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過去からの雷鳴


「エルガンデは絡繰兵装(からくりへいそう)を解放します」


 そう口にすると、全身の歯車が音を立てて回転し始め、銅色の粒子が立ち上る。


 正車輪剣ベルテクスバロッゼオが突き出され、そこに歯車の魔法陣が描かれた。


「<正車輪弾雨断滅絶砲(バロッゼオ・アビス)>」


 正車輪剣が一つ一つの車輪に分解され、それが四方八方に飛び散った。車輪はグラハムの周囲をぐるりと取り囲み、逃げ場を塞ぐ。


「発射」


 エルガンデの号令とともに、周囲の車輪が高速で回転しながらグラハムに撃ち放たれた。


「やれやれ。もう少し話をしたかったんだけどね」


 グラハムは魔法陣を描く。


 その手の平から水銀が溢れ出たかと思えば、それは透明な大鎌に変化する。


「絡繰大鎌ボロウボレア」


 前方から向かってくる車輪を、グラハムは大鎌で弾き飛ばす。


 僅かに空いたその隙間へと突っ込み、<正車輪弾雨断滅絶砲(バロッゼオ・アビス)>の包囲を突破した。


 しかし、車輪は誘導するようにグラハムを追いかけ、次々と向かってくる。


 背後から迫った車輪を振り返っては弾き返し、左右からの車輪を柄と鎌の両方を使って叩き落とした。

 だが、堅い。


 車輪を斬り落とそうとしたが絡繰大鎌は刃こぼれし、叩き落とすのが精一杯なのだ。


「エルガンデは警告しました、グライム。泡沫世界用の絡繰神形では勝機がありません」


 エルガンデが魔法陣を描くと、グラハムが叩き落とした車輪が再び回転を始める。


 一斉に撃ち放たれ、グラハムの右足を切断した。


 ぐらり、と彼が体制を崩すと、そこへ雪崩れ込むように無数の車輪が襲い掛かってくる。


 それを絡繰大鎌で弾き返す。一つ、二つ、三つ、四つ目を防いだところで、五つ目の車輪が大鎌をすり抜け、グラハムの腕を切り裂いた。


 腕と同時に大鎌が落ちる。


 間髪を容れず、<正車輪弾雨断滅絶砲(バロッゼオ・アビス)>が降り注ぎ、グラハムの四肢が切断された。追撃とばかりに無数の車輪が突っ込んでいき、その体がミンチのようにぐちゃぐちゃに弾けた。


「判断を間違えたことこそ、あなたが壊れている証明に他ならないとエルガンデは判断しました」


 車輪がエルガンデのもとに集合していき、正車輪剣の形に戻る。


 それを握り、エルガンデは踵を返す。


「へえ」


 エルガンデは視線を鋭くして、ばっと振り向いた。


 そこにはなにもない。


 グラハムの体は細切れの肉片となり、その根源は<正車輪弾雨断滅絶砲(バロッゼオ・アビス)>により滅びている。


 無だ。


 だが、その無が言葉を発している。


「僕が勝ったら、君たち絡繰世界が壊れている証明というわけだ。わかりやすいね」


 瞬間、エルガンデの右手が消滅した。


 なんの攻撃を受けた形跡もない。それどころか、依然としてグラハムの姿も、根源も見えないのだ。


 だが、確かにそこにはなにかがある。


 右手の消滅はエルガンデにそう確信させた。


「虚無が存在する、とエルガンデは理解しました」


 大きく飛び退いて、エルガンデはその虚無から距離を取る。


 そうして、再び歯車の魔法陣を描いた。


「<正車輪弾雨断滅絶砲(バロッゼオ・アビス)>」


 正車輪剣がバラバラに弾け、無数の車輪が虚無に向かって放たれた。


 すると、その場所に突っ込んだ車輪が次々と消滅していく。どれだけ撃ち込んでも、どの角度から攻撃しても、その虚無は消える気配すらなく、車輪だけが一方的に消滅してしまうのだ。


