けては少しずつスケルトンの体を削っていく、回復されようともひたすらに攻撃を続ける。

 最初に大剣を持ったスケルトンが音を立てて崩れ落ちた。続いて戦斧を持ったスケルトン、そして大楯を構えるスケルトンと処理をした。


 スケルトンを倒して歩みを進めていると突如、空中に浮かぶカボチャが現れ、カボチャには目と口の穴が空き、中から青い炎が見えている。『ジャック・オ・ランタン』だ。

 攻撃方法は青い炎だったが潜り込んでカボチャ頭を叩き斬ると簡単に倒せた。

 他にも首なし騎士の『デュラハン』に包帯ぐるぐる巻きの『ミイラ』など様々なモンスターが現れたが片っ端から倒して一旦休憩を入れる。


 一応気をつけていたつもりだが、残念ながら短刀の刃こぼれがひどい。

 何十匹とモンスターを倒したのだから当然といえば当然の結果でこういうところも武器に頼っていたのが分かる。

『武器契約』をしている持ち手から刃まで漆黒に覆われている短刀『黒紅』、深緑を基調にしている弓『松風』、そして新たに契約した大楯『涼暮』の3つの武器は収納している間に傷ついた箇所が自己修復する。

 それに比べて戦闘でもよく使用している炎剣はなかなかに傷ついている。


 思えばゴブリンリーダーに殺されかけてから『黒紅』と炎剣にはお世話になっている。

 あの頃の俺では想像できないほどに成長したな。

 今までの戦闘を思い返し、しばしの休息を終え再びダンジョンの奥へ進む。


 さらに多くのモンスターを倒して進むと、遠くに崖が見えた。

 頂上では満月を背に人狼が雄叫びをあげている。

 雄叫びが止み人狼と目があったような気がした。いや、気のせいではなく合ったのだろう。

 明確な殺意が伝わってくると同時に人狼は崖から飛び降りこちらへ異常な速度で向かってくる。


 短刀を片手に人狼を待ち構えるが、距離が近づくともう一段階速度が上がり目の前に振り上げられた拳が襲ってくる。

 攻撃を防いだ短刀は粉砕され残すは自分の身一つ。

 正直言えば、能力で収納している武器はあるし使おうと思えば使える。ただしそれをしてしまうと鍛えるためにきた意味がない。


 人狼との無手による近接格闘が開始された。もともと、俺は武器も魔法も使えなかったために、近接格闘の訓練はかなり積んでいる。

 人狼の拳を腕で受け止め人狼の顔に蹴りを入れるが少しのけ反った程度でダメージというダメージは見られない。

 拳に足に人狼とぶつけ合う、お互いの体に徐々に傷が増えていく。人狼の右手に力が入り心臓めがけてくる拳を両手をクロスさせ受け止める。

 すぐに人狼は後方へジャンプし5メートルほど距離を取ると大きな息を吸い込みこちらめがけて吐き出した。

 口から属性の付与されていない純粋な魔力の塊が放たれた。

 何とか避けるが後ろの地形が吹き飛んだ。


 連発はできないらしく、再び殴り合いが始まる。

 人狼の攻撃が緩くなり重心が後ろへかかっている。

 人狼は後方へジャンプし息を吸い込むが挙動からジャンプするのは読めていた、距離を詰め魔力弾を吐き出そうとする口を下から殴ると暴発したのか、人狼の顔が爆発した。


 フラフラになっているのを確認して一気に攻め込む。

 それでも防がれていたが徐々に均衡が崩れてこちらの攻撃が人狼の芯を捉え始める。

 大振りの殴りをジャンプで避けてそのまま人狼の首に手をかけ、回転しながら背後に回り首をあらぬ方向へと全力で捻る。



§



 朝日が目に染みる。

 ダンジョン内が常に夜で時間感覚がおかしくなっていたようで、どうやら日を跨ぎダンジョンでモンスターを狩り続けていたみたいだ。

 人狼を倒した後の帰路でもモンスターを素手で倒してきた。

 なかなかいい経験が得られたと思う。そして身体能力の向上が著しい気もする。

 まぁ、どちらかというと急に上がった身体能力を上手く使いこなせてきたような感覚か。


 家に帰り、仮眠をとって鍛治工房『青江』に向かおう。

 一度ダンジョンに潜った程度で親方に認めてもらえるとは思ってないが、一応の報告はしておく。

 それに、まだまだ力が使いこなせてないので相談もしてみたい。

 親方はなんせSランクの鍛治職人だから冒険者との繋がりも深く何かいい修行方法など知っているかもしれない。


 とりあえず今は眠ろう。

 緊張が解けたのか急に眠気が襲ってきた。



§



 月明かりが照らす湖畔の横で柳が風に揺られる。

 柳の木の下で男と女が言い争っている。

 夢なのか……

 俯瞰的な視覚で距離も少しあるせいか会話も所々しか聞こえないし、顔もしっかりと見えない。


 だが夢にしては妙にリアルな気はする。


「きょう……つきがきれいだ」

「そうですね……にいさ……」

「おま……めいわく……る」

「どうして…………」


 言い争っていると思ったら女が男を刃物で刺した瞬間に景色が消え、真っ暗な闇が訪れる。

 妬み、怨み、殺意、あらゆる負の感情が流れ込んでくる。

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