表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/55

12話 二股の雷猿

 危なかった、あと少し遅れていたら間に合わなかっただろう。

 間一髪のところで放った短刀は止めをささんとする猿の腕を吹き飛ばした。

 さらに『松風』を構え周りの猿にも撃つが素早い動きで避けられてしまう。

 しかし、十分な時間稼ぎにはなった。その間に救援対象の2人を保護することに成功した。


「お前たちよく持ち堪えたな、回復薬だ飲んでくれ」


「ありがとうございます、信じてました!!」


 感動の再会はいいが、まだまだ窮地の中にいることには変わりない。

 この猿の群れから抜け出してダンジョンを出てこそ依頼は達成となる。


 救援部隊でお互いにカバーしあってほぼ無傷で猿を数匹倒し、このままなら抜けれると誰もが思った瞬間だった。


「ガハッ……!?」


 真木くんが吹き飛ばされ、その場にいたのは他の猿よりも二回りはでかい筋肉隆々の猿が立っていた。茶色の毛に所々、黄色のラインが入っている。

 明らかに他の猿とは醸し出す雰囲気が違う。


 全員がその猿に警戒をすると、後ろでまた別のメンバーが吹き飛ばされた。

 そこにいたのも筋肉隆々に茶色の毛で黄色ラインが入っている猿がいて、前後で挟まれる形になってしまった。


 2匹の猿は腕を組んで直立不動で立ち、こちらをじっくりと観察している。


 猿が腕を解くと魔力が膨らんでいき、体から電気を走らせる。


「皆月さん!!」

 細波の声で大体を理解する。


 電気を走らせた猿は一瞬消えたかのように見えるほどの速度で先の攻撃で腰を下ろす真木くんへ拳を振り下ろす。

 俺は真木くんの前に立ち短刀で拳を受け止める。

 短刀は見事に砕け折れていた。


 逆サイドでも同じように細波が攻撃を受け止めていた。

 受け止めた十字槍は短刀とは違い傷ひとつ付いていない。


「皆月さん、『雷猿(らいえん)』です。気をつけてください」


 雷猿、分かりやすいそのままの名前は雷を扱う猿を表している。

 他の猿は尻尾が1本なのに対してこの雷猿は尻尾が2本ある。このことから、この猿が成熟していることが分かる。

 魔力の扱いが未熟な猿は雷猿であっても尻尾が1本だからだ。


 武器と戯れる者、発動。


 ……脳内にアナウンスが流れる。

 カウントが開始されます。

 Time:10:00 count:10


 カウントが10からのスタートなのは『武器熟練度+10』の恩恵だ。


『松風』で短刀を連射するが雷猿には当たる気配がない、攻撃を避けた雷猿が近づいでくると攻撃を避けて距離を保つ。

 雷猿は完全に俺をターゲットにしたようで他のメンバーに襲う気配はない。


 雷猿の体からこちらに細い電気が走ってくる。

 次の瞬間、目の前に雷猿が現れ、右腕を振り下ろしてくる。

 外れた攻撃は地面に当たると激しい爆発音と共に地面を抉る。

 その隙を狙って弓を引くが短刀は簡単に雷猿の腕で弾かれてしまう。


 知識は攻撃であり防御であるとはよくいったものだ。

 雷猿の必殺技ともいえる超高速移動の攻撃には弱点がある。

 それは攻撃前に攻撃箇所へ細い電気が走りそこに攻撃してくることが分かるのだ。

 知らなければ初見の一撃で戦闘不能になっていたことは地面にできた跡を見れば分かる。


 だとしても問題は山積みだ。必殺技を使わない通常時でも動きは速いし一撃一撃が重く油断はできない。

 そして、こちらの攻撃が効かないのも困ったものだ。避けられる上に当たりそうでも簡単に弾かれる。他の猿とは格が違うようだ。


 少し戦闘してこの雷猿は遠距離攻撃が得意ではないことが分かった。

 こちらが距離を取ると攻撃を弾きながら距離を詰めてくる。



§



 細波が十字槍で受け止めた始めの一撃以外、雷猿は距離を取って中距離から雷を放っている。

 細波はそれを十字槍で弾きながら近づくが雷猿は身軽な動きで槍を躱して再び距離を取る。


 雷猿は距離を取るとどこか余裕を見せているようで、細波には遠距離攻撃がないと思っている。


 細波もそれに気付いているが、飛んでくる雷を弾き前に進む。

 三度雷猿が距離を取った時だ、細波は槍を逆手に持ち全力で投擲する。


 雷猿は十字槍を軽々と躱してみせた……と思っただろう。

 十字槍の鎌部分から魔力が伸びて雷猿の腕を切り落とした。