 エルガンデは魔眼()を凝らす。


 僅かに見えた。否、見えてきたのだ。


 無から有を取り戻すように、グラハムの体と根源がそこに再構築された。


「それは転生世界で身につけた魔法ですか、グライム」


 一瞬笑みを覗かせ、グラハムは答えた。


「僕を作ったのは正帝なんだろう?」


 瞬間、歯車を回転させ、エルガンデは突進した。


 勢いよく振り下ろされた両手を、グラハムは絡繰大鎌で受け止める。


「絡繰神形にそのような兵装は備わっていません」


「面白いことを言うね。だとしたら、正帝が間違えたんだよ」


 エルガンデは魔法陣を描き、そこから正車輪剣を引き抜いた。


「正しい判断を行うのが正帝です」


 正車輪剣がグラハムの体を貫き、根源を串刺しにした。


「へえ。それじゃ、正帝が壊れてるのか」


 グラハムは血を吐きながらも笑みをたたえ、一歩前へ出てエルガンデの腕をつかむ。


「<虚空絶空虚(ヌエリエヌ)>」


 グラハムが虚無と化していき、それに飲み込まれるようにエルガンデの腕が消滅した。


 エルガンデは咄嗟に後退したが、すぐにグラハムが実体を取り戻し、その手から離れた正車輪剣をつかんだ。


「壊れた絡繰、それが僕たちの世界の秩序なんじゃないかい?」


 グラハムが正車輪剣を突き出す。勢いよく刃の車輪が回転し、エルガンデの胸を貫通した。切っ先はその根源にまで達している。


 咄嗟にエルガンデは残った手で、正車輪剣をつかんだ。


「正帝は完全なる正義を実行する秩序。あなたはその秩序を乱す不適合者……!」


 エルガンデはどうにか食い止めようと力を入れるが、徐々に正車輪剣が根源に食い込んでいく。


矛盾(ぼく)を作ってしまったのに、それでも正帝は完全かい?」


「……それは……それ……は……! ソレ……ハ……!」


 エルガンデの頭の歯車が回転する。


 まるで矛盾によって思考が壊れていくように、頭から火花が散っていた。


「いいことを教えてあげようか。全ての矛盾を解決し、今すぐ正帝が完全なる正義を実行する方法を」


「……あるのですか?」


「考え方を変えればいいんだよ。ぜんぶ、正義だと思えばいい。悪も正義、中立も正義、正義も当然正義。ほら、この世には正義しかない。なにもしなくたって、正帝は完全なる正義を実行できる。ああ、よかった、世界は正義に満ちていて優しいね」


