14話 オフの一日
今日もダンジョンに潜る……
とはいかず、久々のオフと言ってもいい1日を過ごす。特にここ最近は怒涛のラッシュで様々な出来事があり心身共に疲れ切っていた。
昼過ぎまで惰眠を貪り、目を開けても布団から出ずにダラダラと過ごす。
最新型の携帯を片手にニュースをチェックしたり新しいダンジョンや武器、魔法なんかの情報をチェックし終えると動画を見始める。
魔法技術の進歩は様々な分野へと影響を及ぼした。
スポーツの分野もそうだ。旧時代のスポーツは廃退していき、今はもっぱら魔法を使った新スポーツ、特に魔法を使用した派手な戦闘がブームとなっている。
画面内ではお互いに魔法を撃ち合っている男性と女性が映っている。
男性が広範囲に爆発魔法を撃つと女性はお構いなしに爆発の中へと突っ込んでいく。
体に電気を纏って異常な速度で男性に近づいていく。男性も迎撃にレーザーのような魔法を放つが女性には当たらない。
レーザーは後ろの岩や木に当たり溶けていく。
男性も連続で放つとそのうちの一発がついに女性を捉えたかと思ったが女性が右拳をレーザーにぶつける。
激しいぶつかり合いの後、その場で爆発が起きて黒煙と土埃が巻き上がる。
その中から女性が天へと高く跳び上空から雷を落とす。
男性も結界を展開して耐えていたが無数に降り注ぐ雷に結界が破壊されさらに女性の姿を見失う。
気づくと女性は男性のすぐそばにいて、右足を大きく振り男性を蹴り飛ばす。
腕でガードするも何十メートルも吹き飛ばされた男性を何本もの雷が襲う。
そこで試合が止められた。
他の試合も激しいものばかりで普通なら死んでもおかしくない攻撃を受けているが、ある魔法技術によって試合に出る選手の安全が確保されている。
しかもエンターテイメントということで、一般の人などにも見えるように映像は減速加工されている。
これがなければ速過ぎて何が起こっているか見えないだろう。
普通なら死の可能性がある戦闘などスポーツとは言えないところだが、そこは魔法技術で死ぬどころか怪我をしても元の状態に戻るのでお互いが全力を出し合っての殺し合いを楽しめるのだ。
この魔法技術は冒険者の訓練にも使用されている。
そしてこの技術はアマンバードカンパニーが開発した魔法技術である。
俺がよくこの類の動画を見るのは見ていて飽きないし何よりも憧れが強かった。
しかし、今は戦闘の勉強にもなるなと動画を見ている。
様々な戦闘方法を知識としてインプットしておけばいつか役立つかもしれないからな。
ダラダラと過ごし、そろそろか行くかと家を出る。まず向かった先は美容院だ。
「お客様、本日はどうなされますか?」
「お任せでお願いします」
髪もさっぱりとして続いて向かったのは服屋だ。
「お客様、本日はどのような服をお探しでしょうか?」
「お任せでお願いします」
「……本日はどのようなご予定があるのでしょうか?」
「女性と食事に行きます」
髪も切って服も新調したし、ギルドに行くか。
ギルドに到着して仕事終わりの光月さんを待つ。
光月さんがこちらに気づいたようだ。
「皆月さん、いつもと違いますね」
「変ですか?」
「いえ、カッコイイです!! では少し待っていてください」
そういうと光月さんは同僚にご飯に行くからお先に失礼しますと声をかけて奥へと小走りしていった。
俺はそんなことよりも一刻も早くギルドを出たい気持ちでいっぱいだった。
光月さんが大々的に俺と食事に行くと喋ったせいで周りから親の仇のような目で睨みつけられている。
§
「おっめでとうございまーーーす!!」
高層階で夜景が一望できるレストランで光月さんはグラスを高く上げる。
行動はいつも通りだが、服装は黒と紫を基調としたドレスで大人の妖艶さを漂わせている。
ここにくるまでにも通りすがりにどれだけ目を集めたか。
今日の夕食を企画してくれたのは光月さんで俺の昇格祝いらしい。
光月さんは自分のことのように喜んでくれている。
「やーーーっと、皆月さんの実力がみんなに認められて、この間の救援依頼も大活躍だったようで絶好調ですね!!」
「ほんとに運がいいことに周りの皆さんに助けられてですよ、光月さんにも随分とお世話になってますし」
「私の方こそ皆月さんには助けられてますから。覚えてますか、私がギルド職員になったばかりで右も左も分からないところを皆月さんが丁寧に教えてくれたんですよ」
「懐かしいですね、そんなこともありましたね」
光月さんは元々、Bランク冒険者として女性パーティで活躍していた。
ところが、ある依頼の途中に強力なモンスターに遭遇し何とか撃退するもメンバーの1人が大怪我を負った。
命はとりとめたが、冒険者を続けるには厳しくそのメンバーは冒険者を引退。
それを機にパーティも解散し、光月さんも引退して冒険者ギルドで務めることになる。
光月さんが言っていた、俺が光月さんを助けたというのはギルドが大忙しでギルド職員もてんやわんやしてる中、雑用をしていた光月さんが作業に手間取って冒険者から文句を言われていたところを俺が手伝ったってだけで別に特別難しい事はしていない。
昔はダンジョンに行くのも難しく、ギルドに入り浸っていたおかげで時々ギルドから手伝いを頼まれていたことで軽い雑用の仕事ならできたというわけだ。
その後も話は盛り上がり楽しい時間はすぐに過ぎてゆく。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそ楽しかったです……皆月さん最近頑張ってるのは知ってます。でも無茶だけはしないでくださいね」
「分かってますよ、また昇格したらご飯来てくれますか?」
「別に昇格のとき以外でも誘ってくれていいんですよ……」
「えっ……!?」
「じゃあ、皆月さんまた明日ギルドで」
光月さんは足早に帰っていってしまった。
でも、月明かりの下、頬を赤く染めて笑うその姿を忘れることはないだろう。
§
とある部屋で密会が行われていた。
そこにいた男一人一人が並々ならぬオーラを放っていて全員が鬼の形相を見せていた。
「くそがぁぁぁぁぁぁーーー、俺はやるぞ!!」
男は心の底から叫んでいた。
そしてその周りにいた屈強な男たちも心から叫ぶ男と想いは同じだった。
「よしっ、あんたが言ってくれるんなら間違いはないだろう」
「頼むぜ!! 仇をとってくれ」
「あぁ、任せろ。必ず、皆月柊夏は俺が殺す!!」




