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18話 予想外の助け

 ゲートを潜った瞬間に違和感に気づいた。

 魔力の波が普通ではないことを、しかもそれが人為的に隠されていることを。

 ナギサはギルド職員としてギルドに篭り日夜魔法研究をしている。

 だからこそ気づけた巧妙な仕掛け、そして研究者肌の彼がそれに興味を惹かれることは必然だったといえる。


「うーん、もう少し遅れても彼なら大丈夫だよなぁ」

 ナギサは皆月の救助を後回しにダンジョン内の調査を始めた。



§



 皆月は目の前の現実を受け入れないでいた。

 動けなくなった自分はゴブリンに喰われて人生を終えるのだとそう思っていた矢先、まさかの援軍とというべきか、助けによって一命をとりとめている。

 しかしそれは本当に助かったと言えるのか甚だ疑問を感じられずにはいられなかった。


 風が雷がゴブリンを蹂躙していく。

 ゴブリンは俺のことなど忘れたかのように攻撃の飛んできた方へ威嚇をするが、やがてゴブリンは殺し尽くされただの1匹たりとも息をしていない。

 そして新たにモンスターに囲まれている。


 巨大熊の家族にギュンターキャットの群れ、巨大熊の風魔法の一振りは簡単にゴブリンを切断させ、ギュンターキャットの放電はゴブリンを感電死させる。


 特にギュンターキャットの中にいて、俺が手当てをした白い猫は優雅に戦場を歩き時たま後ろ足で首を掻く仕草を見せる。

 その姿はまさに猫なのだが、襲おうとしたゴブリンは天高くから降り注ぐ雷にによって消し炭になり跡形も残っていない。

 どう考えても俺よりも強大な存在で霊獣や神獣を思わせる。


 モンスターの中でも高い知能を持ち、人間に害をなさないモンスターがいる。

 むしろ友好的なものまでいるが、その中でも怒らせてはいけない、人など羽虫に思わせるような強大な存在は総じて霊獣や神獣、もしくは神として崇められる。

 かつて、バカな冒険者がそういった存在を怒らせては町の2つ、3つが消しとんだと聞いた事がある。


 白い猫は倒れる僕を見下ろして一鳴きすると、巨大熊がなぜか俺をお姫様抱っこしてどこかへ運ぶ。


 ついたのはどこかの洞窟で、中にはモンスター達が体を寄せ合い怯えている。

 白い猫はモンスター達へ何かを伝えているが俺には猫が鳴いているようにか聞こえない。

 モンスター達から怯えた様子が消えていき、俺はそこに放り込まれたが体も動かず、目を閉じることしかできなかった。



§



 あぁ、最高級のベッドとはこういうことをいうのだろうか、全身がふかふかの布団に包まれているような感覚だ。

 いつまでも目を閉じて寝ていたい気分である。


 ……


 現実逃避をやめ、目を開ける。

 大体、想像していた通りの光景である。巨大熊やギュンターキャットに囲まれ一緒に寝ていたようである。

 体を起こすと小熊が近寄ってきて体をペロペロと舐めてくれて、木の実や果物を渡してくれる。


「それはなかなかに美味いものだったよ!!」


「っ!?」

 急に聞こえる人の声に驚きを隠せない。

 なぜならここはダンジョンの中でこんな訳の分からない状況で人に話しかけられるなんて思いもしない。


「やぁ、元気そうでなによりだ、実は君の手助けに来たんだけど僕がついたときには終わってたみたいでさ、最初は間に合わなかったかもと思ったよ」

 洞窟の外で作業をしながら話しかけてくる人には覚えがあった。

 それはこのダンジョンに入ることを許可してくれたその人だからだ。


「えっと……ナギサさんですよね、何をしてるんですか?」

 この疑問は作業自体が何しているかを聞いたわけではない、何をしているのかはすぐに分かった、ゴブリンの死体を処理している。

 魔石を取って燃やしいるのだが、巨大熊や他のモンスターもそれを手伝っている。