 善良そうな笑みを向けながら、グラハムはからかうように言う。


「これを正帝グラハムと呼ぼうか?」


「ふざけないでください……!」


 エルガンデから、明らかに怒りの感情が溢れ出る。


「それは……そんなものは実態もなにもない、ただの虚構と呼ぶのですっ!」


 エルガンデの全身から歯車が切り離され、それがグラハムを切り裂いた。


 しかし、<虚空絶空虚(ヌエリエヌ)>によって、無となったグラハムは歯車を消滅させ、再びその体を取り戻す。


 そうして、正車輪剣にてエルガンデの根源を突き破った。


「……ぁ……!」


 がくん、とエルガンデが膝を折る。


「ただの虚構だよ、世の中は。正義だとか、悪だとか、みんな言葉遊びをしているだけだからね」


 魂の抜けた亡骸のように、その歯車の集合体はもの言わぬ物体と化した。


 ふと気になったようにグラハムは視線を落とす。


 エルガンデの足に糸が絡まっていた。赤色の糸が。


「くくったのである!」


 その場に姿を現したのは、パリントンだ。彼の指先から<赤糸>が伸び、エルガンデにくくりつけられている。


「絡繰人形よ。ルツェンドフォルトの傀儡となれ」


<赤糸>が怪しい輝きを発し、それがエルガンデを包み込む。根源を滅ぼされたはずのその魔戦絡繰がむくりと起き上がった。


「ふぅん。正帝の兵を奪えというのがアムルの指示かい?」


 言いながら、グラハムは正車輪剣を振り下ろす。


 エルガンデは二本の獅子縫針ベズエズを交差し、その一撃を受け止めた。


「捉えたのである!」


 グラハムの動きが止まったところへ、パリントンが六つの<赤糸>を伸ばす。


 その先にくくりつけられている獅子縫針ベズエズが、グラハムの四肢を貫通し、その場に縫いとめた。


「<虚空絶空虚(ヌエリエヌ)>」


 突き刺さった獅子縫針ベズエズが虚無に呑まれ、<赤糸>が切り離された。


 グラハムの体が<虚空絶空虚(ヌエリエヌ)>によって消えていく。だが、次の瞬間、それは止まった。


 無となるはずの彼の体が、完全には無にならないのだ。


 彼は不思議そうに首を捻った。


「くくったと言ったのである。正帝ですら制御できない虚無の絡繰よ。我らが傀儡となれ」


<赤糸>ではない。


 しかし、目には見えない不可視の糸がグラハムにくくりつけられ、彼を拘束しているのだ。


 更にパリントンは<赤糸>を、彼の虚無の根源へ伸ばす。それを使い、彼を完全に傀儡にするつもりなのだろう。


「へえ」


<赤糸>が体に突き刺さり、根源へ巻きつこうとする中、グラハムは笑った。


「できるかい?」


 鮮血が溢れた。


 グラハムの胸に穴が空いている。


 <赤糸>でも、獅子縫針でもない。


 グラハムの胸を貫いたのは、一筋の紫電だった。


「まさか……」


 パリントンは目を見張った。


 彼の視線の先にいたのは、神族でも、魔族でもない、ただの人間。俺の父グスタと、母イザベラだった。


「まさかこんなにも早く、機会が巡ってこようとは!!」


 パリントンは歓喜に体を震わせる。


「私から全てを奪った憎き男を滅ぼし、愛する姉様をこの手で抱くこの時がっ!!」


 パリントンの全身から<赤糸>が溢れ出す。それは生き物のようにゆらゆらと蠢き、グスタとイザベラに向かって伸びていく。


 グスタに襲いかかる<赤糸>にのみ獅子縫針ベズエズがついている。


 逃げ場もないほど無数の<赤糸>が二人に襲い掛かり、獅子縫針ベズエズがグスタの鼻先に迫る。


 瞬間、紫電が走った。


 獅子縫針ベズエズも、<赤糸>も、その紫の雷に撃たれ、焼失していく。


 グスタの目の前には雷の()(ほう)(じゅ)――<滅紫(めっし)雷眼(らいがん)>があった。


「……なんだ、その力は……? 今の貴様はただの人間――否、前世の貴様にも、それほどの魔法は使えなかったはずであるっ!」


「<幻雷蓋然顕現(ゼオラ・ヴェネジアラ)>」


 力強い声が響いた。


 グスタの右眼に紫電が走る。


 すると、吸い寄せられるかのように<滅紫の雷眼>がグスタの右眼に収まった。


 耳を劈く雷鳴とともに、グスタとイザベラを紫電が包み込む。


 渦巻く雷の隙間にちらつくのは、名もなき亡霊の姿。


 平和のために最期まで戦い続けた、我が父セリス・ヴォルディゴード。そして、もう一人、彼と運命を

ともにした災禍の淵姫ルナ・アーツェノンの姿があった。


「……姉……様……」


 目を丸くして、パリントンは二人を見た。


 どれだけ魔眼()を凝らしてみても、間違いはない。


 姿形だけではない。魔力も、根源も、確かに在りし日のセリスとルナなのだ。


『ふうん。そうか。セリス・ヴォルディゴード。君は転生する前に力と記憶を残しておいたんだね』


 セリスが右手でつかんでいる虚無の根源――グラハムが言った。


『さっきの魔法は、君たちが力と記憶を失わずに今日まで生き延びる可能性を具現化するものかな』


波身蓋然顕現(ヴェネジアラ)>がそうであるように、セリス・ヴォルディゴードが得意としたのは可能性の魔法だ。転生する前は、更にそれを深く使うことができたのだろう。


 エレネシア世界のセリスとルナが、力と記憶を保ったまま転生していたら、どんな未来になっていたか。無論、その可能性はゼロではなく、<幻雷蓋然顕現(ゼオラ・ヴェネジアラ)>はそれを具現化する魔法なのだ。