 激怒した雷猿は雷を体から四方八方に放ちまくると、武器を持たない細波にも雷が襲う。

 しかし細波には当たらない。


 雷猿は苛立ちを見せ天を向き雄叫びをあげる。

 近づいていった細波に残った腕に雷を纏わせ殴りかかるが細波は華麗に上空へ飛んで避けると腰から小さなナイフを構える。


 雷猿は胸を刃で貫かれ絶命した。

 刃は小さなナイフから伸びた魔力で形成されていた。

 細波は十字槍を拾い皆月の戦闘に目をやる。



§



 お互いに有効打もなく時間だけが過ぎていくがこちらには時間がない。


 Time:2:32 count:100


 弓から炎剣に持ち替え接近戦に切り替える。

 目の前を一撃で死たらしめる拳が迫ってくる。それを避けて炎剣を振り抜くも避けられる。


 幸いなことに雷猿は気付いてなかったようだがここは足元に草木が覆い茂り炎を使うとすぐに燃える。


 今は俺と雷猿の周りが燃え盛っている。俺は炎剣にやって平気だが雷猿は苦痛の表情を浮かべている。


 さらに魔力を剣に流し雷猿の足元へ広範囲に炎を撒き散らす。

 雷猿は思わず空中へと大きく回避した。


「空中では身動きが取れないだろ!!」

 ここまで雷猿に俺の弓での攻撃は効いていない。

 そうすり込ませてきた。このチャンスをものにするために。


 弓を引くがそこには短刀はなく、もちろん矢でもない。

 何も持たずに弦だけを引く。

 魔力を込めていくと空気が集まってくるのが分かる。

 形成されたのは風の矢だ。


 翡翠弓『松風』には熟練度が高くなると使える必殺技がある。

『風刃』、風の魔力で空気を圧縮し矢を形成して放つ。

 その威力は短刀を放つのとは訳が違う。魔力消費が激しく、ここぞという時にしか使えない。


 弦を引く手を離すと風の矢は唸りながら一直線に雷猿の心臓目掛けて飛んでいく。


 雷猿もいままでと違うと感じたのか両手をクロスさせて心臓を守るが風の矢は両腕を貫通するとそのまま心臓までも貫いた。


 そのまま地面に落ちた雷猿の胸には大きな穴が開いていた。

 残った時間で猿達を処理しなければと目をやると既に猿達は逃げた後で冒険者達だけがこちらをじっくりと見ていた。


 どうやら細波も雷猿を倒して皆も無事なようだ。


 真っ先に声をかけてきたのは細波だった。

「お疲れ様です、皆月さん。それで消火をして欲しいんですけど」


…………


「熱っ!?」

 完全に忘れていた……

 カウントが切れた瞬間に周りを囲んでいた炎が敵になる。


「もしかして、消火できないんですか?」


「……はい」


 炎を隔てて細波と会話をするが、本当にこのままでは焼け死ぬ。



§



 運良く水魔法の使える魔法使いがいて鎮火することができた。

 自分の出した炎に殺されるところだった。


 視線を感じる。メンバー達がこちらをじっと見ている。視線が痛い。

……本当にすみませんでしたと、心の中で謝っておく。


「さすが皆月さん、まさか単独で雷猿を倒すなんて!!」

 真木くんは俺のミスを気にしていないようだ。もしくは気を遣ってくれているのかもしれない。


「足手まといとかいって、悪かったな」

 文句をつけてきてた男も手のひらを返したように謝ってくる。


 帰りの道中はさすがに何もなく無事にダンジョンから出ることができ、ダンジョンに入ってから結構な時間が経っていたがギルドへ帰ると救援依頼を出したパーティの全員が待っていて生還を喜んでいた。


 今回の救援依頼は救援の褒賞ももらったし、ダンジョンで倒したモンスターの素材も結構譲ってもらい懐も暖かくなる。

 なによりも雷猿の魔石を譲ってもらえたのはかなりでかい。

 モンスターを倒すと魔石を落とすが雷猿の魔石は大きくさらに純度も高いものだった。

 これは倒した本人が貰うべきだと譲ってもらったのだ。


 報酬の分配も終わり解散していく中、真木くんが神妙な顔をして近づいてきた。


「今日は勉強になりました。ありがとうございました」


「お互いに冒険者として今後もよろしく!!」


「はいっ!! 後藤さんにも皆月さんの活躍を伝えておきますね」


 真木くんと少し会話をしてなんと後藤さんが隻腕ながら冒険者として復活したと聞いた。

 また後藤さんにも会いたいな。

 喜ばしいなと思う反面、不知火の顔も思い出してしまう……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