「後処理をしてるんだよ、このまま放置してはいい影響は出ないからねぇ、もちろん魔石なんかは全て君に渡す予定だよ、後この戦斧もね」

 そこにはゴブリンジェネラルの使っていた戦斧があった。


「いや、そういうことじゃなくて……ナギサさんはテイマーなんですか?」

 モンスターと契約して戦うテイマーと呼ばれる人たちがいるのは知ってるがこんなにも多数のモンスターを操れるなんて聞いた事がない。


「いや違うよ、僕はただの研究者だからね、これはただ頼んだだけだよ」


「頼んだ……そんな簡単に言いますけど……」


「君はモンスターの中に触れてはいけない存在がいるのは知っているかい?」


「はい……霊獣や神獣なら……」


「そうそう、実はこれはあまり知られていないことなんだけど、そういったモンスターを筆頭に高い知能のあるモンスターにダンジョンの管理を任せたりしてるんだよ、このダンジョンもこの子らに任せてもいいかもね」


「はっ!?」

 衝撃の事実を突きつけられた。


「まぁ、君ももう少しランクが上がれば分かるさ、それと他言はしてくれるなよ」


 ナギサさんと一緒に帰ることになったがそれ以上は何も教えてくれなくなり、話題は俺の能力に関してばかりだった。

 後、白い猫から君にと角のようなものを受け取った。


 ギルドに帰ると光月さんが待っていた。

「良かった、遅いから心配で心配で、ナギサさんを向かわせたはいいんですが調査とかいって皆月さんを放置してないかと」


「ナギサさんには色々とお世話になりましたよ……」

 帰り道にナギサさんに聞いたが光月さんの言う通りだったようで、夢中になってたら遅れちゃったごめんとかいってた。

 別にそれを責めようなんて思ってないダンジョンに行ったのは自分でソロでいくと決めたのも自分でそれで死のうが自業自得だからだ。

 こそっとナギサさんが耳元でありがとうと言ってきたのは光月さんにはバレてないようだ。

 ナギサさんは逃げるようにギルドの奥へと帰っていった。


「そういえば、皆月さんの妹さんから連絡がありましたよ、近々様子を見に行くと」


 今までは極力、会いに来たいといってもぼかしてこちらから実家に行くようにしていたのにまさかギルドにメッセージを残すとは……

 家族には何度も反対されて無理やり冒険者になった手前、最低ランクで何年も燻っているとこなど見せたくなかったのが大きく、特に自分が活動してるとこではあの異名も聞かれることになる可能性も高い。

 しかし、様子を見に来るとメッセージを残したのなら十中八九くることは確定だ。

 これはどうしようもない決定事項で、それまでにできることなんて特にない。

『最弱の荷物持ち』ということを受け入れてもらうしかない。

 俺はなるようになると投げ出した。



§



「親方、これはどうですか?」

 俺は鍛治工房『青江』で親方に言われてた素材と謎の角らしきものを見せていた。


「あんたさぁ、また死にかけたって?」

 笑いながら話しかけてくるのは親方の娘の美鈴で鍛治師見習いであり翡翠弓『松風』の作成者でもある。


「どこで聞いたんだよ?」


「たまたまギルドに行った時、ユカさんが大騒ぎしてたよ、ていうか最近多すぎない? あんた悪魔とでも契約したの?」


「知らないよ!! こっちが聞きたいくらいだわ」


「おい、鑑定終わったぞ、こりゃあとんでもねぇな」


「どうでしたか?」


「素材としては最高だな、神獣の雷角だ」

 やはり、あの白い猫は神獣だったようだ。

 親方と鈴にダンジョンでの出来事を話した。もちろんナギサさんに聞いたことは伏せてだ。


「これじゃあ、いいものができすぎるな」


「それっていいことじゃないですか」


「坊主、すぎた武器は毒にもなる。現にそのせいで坊主は何度も死にかけている。武器は最高級のもんを作ってやる。ただし渡すのは坊主自身が強くなったとワシが認めたらだな」

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