 ゆえに――


「手を貸すがいい、グラハム」


 なんの説明もなくとも、父も母も今の状況をよく理解している。


『いいのかい? 君の首を奪い、幻名騎士団を騙ったのが僕だ』


「些事だ」


『へえ? どうしようかな? 第一魔王のやることも、面白そうだけどね。銀水聖海への復讐。彼なら、僕を受け入れてくれそうだ』


「それで満足か?」


 もったいぶるようなグラハムの言葉を、セリスは一蹴した。


「アノスならば、お前を飽きさせることはない」


 フッと笑声が漏れる。『そうかもしれないね』と彼は小さく呟く。


「ああ……」


 と、溜息交じりの声が漏れた。パリントンだ。


 彼は感極まったような表情で一歩、ルナに歩み寄る。


「ああ……あああ……あぁぁぁ……姉様……! 姉様なのですか……!? 私に会いに来てくださったのですかっ!?」


「パリントン……」


 悲しげな瞳で、ルナはパリントンを見つめた。


「今度ははっきり言うわ」


 そう前置きをして、ルナは告げた。


「可哀そうな私の弟。私の夫が、あなたを安らかにしてあげるわ」


 瞬間、パリントンは血管が切れそうなほどの憤怒の形相を浮かべ、


「黙れえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!」


 地面を蹴り、猛烈な勢いでルナのもとへ突っ込んできた。


 彼の指先から伸びた十本の<赤糸>が、ぐるぐるとルナに絡みつき、拘束した。


「姉様を取り戻すのである。清らかで、美しく、僕だけを愛する姉様を! この運命の赤い糸で!!!」


 プツッと全ての<|赤糸>が切断され、ルナが解放される。


 万雷剣、秘奥が(とお)――<滅刃雷火(めつじんらいか)>だ。


 パリントンの前に、万雷剣ガウドゲィモンを手にしたセリスが立ちはだかる。


「貴様……!」


 憎悪に染まった目で、パリントンはセリスを睨む。


「貴様さえ……貴様さえいなければぁっ!!! セリス・ヴォルディゴードォォォォッッッ!!!」


 猛り、狂ったような形相で、パリントンは六本の獅子縫針ベズエズを一か所に集める。それは<赤糸>によりくくりつけられ、一本の巨大な縫い針となった。


 憎しみに背を押されるように、奴は涎を垂らしながら、猛突進し、巨大な獅子縫針をセリスに突き出した。


 瞬間、セリスの両眼に滅紫の雷が走る。


「ぬ……ぁ……なん……だ? 体が……?」


 パリントンの突進が殺され、奴はまるで足がその場に張り付いたかのように固まっている。


「貴様の可能性はすでに滅した」


<滅紫の雷眼>。その魔眼が睨んだ可能性には紫電が落ちる。セリスはパリントンが前進するありとあら

ゆる可能性を睨み、滅ぼしたのだ。


 ゆえに奴は前に進むことができない。


「それしきのことでぇ……!!」


 パリントンが<赤糸>を伸ばす。


 瞬間、セリスの魔眼に紫電が走り、<赤糸>に落雷した。


 否、実際には雷は落ちていない。しかし、パリントンは<赤糸>を伸ばすことができなかった。その可能性を滅ぼされたのだ。


「おのれ……!」


 パリントンが後退しようとする。


 三度、<滅紫の雷眼>が光り、今度は後退すらできなくなった。


「え、エルガンデ……!」


 パリントンは歯車の集合神に命令を下す。しかし、セリスの魔眼に紫電が走ると、エルガンデもまた沈黙した。可能性を滅ぼされ、身動きがとれなくなったのだ。


 パリントンが立ちすくむ中、セリスは真正面から堂々と歩いていく。


「貴様が持っている<深魔(アギド)>の一部をもらう」


 ミリティア世界に絶渦を作るための<深魔創淵(アギド・ローム)>、それを止めるためにセリスは<深魔(アギド)>を奪うのが確実だと判断したのだろう。


「がっ……!」


 動くことのできないパリントンの胸をセリスは手刀で貫いた。


 そうして、その根源の中にある<深魔(アギド)>をつかもうとしたその時、奴はニヤリと笑ったのだ。


「かかったな、馬鹿め!!」


 動けないはずのパリントンが、セリスの腕を両手でつかんだ。それはまるで見えない糸に操られているかのように。


 ゆらゆらと彼の体から無数に伸びたのは<黒糸>である。


「今の私は、傀儡皇様の操り人形。その小癪な魔眼も不可視の傀儡皇様には手も足も出まい!」


<黒糸>が不可視化して、そのままセリスに襲い掛かる。


 鋭く尖った<黒糸>が彼の両眼に迫り、しかし寸前でピタリと止まった。<黒糸>の不可視化が解けていき、目にはっきりと映っていた。


「な……に……? 」


 パリントンの体から無数の<黒糸>が放出される。それとともに、追い出されるように傀儡皇ベズが外に弾き出された。


「傀儡皇様? なにが……?」


「う……ぐ……我が根源に……異物が……」


 ボロボロと傀儡皇ベズの体が崩れ落ちていく。


「貴様の体に潜んでいた傀儡皇に、グラハムの根源を移した」


『見えないものを探すのは得意だからね。なにせ、僕自身が虚無だ』


 傀儡皇ベズの体に入り込んだグラハムの根源は、そのまま奴の根源まで辿り着いた。そうして、すべてを無に変え、消失させる虚無の力に、傀儡皇は飲み込まれようとしている。


『どうやら、君は耐えられないようだね。アノスの中に比べたら、とても退屈だ』


 瞬く間に傀儡皇の根源は消滅し、ガラスが砕け散るように、その体は砕け散った。


 瞬間、セリスはパリントンの根源をぐっとつかむ。


「がはっ……!」


 パリントンが吐血する。


 セリスが手を引き抜けば、奴はその場に崩れ落ちた。


 その手には深く、黒い球――<深魔(アギド)>の一部が握られている。


「ルナ」


「やってみるわ」


 セリスの合図で、ルナはエルガンデに近づく、


 そうして、その歯車の体をそっと抱きしめた。


「思い出して、あなたの渇望を」


 エルガンデの根源は滅びた。


 しかし、その体に眠っているもう一つの根源にルナは呼びかける。


 今の彼女は、災淵世界イーヴェゼイノの<淵>、<渇望の災淵>とつながり、その力を操ることができるのだろう。


 ゆえに<渇望の災淵>からその渇望を引っ張り上げ、そして、呼び覚まそうとしているのだ。


 眩い光が二人を包み込む。


 歯車が一つ落ちた。


 堰を切ったように、更にバラバラと歯車が落ちていき、一気にエルガンデは崩壊した。


 中から現れたのは、一人の少女。


 裁定神オットルルーである。


 ふらり、と倒れかけたオットルルーを、ルナが優しく抱きとめた。


「魔力を使いすぎた。<幻雷蓋然顕現(ゼオラ・ヴェネジアラ)>の時間が尽きる」


 険しい顔つきで、セリスが言った。


「大丈夫よ。あとはあの子と、あの子の仲間に任せましょう」


 それを聞き、僅かにセリスの表情が緩む。


 再び紫電が二人を包み込む、ぱっと弾けた。


 グスタとイザベラに戻った彼らは、力を使い果たしたかのようにその場に倒れたのだった。



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― 新着の感想 ―
絡繰世界の不適合者がグラハムもといグライム。その虚無の根源は、秩序も主神も無にできるか。 改めてヤバい奴だな、本当に…。
この展開アツすぎる!
グラハムの根源が虚無って事は、 絡繰世界の正義自体も虚無なんじゃないかな。 完全な正義なんて無い。
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